ライブの演出でもGLAYを崩していく
──「SUMMERDELICS」リリース後に新しい発見などはありましたか?
ファンの方だけでなく、ミュージシャンの知り合いからも「このキャリアの中ですごく自由に音楽ができてる」って言われましたね。常に新しい音を求めて、それぞれ4人がいろいろな工夫をして作ってる印象があると。
──ナタリーでGLAYの後輩ミュージシャンの方にコメントをいただいたところ、HISASHIさん作詞作曲の曲が気に入った、面白かったとコメントする方が多かったです(参照:GLAY「SUMMERDELICS」特集)。
はははは(笑)。GLAYの楽曲で遊ぶのは僕にしかできない部分なので。それをメンバーも面白がってるし。アルバムの1曲目を「シン・ゾンビ」にする話になったときに、「バンドのコンディションがいいんだな」とは思いましたね。
──その面白さがリスナーにもきちんと届いた結果、オリコン週間アルバムランキングの1位につながったのかもしれませんね。
自分としてはさほど変なことをやろうっていう気持ちはないんですけどね。昔のほうがそういう部分はあったかもしれない。「この超メジャーな曲に変なギターソロを入れよう」とか。当時は無理してましたけど、今はそれを力を入れずに表現できるようになった感じはあります。
──「SUMMERDELICS」を携えてのツアーが開催中ですが、TAKUROさん曰く「HISASHI色がすごい」そうで。今までとは違うGLAYのライブになっていると。
そうなんですかね?(笑) でも、どんどんどんどんGLAYが持ってるイメージを壊していきたいんですよね。前回のインタビューでも話しましたが、それを第三者がするのは非常に大変なんですよ。だからバンドの内部から壊していかないといけない。レコーディングだけでなく、コンサートの演出でも「この曲をどういうふうにすれば面白くなるかな」とは考えますね。
──アリーナツアーを開催されるのはひさしぶりだと思うんですが、HISASHIさんはどんなところにアリーナ公演の面白さを感じていますか?
スケールの大きい演出を見せることがまず1つ。あとメンバーそれぞれが見てきたもの、得たものを反映させる場であることですね。
──肉体勝負のホールツアーとはそこが違うと。
僕、舞台が好きでよく観に行くんですけど、舞台の演出やアイデアってライブとは違って。火を出すとかわかりやすい特効ではなく、アイデアだけで観ている人を驚かす演出や仕掛けがある。だから僕の場合、舞台で受けた影響をライブに反映させたりしています。ちょっと前のツアーでは、自分も出演した「ブルーマン」のアイデアを取り入れたり。
──今回のツアーは、メンバーそれぞれが自分の作った曲の演出のイニシアチブを取ってるそうですね。そういう方法になったのはいつ頃なんですか?
デビュー20周年ライブが終わったあとかな? 20周年ライブが終わって、「そこから30年後のGLAYはどうなるんだろう?」ってなったときに、20年というキャリアは大切だけど、ちょっと邪魔なものにもなってしまったんです。だいたい予定調和と言うかコンサートの流れも決まってきて……そういうのもいいけど、もうちょっと流れをいびつなものにしたいんですよ。ファンの子はどう思ってるかわからないけども、僕はものすごい売れた曲なんかも崩していきたいんですよね。演出にブラックユーモアを盛り込んだり。1回壊してみることで、次なるGLAYのステージっていうのも見えてくると思うので。
──そうなんですね。
GLAYっていうのはスタンダードなものとして、もはや揺るがないものなんですよ。TERUが歌えばGLAYの曲になるという強い武器がある。だったらなんでもできるわけで、今、僕とかJIROはかなりやりやすい環境ですね。
──演出は確かに多様化してますよね。HISASHIさんがライブにおいて大切にしていることはなんですか?
なんでしょうね……1つ前のライブを超えることかな。その瞬間のGLAYが一番輝いてるようなステージにしたいんです。だから終わったあと、毎回映像を観直しますね。「ここで2人になったほうがいいな」とか、「ここは4人がそろっていたほうがいいな」とか。「なんか俺、下ばっかり見てるな」と思ったら次の公演では前を見るようにしたり。細かい部分も常に調整をしています。
俺はたぶん、GLAYの曲の正解を知ってる
──そんなツアーの真っ最中にシングルがリリースされました。しかもひさびさのバラードシングルです。
ここ最近のシングルは、それぞれみんな得意分野で対抗していくみたいな感じだったんですよ。そんな中、去年ぐらいからTAKUROが作るオーソドックスな曲も聴きたいっていう雰囲気になって。そしたら、アルバム「SUMMERDELICS」のレコーディング中にこの曲をTAKUROが持ってきたんです。バラードはひさびさなんだけど、あんまり気負わず自然に作れた気がしますね。
──TAKUROさんが曲を持ってきたときのことを覚えていますか?
そうですねえ……亀田さんと一緒にギターが3本とか4本とか鳴ってる、ストリングスが入ったダイナミックなギターロックバラードにしようみたいな話をしたかな。ウエットな感じではなく、ちょっとドライな雰囲気にしたいという意見がありました。
──バラードを作るときにHISASHIさんがこだわるポイントというのは?
うーん……「あなたといきてゆく」に関して言うと、イントロ、ギターソロ、アウトロを丁寧に作ることですかね。その曲に対してちゃんと似合う“アクセサリー”があると思うんです。昔「SPECIAL THANKS」を作ったときは、ギターソロをかなりトリッキーなものにしようとしたんです。でも、今はその曲に似合ったアレンジ、ギターソロを“着せてあげる”ことを考えてますね。それはTAKUROの曲に対して失礼だっていうのもあるし。
──奇をてらったアレンジだったり、自分が得意とするものを出すのではなく。
うん。今回はオーソドックスなバラード曲にしたいなと思って、それを心がけてギターを弾くようにしました。
──歌詞によって演奏が変わる部分はありますか?
いや、僕はないですね。レコーディングしてるときは、歌詞がまだ完成してなかったので(笑)。だから、その曲の持ってる雰囲気に合わせて弾きました。GLAYの曲に正解、不正解があるのだとしたら、俺はたぶん正解を知ってると思います。
──それはご自身の曲についても同じですか?
あ、自分は違いますね(笑)。これは昔からなんですけど、自分の曲はどこまでやっていいかわかんないんですよ。イメージはあるけど、正解がないんです。ほかのメンバーの曲は自分の中にない方程式を解かなきゃいけないから、「よっしゃ、解いてやろう!」と思って正解に導くんだけど。自分の曲のアレンジは苦手です。
──そうでしたか。今回のシングルには「あなたといきてゆく」のほかに、「時計」「Satellite of love」の再録バージョン、「Joker」のライブ音源が入ってますね。
「時計」はバンドスタイルでライブでやってみて、手応えもあったし、それをレコーディングしたいねっていう意見が出てきたんです。以前レコーディングしたときは、ピアノとギター、歌のシンプルな形だったんですよね。だから今の「時計」っていう感じです。「Satellite of love」のほうは歌だけ再録したので、今のTERUの歌声が味わえる曲になってます。
──「Joker」のカバー音源についてはいかがですか?
「VISUAL JAPAN SUMMIT」に出るときに、GLAYでX JAPANの曲をカバーすることになって、カバーするなら「Joker」が似合うんじゃないかなと思って僕が提案したんです。hideさんとの出会いっていうのは僕らにとってすごく大きかったし、YOSHIKIさんも「すごくGLAYに合うんじゃない?」って言ってくれたんでうれしかったですね。
──音源化を望む声がライブ直後から多かったので、待望と言えますね。
シングルに収録されるのが決まって、改めてやってよかったなと思ってます。
来年はもっとアグレッシブに動きます
──少し気が早いのですが、2018年のGLAYの展望を教えていただけますか?
今やってるアリーナツアーでいろんなものを吸収すると思うので、また制作意欲が湧くと思うんです。今年の夏は制作でけっこう忙しかったから、2018年の夏は楽しいイベントができるといいなあと思ったり。来年は、2017年よりもうちょっと外に向かったGLAYが見られるんじゃないかなと思います。
──2017年は2回もツアーを開催されて、アルバムもリリースしてと十分多忙な印象なのですが……。
僕としてはわりと内にこもってた1年だったので、来年はもっとアグレッシブに動きます。そのほかにも、今回のツアーで使ってる映像の編集をしたり、衣装もオリジナルでデザインを作ったりとかしてるので、そういったプロデュースとかにも興味がありますね。バンドじゃないもん!に楽曲提供したり、ほかのアーティストの作品に参加したりしたのも面白かったので、何かとコラボレーションするようなものをやっていきたいです。
──メンバーの皆さんにお聞きしてるんですが、HISASHIさんが今ハマってることってなんですか?
舞台を観に行くことかな。つい最近、三谷幸喜さんの作品とか観に行って。面白かったですね。同じ作品を何回も観に行くようなタイプではないんですけど、毎回勉強になります。
──いつ頃からハマってらっしゃるんですか?
ここ10年くらいですね。それこそニューヨークのブロードウェイの舞台とか、「ブルーマン」とかを初めて観たのがその頃で。なんかコンサートを観に行くより好きかもしれない。コンサートやライブだと純粋に楽しめなくて、「こうしたほうがいいかも」「音響がちょっとなあ」とか思っちゃうんです(笑)。
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JIRO(B)ソロインタビュー
- GLAY「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」
- 2017年11月22日発売 / LSG
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[CD+DVD]
2160円 / PCCN-00029[CD]
1296円 / PCCN-00030
- CD収録曲
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- あなたといきてゆく
- 時計(再録)
- Satellite of love(再録)
- Joker(LIVE from VISUAL JAPAN SUMMIT 2016)
- 「SUMMERDELICS」reprise
- DVD収録内容
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- あなたといきてゆく MUSIC VIDEO
- シン・ゾンビ MUSIC VIDEO
- XYZ MUSIC VIDEO
- SUMMERDELICS MUSIC VIDEO
- あなたといきてゆく(LIVE from Never Ending Supernova 17.5.15 市川市文化会館)
- BE WITH YOU(LIVE from Never Ending Supernova 17.5.15 市川市文化会館)
- the other end of the globe(LIVE from TOKYO SUMMERDELICS 17.7.31 お台場)
- HOWEVER(LIVE from TOKYO SUMMERDELICS 17.7.31 お台場)
- GLAY(グレイ)
- 北海道函館市出身の4人組ロックバンド。TAKURO(G)とTERU(Vo)を中心に1988年から活動を開始し、1989年にHISASHI(G)が、1992年にJIRO(B)が加入して現在の体制となった。1994年にシングル「RAIN」でメジャーデビュー。1996年にはシングル「グロリアス」「BELOVED」が立て続けにヒットし、1997年に「HOWEVER」がミリオンセールスを記録したことでトップバンドの仲間入りを果たす。1999年7月には千葉・幕張メッセ駐車場特設会場にて20万人を動員するライブ「MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL」を開催し、有料の単独ライブとしては世界最多観客動員を記録する。2000年に入ってからも数多くのヒット曲やヒットアルバムを生み出し、2010年6月には自主レーベル「loversoul music & associates」(現:LSG)を設立。メジャーデビュー20周年となる2014年は、9月に宮城・ひとめぼれスタジアム宮城にて単独ライブ「GLAY EXPO 2014 TOHOKU」を行い、11月にオリジナルアルバム「MUSIC LIFE」をリリースした。2015年には5月に10年ぶりとなる東京・東京ドーム公演を2日間にわたって開催。2016年1月にシングル「G4・IV」を発表し、同月より全国ツアー「GLAY HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2016 "Supernova"」を開催した。2017年7月に2年半ぶりとなるニューアルバム「SUMMERDELICS」をリリース。9月末から「GLAY ARENA TOUR 2017“SUMMERDELICS”」と題した全国ツアーを開催している。11月にニューシングル「WINTERDELICS.EP~あなたといきてゆく~」を発表。2018年3月17日に台湾・Taipei Arenaにてライブを行う。
2020年8月24日更新