Gorilla Attack|ゴリラへの憧れをラップする謎の2MC出現

ヒガシローランドとニシローランドからなる2MCのラップユニット・Gorilla Attackの新作音源「GORILLA CITY」が9月9日にリリースされる。

昨年8月に1stシングル「Gorilla Anthem」で突如シーンに出現し話題を集めるも、その後は表立った活動を見せていなかったGorilla Attack。約1年の空白期間を経てリリースされた「GORILLA CITY」には「Gorilla Anthem」を含む全7曲が収録されており、2人はブラックミュージックを取り入れたトラックに乗せて、メロディアスな歌とハードなラップを披露している。

音楽ナタリーではヒガシローランドとニシローランドの2人にリモートでインタビューを実施。謎めいたユニットの結成経緯や「GORILLA CITY」の制作エピソードを聞いた。また特集の後半には、本作にトラックメイカーとして参加したYaffleやケンカイヨシ、ササノマリイ、雲のすみか、「隔世 gorilla」のミュージックビデオを手がけたYP、佐藤寛太名義で「Gorilla Anthem」のMVの監督を務めた水溜りボンドのカンタ、ユニットのキャラクターデザインを手がけたイラストレーター・SOLANINEのコメントも掲載している。

取材・文 / 三浦良純

ゴリラに憧れて結成

──このユニットの作品では一貫して「ゴリラ」が賛美されていますが、そもそもどのような経緯で「ゴリラ」の名を冠したユニットを結成することになったんですか?

ヒガシローランド ゴリラってコミカルなイメージもありますけど、僕たちはクールだと思っていて。ゴリラはとても強いけれど、この世界は強いと迫害されがちじゃないですか。実際、ゴリラは絶滅危惧種でもある。でも、その強さ故の孤独や諦観を背負っていく気高さも持っていると感じるんです。このユニットの根幹には、そうしたゴリラへの憧れがあります。

ニシローランド とにかくカッコいいよねって。

──お二人はもともとどのような関係なんですか?

ニシ もともとはインターネット上で出会ったよね。

ヒガシ 数年前からお互いのことを知ってはいて、連絡をたまに取り合うような仲で。2人で曲を作ったこともなかったんですが、ある日、ゴリラへの憧れで話が盛り上がってユニットを結成し、「Gorilla Anthem」のミュージックビデオを公開したのが去年の8月。制作はその数カ月前から行っていました。

Gorilla Attack

──なるほど、今年本格的に活動を開始した感じですが、結成当初は活動の長期的な目標やプランはあったんですか?

ヒガシ 最初は自分たちの音楽をたくさんの人に聴いてもらいたいという気持ちで、ゆるっと活動を初めたんです。ゆくゆくはライブなどもやりたいなあとか漠然と思ってたけど、なかなかその計画が進まなくて……(笑)。

──なるほど(笑)。「Gorilla Anthem」のリリースから今回のリリースまでの1年は特に活動はされていなかったんですか?

ヒガシ Gorilla Attackとしては何もしてなかったですね。たまに情報交換するくらい(笑)。情報交換している中で、ある日ゴリラ好きのレーベルの人と出会って、たまたま盛り上がって。で、今こうして「GORILLA CITY」を出すことになって、こうなるとはあまり想定していなかったので不思議な気持ちですね。

ニシ 本当にそうだわ。

性質の違う2人が交わることで生まれる予測不可能性

──「ゴリラ」への憧れで結びついたゆるい関係のお二人ですが、メロウな歌やラップを披露するヒガシさんとハードにラップするニシさんで役割分担がしっかりできていて、とても相性がいいのではと思いました。

ヒガシ おっしゃる通り相性はいいと思いますね。声の性質がパッキリと違うので、組み合わせると自分1人では出せない色が出せるし、楽しいです。

ニシ ヒガシはすごく繊細で、つかみどころのない素敵な声ですよね。このユニットでの自分の位置付けは、ヒップホップの土台をしっかり作ることだと思っていて。楽器で言えば、自分がベースで、ヒガシくんがギターみたいな。俺が作った土台の上で、ヒガシくんが綺麗に飾り付けをするという意識です。

──サウンドのテイストとしては、デビュー曲の「Gorilla Anthem」をはじめ、ダークだったり、チルだったり、ダウナーな楽曲が多い印象ですね。Gorilla Attackというユニット名に感じるイメージとは違うのでちょっと意外でした。作品には気鋭のトラックメイカーが参加していますが、制作はどのように進んだのでしょうか?

ニシ ヒガシくん主導で選んだトラックメイカーから送られてきたトラックにラップを返すという進め方ですね。トラックメイカーにはゆったり聴ける楽曲や激しくも哀愁漂う楽曲の制作を依頼して。

ヒガシ そうですね。そういう音が好きというのもあるし、僕たちはゴリラになれない自分たちの弱さを歌っているので、アッパーよりもダウナーよりになった面もあります。ただ街の喧騒を表現したいこともあって、傾向としてはチルでありつつ、いろんな要素を入れてもらいました。トラックに僕らで手を加えることはなく、むしろ丸投げして楽しむみたいな感じでしたね。世界観を説明して、あとはどう打ち返してくるのかを待つ。

「隔世 gorilla」MVのワンシーン。

ニシ みんなバッチリ打ち返してくれたからよかったよね。待ってる間も楽しかった。

──トラックが届いたら、リリックはすぐに書けましたか?

ニシ ヒガシくんはね。

ヒガシ ニシも遅いほうじゃないと思うけどね。僕はめちゃくちゃ早いんですよ。

ニシ 最初に発表した「Gorilla Anthem」は特に早くなかった? 夜10時に届いて1時か2時にはできてた。なんでそんなに言葉が出てくるのって思いますね。グルーヴがあって、韻を踏んでって、そういういろいろ条件があってラップになるんですけど、ヒガシの書くリリックはちゃんとした文章なのにしっかり韻も踏んでるし、ラップなんですよ。自分は言いたいことより韻を優先しちゃうことがあるんですけど、彼は言いたいことだけ言ったら、それがラップになっていく感じ。敵わないなと思います。

──やはりラップのリリックを書くうえで韻は意識しているんですか?

ヒガシ 韻はけっこう踏んでますけど、ないとダメとは思っていないですね。1行ずつ歌いながら作っていくんですけど、言いたいことがある中でどういうフロウでアプローチするのがいいか考えて、韻があると気持ちいい箇所で踏んでいく形です。

──作品の世界観がしっかりあるので、リリックはお互い意見交換しながら書いたんでしょうか?

ヒガシ お互いの作品なので、前提となるコンセプトを共有しつつも、あとは尊重し合って任せていました。何を書いてきても面白いというか、むしろ細かく指示して書いてもらうのは意味ないなと思っていて。2人でやる面白さって、何が出てくるかわからない予測不可能性にあると思うんです。例えば、最後に収録されている「Gorillaむかしばなし」は、「むかしむかし あるところに」という歌い出しだけ決めて、あとはお互いが書くものを楽しむという進め方をしていました。

ニシ 曲ごとに2人のどちらかが仕切って作っているんですけど、向こうはこういうことを書いてほしいのかなって意識しすぎなくていい雰囲気があるよね。

──なるほど。収録されている7曲以外にも作っていたんですか?

ヒガシ いや、Gorilla Attackとして現時点で作っているのはこの7曲だけですね。「GORILLA CITY」の制作が始まったのは3月くらいだったんですが、最初の方に余裕を持って作っていたら、後半はカッツカツになってしまって。畳みかけるように作りました。修羅でしたね。