ゲスの極み乙女。結成10周年インタビュー「特異な個の集合体が歩んだ10年を『丸』に込めて」、親交ある3組のプレイリストも (3/4)

……みんな、好きです。

──昔はバンドというと運命共同体みたいなイメージだったけど、今はちゃんと個人の顔が見えたうえで、そのメンバーが集まったときに最大級の力を発揮するような、そういうバンドのあり方の方がむしろ主流になってる印象で。言ってみればですけど、ゲスはそういうあり方を先取っていたバンドでもあると思うんですよね。

川谷 僕はそもそもindigoをやってたし、みんなも別のバンドをやっていて、最初からそういう体制でしたからね。前から言ってたのは、アベンジャーズみたいな……アベンジャーズまともに観たことないんですけど(笑)。

いこか ないんだ! 嘘でしょ!

川谷 ないんですけど、アベンジャーズみたいなバンドっていうのは昔のインタビューでもけっこう言っていて。4人がそれぞれのタレント性を持って、バンドに戻ってきたときに、ゲスの極み乙女。がさらにすごくなる。「ゲスの極み乙女。」という屋号があって、そこに集まるときは集まるし、離散するときは離散するし(笑)。もともと掲げていたことを体現できているなというのは今になって思いますね。

ゲスの極み乙女。

ゲスの極み乙女。

──最近だと、いこかさんは女優業でも活躍されているわけですが、バンドと個人の活動に関して、どのように意識が変化していきましたか?

いこか 女優業に関しては、小学生の頃からかじらせていただいていたのもあって、ずっとやりたかったんです。活動休止があったときに女優業を始めることをゲスのチームに話して、そのあたりからいろいろ動き出した感じですね。そういう中で、私だけじゃなく、みんな個々で活動の幅を広げていって、それを見ているのが面白いし、リスペクトできるので、私もがんばらなきゃなって思います。indigoもDADARAYも、ちゃんMARIがいろんなところで弾いてるのもそうだし、出ている作品もチェックするし…………みんな、好きです。

川谷 最後急だな! その間に何があったの?

いこか なんか恥ずかしくなっちゃった。

川谷 急に告白した人みたいになってたよ。

いこか 「好きです」だけ言って逃げる、みたいな(笑)。

──あはは。でもその感じが最近のライブを観てると伝わるというか、会う時間は10年前より減ったかもしれないけど、その分ライブで集まると4人で演奏することの喜びがめちゃめちゃ伝わってきて、本当にいいなって思うんですよね。バンドと個人の活動について、ちゃんMARIさんと課長はどう思っていますか?

ちゃんMARI いつかソロをやろうとずっと思っていて。ゲスだと自分では曲を作らないですけど、作曲自体は高校生くらいからやってたから、曲のストックがどんどん増えていて、これはいつか出さないとって思っていたんです。で、私も活動休止のタイミングでソロの曲も出そうと決めて、そこからリリースまでは少し時間がかかっちゃったけど、それまでにストックしていた曲から選んで出しました。これから先もそうやって自分で自分の作品を作ることは変わらないと思います。ゲスで初めて自分が曲を作らない立場でバンドをやって、その分曲の細部を見れるようになった。そのあとでソロの作品が出せたのもよかったんですよね。

休日課長 僕はずっとがむしゃらにやってきて、未だにそうっていうか。さっきも話しましたけど、昔よりももうちょっと楽しめている感覚はありつつ、徐々にマインドが変わっていった感じですかね。

ゲスの極み乙女。

ゲスの極み乙女。

──「この2年くらいで楽しんでやれているのを実感してきた」という話もありましたけど、個々のあり方を確立できてきたからこそ、バンドにも打ち込めるということかなと。

休日課長 そうですね。個々の活動が目立ってきて、僕もそれにすごく刺激を受けているので。

──初期はキャラ付けをすることでアベンジャーズ感を演出している部分もあったと思うけど、今はそれを必要としない、リアルなアベンジャーズになっていますもんね。

川谷 基本的に先のことはあんまり考えないようにしているので、その場その場でやってきたことが結果こうなっただけでもあるというか。今は今でいいし、昔は昔でよかったと思うけど、いい意味で収束してきた感じはあるかもしれない。だからこれからも時期によって多少の変化はあると思うけど、アベンジャーズ感みたいなのは……アベンジャーズ観てない僕が言うのもなんですけど(笑)、今後もっと加速していくんじゃないかなって。

もう一度ポップスというものと向き合いたい

──最後に、ベストアルバムの「丸」というタイトルについて話してもらえますか?

川谷 10周年で1回「。」をつけるっていうのと、ゲスの極み乙女。の名前にある「。」と、あと「1周回った」っていうのもあるし、これまでに「達磨林檎」(2017年5月発売のアルバム)みたいな、丸いモチーフをけっこう使ってるし、そういういろんな意味での「丸」ですね。最初は「丸」と「角」の2枚組にして、丸い曲と角がある曲でわけるというアイデアもあったんですけど、それこそだったらプレイリストでいいじゃんって話で、「丸」だけになりました。

──ベストアルバムが「丸」で、10周年記念公演が「解体」だと、ファンはちょっとバンドの今後を心配しちゃうと思うんですけど……。

川谷 そういうことでは全然なくて、解体して、再構築して、リスタートする、みたいな感じですね。一旦10年間のことをここで全部さらって、そこから次へ向かいます。

ゲスの極み乙女。

ゲスの極み乙女。

──ここから先のイメージはすでにありますか?

川谷 今すでにめちゃめちゃカッコいい新曲ができているんですよ。それは洗練されてるけど、ふざけてもいるというか、ゲスっぽさを残しつつ、また新たなステージにいけているんじゃないかなって。最近はあんまりポップスというものと向き合わないようにしてる感じがあったんですけど、「ストリーミング、CD、レコード」まででゲスの極み乙女。のコアな部分をバランスよく出せた気がして、今はもう一度ポップスというものと向き合いたいと思っています。