名勝負の末に新たなスターが誕生!「第5回 激闘!ラップ甲子園 -FINALTOURNAMENT-」レポート (2/2)

4人が存分に個性を出しきった準決勝

準決勝 第1試合

準決勝第1試合、D-nut's.とOWGの対戦は満票でOWGが制した。韻をふんだんに盛り込んだリリックで先制パンチを浴びせるD-nut's.に対し、OWGは終始涼しい顔で相手を見下しながら「切り口がありきたり」とバッサリ。さらにD-nut's.の放った「般若」のワードを拾って「お前が般若?」と返し、ラッパー・般若のネタへ移行するかと思いきや、「俺は鬼神」と鬼神ライガーを絡めたまさかのプロレスネタを投下する。これを契機に「スープレックスしたあとは俺がするFlex」というクリティカルなラインが決まり、完封に成功。

左からD-nut's.、OWG。

左からD-nut's.、OWG。

しかし敗れたD-nut's.も、およそ15歳とは思えない完成度の高さを存分に見せつけた。輪入道審査員は「“スタイルをブレさせないのが正義”みたいなアプローチがめちゃめちゃ刺さってて、それを最後まで貫けていた」と高評価だ。「けど、それによって逆にOWGくんのスタイルを際立たせてしまった」と敗因について付け加えると、呂布審査員も「丁寧にラップしてて、15歳とは思えない完成度ですげえよかった。けど、やればやるほどOWGのナメたスタイルというか“上から稽古つけてやる”構図にハマってしまった」と分析した。

D-nut's.

D-nut's.

OWG

OWG


準決勝 第2試合

準決勝のもう1試合は、特徴的なハイトーンボイスと冷静沈着なたたずまいで独特のムードを醸し出すShamisと、感情的なフロウで思想的なリリックを叩きつける森月による、真っ向からの殴り合いに。Shamisが「あんたが叩き上げ? 形だけ 中身がねえって言われたとこからマイクで晒し上げ」など気の利いたライムをよどみなく繰り出せば、対する森月は「誰ひとりとして同じ人間はいない これを違いと呼ぶか 差と呼ばせるか」と挑発的に畳みかける。互いの特徴を存分に出し合いながら、決定打と呼べるほどの派手なハードパンチは決まらずとも、すべての攻撃が有効打としてヒットし続けるようなハイレベルな攻防が繰り広げられた。

左からShamis、森月竜。

左からShamis、森月竜。

結果は上記の通り、これまた5-0というスコアに。これで2回戦第3試合から4戦連続でのスイープ決着という、非常に珍しい展開となった。この一戦についてBenjazzy審査員は、「めちゃくちゃいい勝負だった」と手放しで絶賛。「Shamisくんは、めっちゃ燃えてても頭は冷静なタイプなんだろうなと。それに対して森月くんは熱さを自分でコントロールしながらフロウもできていた。頭も熱いんだけどそれすらもコントロールできるみたいな、そこが森月くんかなあって思いました」と判定について語り、FORK審査員は「Shamisはクオリティが高くて、声質も含めて唯一無二。今回はフレッシュな森月竜が勝ったっていうことだと思います」とまとめた。

左からShamis、森月竜。

左からShamis、森月竜。

これで決勝戦の顔ぶれが決定。OWGと森月の2人が最後の決戦に臨むこととなった。

決勝はこの日一番の名勝負に

決勝

ついに迎えた決勝戦。さまざまな角度から積極的に仕掛けていくOWGと、それを正面から受けつつ的確なリターンを刺していく森月のガッチリ噛み合った勝負が展開された。まずOWGが「先の未来は神のみぞ知る 過去のリアルは街の溝が知る」と相手のお株を奪うような思想系のヴァースで先制攻撃を仕掛けると、すかさず森月は「人は神にあらず 獣にあらず 驕れる者もさ久しからず」と応戦。そこから森月の繰り出した「街灯の下に差し込んだシャドウ」を拾ったOWGが「リアルシャドー」の連想から「まるで範馬勇次郎 俺、本名ユウジロウ」と「グラップラー刃牙」ネタをねじ込み、かと思えば森月もそれを受けて自らの本名を明かすなど、2人は次々に発想を飛躍させていく。

左からOWG、森月竜。

左からOWG、森月竜。

中盤では「俺はカネじゃなくて 今日しか獲れねえもんを獲るのさ」と言い放った森月に対し、OWGが「俺は優勝とカネ鷲づかみ」と不遜に返し、さらに「名古屋からドラ(デラ)ええもん持ってきてるし(中略)のびのび対応する俺のラップ(中略)誰のスネもかじってねえぞ」と「ドラえもん」を彷彿とさせるワードを盛り込んだフィニッシュブローへとつなげる。これを受けた森月は「俺もお前のハートを鷲づかみにするMC(中略)そして日常のサバイバー 街のソルジャー(中略)日常にあふれているパンチライン 俺はそれを拾い上げるコレクター」と締め、こちらも見事なフィニッシュブローが決まったかに見えた。

OWG

OWG

森月竜

森月竜

左からOWG、森月竜。

左からOWG、森月竜。

しかし結果は4-1でOWGに支持が集まり、この瞬間「激ラ」5代目王者がOWGに決定した。唯一森月に票を入れたFORK審査員は「本当に接戦で、どっちを選ぶか難しかった。純粋にラップを楽しんでる森月竜の感じにハマっちゃって上げたんですけど、OWGの優勝って結果に文句はないです」と語り、OWGに札を上げた呂布審査員も「めっちゃ迷った。ちゃんと決勝戦が今日一番いい試合だったんですげえよかった」と満足げ。輪入道審査員は「最後の『日常にあふれているパンチライン 俺はそれを拾い上げるコレクター』っていう森月くんのラインがマジヤバくて。でも、これを引き出してるのってたぶんOWGくんだなと思ったんで、俺はOWGくんに上げました」と難しい判断だったことを明かした。見かけ上の点差は大きく開いたものの、実際は紙一重の判定だったようだ。

OWG優勝決定の瞬間。

OWG優勝決定の瞬間。

優勝を喜ぶOWG。

優勝を喜ぶOWG。

最後に行われた表彰式では、ソニー・ミュージック賞にOWGとShamisの2人が選出された。2人はテレビ番組「激闘!ラップ甲子園への道」テーマ曲を制作することになるので、激ラファンはこちらも楽しみにしておこう。

表彰式の様子。

表彰式の様子。

左からShamis、OWG、森月竜。

左からShamis、OWG、森月竜。