7人は“インテリ集団”?
──凌大さん、“リーダー”的には「遊戯的反逆ノススメ」のMV撮影はいかがでしたか?
長野 僕が主犯格なので、席が豪華だったんですよ! みんなより1段上がったところにいて。3画面のディスプレイでハッキングできたので、気持ちよかったし……みんなに「ハッキングしてー」って指示出すんです。普段はなかなかできない、貴重な経験でした(笑)。
吉澤 補佐の2人はただPCと向き合ってるだけなんですけど……。
大倉 でもめちゃくちゃ面白かったよ。僕と要人、タイピングができないんですよ。
吉澤 それでも空人はうまかったんですけど、僕、自分のプレイバックを見たら同じキーしか押してなかった(笑)。
大倉 しかも要人、指全部使ってるように見えて実際使ってるのは2本だけだからね。
一同 あはははは!
吉澤 ハッカーの人って、ブラインドタッチがすごく速いじゃないですか。絶対になれないなと思いました(笑)。
──潤さんはどんなキャラクターを?
武藤 僕はランニングマシンでめっちゃ走ってました。
桜木 潤の面白いところが、彼の衣装のズボン、ひらひらだったんですよ。普通ならそれを気にしてあまり速くは走らないと思うんですけど、最大出力で走ってて。
小泉 誰に言われたわけでもないのに。
武藤 スタッフさんには「全力じゃなくていいですよ」って言われたんだけどね。そこは遊戯的に? 反逆?したいなと思って。
長野 全然うまいこと言ってないからね?
一同 あはははは!
吉澤 あとスタッフさんに反逆しないで(笑)。
桜木 実際「その速さでよく走れてるな」って感じだったよ(笑)。
小泉 で、その横で僕と雅哉は筋トレをしてるっていう。
武藤 (小泉を指して)エキスパンダーが全然伸びないの(笑)。
小泉 思ったより本格的な、ちゃんと筋トレしてる人じゃないと伸びないような器具だったんです。びくともしませんでした(笑)。
大倉 ……ってかこれ、俺たち絶対インテリ集団じゃないよね!?
一同 あはははは!
“自分だけの小説”になってくれたら
──3曲目の「小説ならば」は「愛惜」をテーマにしたバラードソングです。
大倉 げんじぶのラブソングの主人公って、フラれたり、3人で仲よくしていたら自分以外の2人が恋人関係になったり、これまでまったく報われることがなかったんです。それがこの「小説ならば」でついに報われた!と思いきや、歌われるのは“報われたあと”のこと。恋愛が実ってすごく幸せになったけど、お別れしてしまったその後のことを歌っています。
──げんじぶのラブソングはそのほとんどが実らぬ恋を歌うものだけど、「小説ならば」は実ったあとの恋の話なんですね。
大倉 そうなんです。「あの頃はよかったな、戻りたいな」という曲。年齢もグッと上がった感じがします。これまでは学生とか、若めの設定だったと思うんですけど、ちょっぴり大人な恋愛になったなって。
吉澤 あと、げんじぶの曲の特徴の1つに“文学的”というものがあるんですけど、わかりやすく文学的な曲がようやく来たなと思っていて。難しい表現がないからこそ、聴く方それぞれがこの曲を自由に解釈できるというか。この曲が“自分だけの小説”になってくれたらいいなという気持ちです。
──情感豊かに歌い上げるまっすぐなラブバラードなので、「Operation Ego」と並べたとき、とても同じ作品の収録曲とは思えないようなギャップがありますね。
武藤 確かに。
長野 もう、びっくりセットです(笑)。
──歌い方も大きく変わってくるでしょうし、それだけ幅広い表現力が求められたのではないかなと思ったのですが、レコーディングはいかがでしたか?
長野 この曲はサビがげんじぶには珍しくユニゾンなんですけど、そこが難しかったです。自分の気持ちを強く込めるだけじゃ成立しないというか。
大倉 そうなんだよねえ!
長野 みんなで息を合わせないと、曲として成立しないので。普段レコーディングではスタッフさんに「自分の個性を詰め込んでみよう」とアドバイスをいただくことが多くて、そういう方向性で考えながら歌うんですけど、「小説ならば」は真逆の考え方でした。それはユニゾンパートに限らずで、例えば「前の人はこんな感じだったから、自分はこんなふうに歌って次の人にこうつなげなきゃ」とか、そういうことを意識していました。
雅哉、ここを歌えてうれしいんだろうなって
──繊細な感情表現が素敵だったので、自分以外のメンバーのパートで「いいな」と思う箇所をそれぞれ教えていただけますか?
杢代 めちゃくちゃありますよ。
大倉 僕は凌大さんの「どうせなら上手いこと 嫌いにさせてから いなくなってくれよ」。このパートからちょっとアップテンポになるところでの、ちょっとスタッカートを効かせた感じで「どうせ」と入るのがすごく好きです。
小泉 わかるー。
武藤 俺は空人の「ずるいよな」かな。
長野 わかる。今同じこと言おうとしたー!
武藤 ニュアンスも抜群だし、空人のこういう声って初めて聞いた気がして。「すごいな」となりました。
小泉 僕は和人のパート全般がいいなと思ってるんですけど、なんか伝え方にリアルさがある。背景が浮かんでくる感じがするんです。
大倉 そこはやっぱね、彼いろんな役を演じてますから。芝居力ですよ。
小泉 はい。仮面ライダーバッファを感じました。
小泉以外全員 バッファを感じた!?
杢代 全然作風が違うから!(笑)
一同 あはははは!
長野 あと僕は落ちサビの雅哉ですね。
一同 ああ~!
杢代 俺も落ちサビの雅哉好きだなあ。
長野 雅哉、ここを歌えてうれしいんだろうなって思った。バラード大好き人間・桜木雅哉が、バラードで一番好きな落ちサビを歌えて、絶対楽しんでやってるんだろうなと思ったし、イメージ通りの雅哉の声で歌ってくれて、すごくわくわくしましたね。
桜木 げんじぶはバラード曲が少ないけど最近ちょっとずつ増えてきたし、落ちサビを任せていただいたのはもうめちゃめちゃうれしかったです。がんばりました! あと、けっこうこだわって“自分の好み”の歌い方にしたんです。レコーディングが終わってどのテイクにするか決めるとき、スタッフさんがざっくりと選んでくれてはいたんですけど、自分も意見を言わせてもらって。そこにめっちゃ時間をかけました。
杢代 あとさ、雅哉の落ちサビのあとの潤くんパートもめっちゃ好き。
桜木 優しすぎず、どちらかというと明るい声色なんだよね。それがかえって、心にグッときちゃう。
小泉 “幸せだった”という感じがよく出てるよね。
吉澤 いつもの力強い歌声とはまた違った感じの武藤潤の歌い方がいいなと思います。
武藤潤の23年を……
──潤さんは、どんなふうにこの「小説ならば」と向き合ったんですか?
武藤 「小説ならば」の歌詞で一番おしゃれだなと思ったのが「栞をちゃんと挟んだわけでもないのに すぐ思い出せてしまうんだよ」というところで。記憶の手がかりになる栞を挟むまでもなく思い出しちゃう、それほどまでに好きだったんだという切なさが伝わってくるこの表現が、僕はカッコいいなと思いました。そういった気持ちが込められたこの曲の中で一番伝えたいことってなんだろうな?と考えたときに、それは「やっぱり 君のことが好きで」という僕のパートなんじゃないかなと。だからこそ、どうすれば1人になってしまった切なさを感じてもらえるのかをすごく考えました。幸せだった頃の情景が浮かび上がってほしいという思いを込めて明るいトーンを少し入れてみたり、とにかくいろいろ試しながらのレコーディングでした。
吉澤 なるほどね。
──1つのフレーズを歌うにも、すごく考えを巡らせて思いを込めているんですね。
武藤 そうですね。なんか……。
大倉 (様子の変わった武藤を見て)ん?
武藤 これは「小説ならば」に限らずなんですけど、ちょっと、言っちゃうと……。
武藤以外全員 何? どうした?
武藤 武藤潤が23年の人生で培ってきた音楽の技術、この作品に全部! 置いてきました!(と、力いっぱい机に手を置く)
武藤以外全員 おお~!?
武藤 これは、自信を持って言える!
長野 カッコいい。今の見出しにしてください!
桜木 てか、そんなこと今初めて聞いた……。
長野 なんで今まで言ってこなかったのか(笑)。
武藤 ハモリのパートとかもそう。もう、ホントにすべてを「テトラへドロン」に注ぎ込みました。あ、だからって、ここで辞めるとかじゃ全然ないんですけど!
杢代 誰もそんなこと思ってないでしょうよ(笑)。
武藤 でも、でも! 正直、全部録り終わった瞬間に思ったことは「俺、明日から声出なくなってもいいや」って……。
武藤以外全員 うお~っ!
大倉 ゴンさんだ(※「HUNTER×HUNTER」の主人公ゴン=フリークスが覚醒し急激な身体的成長を果たした状態)。
武藤 それくらい達成感がすごくて。「Operation Ego」はBPM200超えだし、ハモのラインはまったく別の曲状態。もうパズルというか、めちゃくちゃ頭を使うんです。キーが高いからどこで裏声に切り替えてどこで地声に戻そうとか、それが主メロにもハモラインにもあるから。頭も技術も使い切った感覚で。
大倉 だからあの時期、髪の毛伸びてたんだ。ゴンさん状態だから。
武藤 自主練でカラオケに引きこもりすぎて、ポイント貯まったんですよ。もう、ゴールド会員になっちゃう!
吉澤 “なっちゃう”?(笑)
武藤 あと2回で! ゴールド会員になっちゃう!
一同 あはははは!
──今のお話で、作品を聴くうえでの深みが一段増した気がします。
吉澤 コクが出ましたね(笑)。
大倉 「テトラへドロン」とは? 武藤潤「すべてここに置いてきました!」。
桜木 そんなにがんばった作品、聴きたくなるもん。
武藤 (感情をたかぶらせながら)だってこれ以上に気持ちを注ぐことあるかなって思っちゃう……。
杢代 わかった、マジでわかったから落ち着いて?
武藤 限界まで行ったよ? 俺。
大倉 もう十分伝わったから! 伝わりましたよね、ね?
──はい、ものすごく伝わりました。
杢代 もう、潤くん……(笑)。やっぱり“置いてきた全部”取りに行って来い!
一同 あはははは!
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歌っている側も気持ちが熱くなる