GRAPEVINE|せめて少しでも光に触れて

「ALL THE LIGHT」はイレギュラーな作品

田中和将

──アルバムの最後を飾るのは「すべてのありふれた光」というタイトルの曲です。アルバム全体の印象自体が明るいんですが、そのイメージを作っているのはこの曲によるところが大きいと感じています。

そうですね。「すべてのありふれた光」ってメロの譜割りやリズムの解釈、要はテクニック的な部分でも非常に難しい曲なんです。それに加えて、いつもの歌詞の書き方ではなくて、ハッピーエンドとまでは言わないまでも、少しでも光に触れたところまで書きたいなという気持ちもあったんです。歌詞を書くのに悩んで時間がかかりましたね。

──なぜ、いつものやり方では申し訳ない気がしたんでしょうか?

曲に導かれたところが大きいと思います。アレンジとか曲の構成にもよるんですよね。例えばこういう曲でも不穏な展開で終わるようなアレンジにしてたら歌詞もそうなっただろうし。亀井くんの曲とホッピーさんのアレンジに呼ばれて、僕の歌詞もこうなったのかなって。

──「すべてのありふれた光」のタイトルにも含まれている「光」という言葉は、田中さんが書く詞にたびたび登場する言葉ですよね。

そうですね。ドライな言い方をすると、「光」って非常に便利な言葉なんです。ポジティブな意味合いだけではなく、影を濃くしてしまう残酷なものでもあるので。レコーディングの最後に「すべてのありふれた光」の歌入れをしたときに今回書いた歌詞を見返してみたんですが、「光」の描き方が自分でもちょっと変わってきたような気はしています。

──収録曲の中で言うと「Era」も光をモチーフにした曲のように捉えられます。

まさにその通りですね。歌入れを終えた段階でまだアルバムのタイトルは決まってなかったんですけど、これはもう「光」をタイトルに使うしかないなと。「Era」と「すべてのありふれた光」の2曲がアルバムタイトルを呼び寄せた感じもあって、「ALL THE LIGHT」という言葉でアルバムをまとめることにしたんです。アルバムの中には相変わらずカオスな曲も入っているんですけど、「すべてのありふれた光」で終わる構成にするとすごく明るい“聴後感”で終われるんですよね。

──では「ALL THE LIGHT」という作品はバンドにとってどんな作品になりましたか?

それで言うと、ちょっとイレギュラーな作品になったかもしれませんね。ホッピーさんとがっぷり四つに組んで作ったアルバムで、かつ基本的に高野勲氏が参加していないし、曲によっては金戸さんも参加してない。聴き手の方がどう感じられるかってところなので、僕らの感覚はそこまで大事ではないんですが。

人生の半分以上をバンドとして過ごしている

田中和将

──取材前にスタッフさんから、田中さんが45歳の誕生日を迎えられたことを聞きまして(※取材は田中の誕生日である1月15日に実施)。バンドマンとして歳を重ねていくことを田中さんはどう捉えていますか?

特に恐れることもなく、楽しんでますね。歳を取るごとにすごく柔軟になっていくんですよ。どうでもいいことはどうでもよくなって、いろんなことが楽になる。

──バンドの活動も楽になってますか?

僕らはもうある程度開き直ってしまっているというか。気持ちのうえで「なるようになれよ」って思える楽さが生まれてきてる感じですね。ただこの間誰かに「もう人生の半分以上をバンドとして過ごしているんですね」って言われてゾッとしたんですよ(笑)。

──ゾッとしましたか(笑)。

うん。全然そんなつもりはなかったから「ホンマか」と思って。

──バンドマンとして、もしくは個人としてこれから先、成し遂げてみたいことはありますか?

相変わらず野心みたいなものは持ち合わせていないですね。ただし、バンドをやっていくということは非常に楽しいので、これを転がしていくためのモチベーションを維持する方法をこれから先もいろいろ試していきたいなと。とは言え、今回みたいにプロデューサーに頼ってばかりな気もするんですが(笑)。

──根底にはGRAPEVINEというバンドを続けたいって思いがあるわけですよね。

そうですね。ここまでくるとなんとか転がしていくべきなんじゃないかって思いが芽生えています。バンドって長く続けてると山あり谷ありなんですよ。でもここまでなんとか続けてきたということは、僕らそれぞれ続ける理由を見つけてきたわけで、これからもそうやって続けていけたらいいなと思っています。

田中和将

ライブ情報

SOMETHING SPECIAL
  • 2019年2月21日(木) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
    <出演者> GRAPEVINE / 中村佳穂
  • 2019年2月22日(金) 大阪府 心斎橋BIGCAT
    <出演者> GRAPEVINE / 中村佳穂
  • 2019年3月1日(金) 東京都 マイナビBLITZ赤坂
    <出演者> GRAPEVINE / 中村佳穂
GRAPEVINE tour2019
  • 2019年4月12日(金)東京都 LIQUIDROOM
  • 2019年4月14日(日)新潟県 NIIGATA LOTS
  • 2019年4月20日(土)兵庫県 Harbor Studio
  • 2019年4月21日(日)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2019年4月27日(土)札幌PENNY LANE24
  • 2019年5月11日(土)熊本県 熊本B.9 V1
  • 2019年5月12日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2019年5月18日(土)岡山県 YEBISU YA PRO
  • 2019年5月19日(日)愛媛県 WstudioRED
  • 2019年5月25日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2019年5月26日(日)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2019年6月1日(土)岩手県 Club Change WAVE
  • 2019年6月2日(日)宮城県 Rensa
  • 2019年6月8日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2019年6月9日(日)広島県 広島CLUB QUATTRO
  • 2019年6月14日(金)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2019年6月15日(土)大阪府 なんばHatch
  • 2019年6月22日(土)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2019年6月23日(日)福島県 郡山CLUB#9
  • 2019年6月28日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
GRAPEVINE(グレイプバイン)
GRAPEVINE
田中和将(Vo, G)、西川弘剛(G)、亀井亨(Dr)の3人からなるロックバンド。1993年に元メンバーの西原誠(B)を含めた4人で結成。1997年にミニアルバム「覚醒」でデビューし、1999年リリースの3rdシングル「スロウ」が大ヒットを記録する。2002年に西原がジストニアのため脱退して以降は、高野勲(Key, G)、金戸覚(B)をサポートメンバーに加えた5人編成で活動を続けている。2010年にはギタリスト / プロデューサーの長田進と「長田進 with GRAPEVINE」名義でアルバム「MALPASO」を制作。2012年にメジャーデビュー15周年を迎え、9月に初のベストアルバム「Best of GRAPEVINE 1997-2012」を発表した。2014年11月にビクターエンタテインメント内のSPEEDSTAR RECORDSへ移籍し、2015年1月に移籍第1弾シングル「Empty song」収録曲を含むアルバム「Burning tree」をリリース。また2016年2月には高野寛をプロデューサーに迎えて制作されたシングル曲「EAST OF THE SUN」「UNOMI」などを含むアルバム「BABEL,BABEL」を発表した。デビュー20周年を迎える2017年9月には通算15枚目のオリジナルアルバム「ROADSIDE PROPHET」をリリース。2018年2月にはホッピー神山プロデュースによる最新アルバム「ALL THE LIGHT」を発表した。