音楽ナタリー Power Push - GRANRODEO

「鉄血のオルフェンズ」の先に見た「少年の果て」

「この曲、ジャンの人が歌ってるのか!」

──「さてどうしよう?」となったのは、あれだけ膨大なディスコグラフィを抱えていながら、実は“アニメのエンディングテーマの王道”はなかったから?

e-ZUKA そうですね。それでツアー中に3曲書いて、レーベルとアニメの制作陣の方にデモをお渡ししたら「少年の果て」の原曲が選ばれたんですけど、実はその3曲のうち一番自信がなかったのがこれなんですよ(笑)。

KISHOW(Vo)

──あはははは(笑)。でもそれってなんでなんですか? 一見ハードロックのミディアムチューンの王道みたいな曲なんだけど、実はBメロは1小節を3分割するようなリズムパターン、コード進行になっていたりする。いい曲、いいメロディでありつつ、小技も効いた佳曲だと思うんですけど。

e-ZUKA 確かにBメロなんかは、ある種“作為的”にフックを作るようにはしたし、それを気になさってくれたということは効果的な演出になったのかな、とは思うんですけど、やっぱり「普通に王道すぎるんじゃないかなあ」っていう気はしてたんですよねえ……なんとなれば「地味なんじゃないか」とも思ったし。第1期の13話までのエンディングテーマだったMISIAさんの「オルフェンズの涙」も高い評価を受けていたからプレッシャーもあったし(笑)。

──ただMISIAさんのあの曲こそまさに王道のR&Bではありますよね。

e-ZUKA ハチロク(8分の6拍子)というか8分の12拍子のリズムに、マイナーで、ちょっと昔の歌謡曲チックなメロディが乗るあたりはそうですよね。

──だからこそ一見“普通に王道”な「少年の果て」もハマったんじゃないですか。

e-ZUKA だといいなあ。デモを渡すときはホントに不安でしたから(笑)。

──いつその不安って解消されるものなんですか? まさかいまだに不安ってわけでは……。

e-ZUKA 実は……。まあそれは冗談で(笑)、KISHOWの歌が入るとOKになる。「あっ、いいじゃん! この曲」ってなれる感じですね。あとはリスナーの方の評判ですよね。エゴサーチしてみて「エンディング悪くないじゃん」みたいな話が聞こえてくれば、不安じゃなくなる(笑)。ただ、今回に限っては「ガンダム」のすごさと、GRANRODEOがまだまだであることを思い知らされもしたんですけどね。

──「GRANRODEOがまだまだである」?

e-ZUKA 「あっ、この曲ってジャン(KISHOWがアニメ『進撃の巨人』で演じているジャン・キルシュタイン)の人が歌ってるのか!」っていうツイートを見つけたんですよ(笑)。

KISHOW あはははは(笑)。

──「ガンダム」や「進撃の巨人」を熱心に観ている方の中には、GRANRODEOの存在を知らない方が……。

e-ZUKA まだまだたくさんいるんでしょうねえ。

KISHOW それは間違いないですね。

e-ZUKA まあこれはGRANRODEOの人気がどうこうっていう以前に、アニメのほうが音楽よりも影響力が強いってことなのかもしれないけど。

懐古趣味で懐疑的な男が生み出す「少年の果て」という言葉

──そして翻って、そのe-ZUKAさんの“不安”を歌声で解消したKISHOWさんのこの曲に対する印象は?

KISHOW 「エンディング主題歌だからこういうトーンね」ってすぐに腑に落ちましたよ。e-ZUKAさんの言う通り地味っちゃあ地味かもしれないけど(笑)。

e-ZUKA あとね、「初期のGRANRODEOの曲、『delight song』(6thシングル)っぽい」とも言われた……言われたっていうか、オレが勝手にそういうツイートを見かけただけだけど(笑)。

KISHOW 確かにどこもムリしてない感じというか……手癖で書いているとか、最近のe-ZUKAさんがムリヤリ派手にしているってわけじゃないんだけど、一筆書きで書いたように美しく流れていくメロディ。すごくスムーズだなとは思いましたね。

e-ZUKA(G)

──そこに乗るKISHOWさんの詞もやっぱりストレートなようで、実はヒネられている。「少年の果て」というタイトル通り、詞の主人公は一見、過去の自分、少年時代の自分に憧れているようなんだけど、その少年時代を「見上げたら届いてしまう幻想」とも歌っている。つまり、少年時代を諸手を挙げて礼賛してはいないですよね。

KISHOW うん。それは100%作詞者の人格が反映された結果でしょうね(笑)。

──あはははは(笑)。

KISHOW あとは「鉄血のオルフェンズ」というアニメを観てみたら、ほら、あれ、少年たちの物語だから(笑)。

──だから「少年の果て」だ、と(笑)。

KISHOW 超簡単に言っちゃうと、ですけどね(笑)。でも少年たちが闘う物語であることは間違いないし、あとさっきのe-ZUKAさんの「歌ってるのジャンの人か」の話じゃないけど、「鉄血のオルフェンズ」は僕らの存在は知らない若いアニメファンもたくさん観ているタイトルですから。だから今はもうオッサンになっちゃった僕らはもちろん、今まさにその瞬間を生きている子にとってもそうなんだけど、誰にとっても心当たりのある永遠のキーワードである「少年」とか「少年期」をテーマに詞を書いてみたかったんです。

──より広く聴かれることを想定した作詞をした?

KISHOW そこまで厳密に「いろんな人が観ているアニメのエンディングなんだから」って考えて、計算したわけじゃないですけどね。結局のところ、歌詞なんて書く人間から絞り出された言葉の集まりなわけだから、それこそ「作詞者の人格が反映」されることになる。僕自身、懐古趣味で懐疑的な男ですから(笑)。「少年の頃に戻りたいな」と憧れつつも、同時に「でもそんなに少年時代って今思っているほどいいものだったか?」っていう疑問もあるから、「少年の果て」というどこか切ない言葉が生まれた感じなんです。

ニューシングル「少年の果て」 / 2016年11月23日発売 / Lantis
初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / LACM-34555
通常盤 [CD] / 1404円 / LACM-14555
CD収録曲
  1. 少年の果て
  2. 名も無き日々
  3. HARD DRIVING MIDNIGHT
  4. 少年の果て(OFF VOCAL)
  5. 名も無き日々(OFF VOCAL)
  6. HARD DRIVING MIDNIGHT(OFF VOCAL)
初回限定盤DVD収録内容
  • 少年の果て(Music Clip)
ニューアルバム「Pierrot Dancin'」2017年2月8日発売 / Lantis
「Pierrot Dancin'」
GRANRODEO LIVE TOUR 2017
  • 2017年5月20日(土)北海道 Zepp Sapporo
  • 2017年5月21日(日)北海道 Zepp Sapporo
  • 2017年6月9日(金)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2017年6月10日(土)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
  • 2017年6月17日(土)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2017年6月18日(日)福岡県 DRUM LOGOS
  • 2017年6月24日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2017年6月25日(日)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2017年7月1日(土)宮城県 仙台PIT
  • 2017年7月2日(日)宮城県 仙台PIT
  • 2017年7月8日(土)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2017年7月9日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
  • 2017年7月16日(日)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2017年7月17日(月)愛知県 Zepp Nagoya
GRANRODEO(グランロデオ)

ボーカリストのKISHOW(谷山紀章)とギタリストのe-ZUKA(飯塚昌明)からなるユニット。2005年結成。同年11月、アニメ「IGPX」のオープニングテーマ「Go For It!」でデビュー。声優としても活躍するKISHOWの表現力豊かなハイトーンボーカルと、e-ZUKAによるハードロックマナーに則ったヘヴィでメロディアスな楽曲群で人気を博す。以来コンスタントにリリースを重ねる一方で、2010年には東京・日本武道館で結成5周年記念ライブを実施。その後も神奈川・横浜アリーナ、大阪・大阪城ホール、埼玉・さいたまスーパーアリーナなどホール、アリーナクラスでのワンマンライブを敢行し、「Animelo Summer Live」などの大型フェスではヘッドライナークラスのポジションを確立する。2015年9月にはデビュー10周年記念ベストアルバム「DECADE OF GR」を発表した。また10月には千葉・幕張メッセ 国際展示場1-3ホールにてユニット結成10周年を記念した2DAYSライブイベント「GRANRODEO LIVE 2015 G10 ROCK☆SHOW」を開催した。また2016年には4月にテレビアニメ「文豪ストレイドッグス」のオープニング主題歌「TRASH CANDY」を、そして11月にはテレビアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の第2期エンディング主題歌「少年の果て」を発表。2017年2月には、通算7枚目となるアルバム「Pierrot Dancin'」をリリースし、5月からは、GRANRODEO LIVE TOUR 2017 を開催する。