Galileo Galileiの“入り口”をどうぞ
──Galileo Galileiはこの春に本格始動し、まずはボックスセット「Tsunagari Daisuki Box」をリリースします。
雄貴 以前から「Ouchi Daisuki Club」というプロジェクトをやっていて。洋楽を日本語でカバーしたり、THE NOVEMBERSやPOP ETCを招いてイベントをやったり。僕らもこの言葉が大好きだし、ソニーミュージックのスタッフとも相談しながら、ボックスセットのタイトルを「Tsunagari Daisuki Box」にしました。ファンもしっくり来てるみたいで、タイトルについては特に何も言ってないみたいです(笑)。
──ボックスセットは、未発表曲、初CD化曲、新曲「4匹のくじら」を含む企画盤、ラストツアーの札幌公演を中心にした映像を収めたBlu-ray、インディーズ1stアルバム「1tas2」復刻盤、インディーズ1stシングル「HELLO GOODBYE」復刻盤、初の全国流通作品「雨のちガリレオ」による5枚組です。
雄貴 メンバーやスタッフと話し合いながら、僕ら自身も持ってない音源や、記憶が定かじゃない映像なども掘り返して、集めるのは大変でした。2016年の武道館のタイミングで「車輪の軸」というベスト盤を出しているので、それとはまったく違うものにしたくて。自分たちの本当の部分、2016年当時は恥ずかしくて出せなかったところも出したかったんですよね。これからの僕らの名刺というか、入り口になってほしいから。
──Galileo Galileiの原点を共有したかったと。
雄貴 そうですね。僕らもそう思うし、人からも言われるんですけど、ガリレオは音的にすごく変化してきてるんですよ。プリミティブな状態の頃からいろんな人に知ってもらって、ファンと一緒に成長してきたバンドなんです。僕らが同時代の洋楽を聴き始めて、その影響を作品に反映させるようになってからは、ファンの人たちを啓蒙するような活動もしていて。「何がなんでも、みんなと一緒に音楽で面白くなっていきたい」というエネルギーで動いていたし、再始動のタイミングで僕らの初期の音楽、芯の部分を再認識してほしいなと。だから、ただのボックスセットではまったくないですね。
岩井 「活動が終了してからガリレオを知った」という声もけっこう聞くんですよ。BBHF、warbearを聴いてくれてた人たち、再始動後に初めてガリレオを知った人たちの入り口になったらいいなと思いますね。
雄貴 今はサブスクのプレイリストで知る機会もあるし、「Galileo Galileiってどんな感じかな?」と興味を持ってくれる人もいると思います。
和樹 今回ミックス、マスタリングをやり直していただいて。聴いてみると恥ずかしさもあるし、あの頃の自分たちの情熱みたいなものを感じて「いいな」と思ったりしますね。
雄貴 腕の立つエンジニアの方にお願いしたんですけど、僕ら自身もすごくびっくりしました。サウンドを後期の曲に合わせてくれて、モダンになってて。初期の音源を持っているファンの人も、受ける印象が全然違うと思います。リマスターはとても大事なものなので、そのことを伝えておきたいですね。
──岡崎さんは客観的にGalileo Galileiの楽曲を聴ける立場かと思いますが、「いい曲多いな」という実感はありますか?
岡崎 全部いい曲ですね。ボックスセットには原点に近い音源や映像が収められていて、当時の雰囲気がすごくわかると思うし、あの頃ライブに行っていた方も振り返ることができるんじゃないかなって。
──もちろん最近の音源に比べれば稚拙な部分もあると思いますが、それを含めて尊いし、貴重な作品ですよね。
岩井 そう思います。僕が加入する以前の音源も入っていて、リズムがよれてたり、ピッチがズレているところもあるけど、それが逆にいいなと。今もそうなんですけど、完全にきれいにしたくないという思いがあるんですよ。プリミティブな感覚、初期衝動みたいなものを忘れたくないので。音楽に対する無垢な反応というか。
雄貴 当時は特にそれがあったよね。ちゃんと録れているレコーディングデータをあえて壊したり、アナログテープに通したりして、ディレクターに「マジでやめて」って怒られたり(笑)。
岩井 今も同じようなことをやってるけどね。一度作ったものを壊して、もう1回組み立てたり。そういう好奇心は初期の作品にも詰まっているし、ずっと変わってないんだなと。レコーディングのスキルは上がってるけど、芯の部分は通っていると思います。
雄貴 「やってること一緒じゃん!」ってよく話しています(笑)。成長はしてると思うけど、わかってきちゃうと楽しくなくなるんですよ。“わからない”をどれだけ続けられるかっていう。
岩井 考えない。感じる。
雄貴 勝手にリスナーの声とか予想しない。
何にも縛られない自由度の高さ
──新曲「4匹のくじら」についても聞かせてください。タイトル、歌詞の内容も4人の再出発にふさわしい楽曲だなと。
雄貴 僕としては、以前の感覚を思い出したかったんですよね。「Galileo Galileiというバンドで歌詞を書くってどういう感じだったかな?」という思いもあったし、とりあえずやってみようと。warbearのライブのときにGalileo Galileiの再活動を発表して、さらに新曲をやったらファンが喜んでくれるだろうなとも考えました。曲の作り方としては、なぜかメンバーみんながアコースティックの楽器を持ち始めたんですよ。だったらこんな感じかな?ってカントリーっぽいコードでスタートして、曲を作っていきました。足でリズムを取りながら、音を鳴らして。ソフトウェアを使ってやり取りするのではなく、その場で実際に音を出しながら作ったのはひさびさでしたね。俺と岩井くんはアコギだったから、岡崎くんにはバンジョーを渡しました(笑)。
岡崎 必然的に(笑)。
雄貴 けっこう上手に弾けてたんですよ。もしかしたら「ベース弾かせて」って思ってたかもしれないけど(笑)。
岩井 それも音楽の楽しさだよね。「このシンセ使ってみよう」とか、担当楽器じゃないものを試してみることも多くて。偶発性というか、そこで生まれてくるフレーズやグルーヴもあるので。
雄貴 ドラムのハイハットを録ってるときに、「俺がやる!」っていきなり言い出したり。でもうまくいかなくて、今度は岩井くんが叩いて。
岩井 あったね(笑)。さっき和樹が「お互いにリスペクトしてる」という話をしてたけど、いろんな楽器を演奏するのも、このメンバーならではだと思うんですよ。「こうじゃないといけない」がない。
雄貴 確かにそうかも。自分の担当楽器だったり、領域が聖域になっちゃう場合もあると思うけど、僕らが好きな海外のミュージシャンはこだわりなくなんでもやる人が多いし、それが音楽のコトンラストになっている。岡崎くんもそういう領域を持ってない人なんですよ。
僕らと一緒に冒険しましょう
──そして5月31日には7年ぶりのニューアルバム「Bee and The Whales」がリリースされます。どんな作品になりそうですか?
雄貴 30曲くらいのデモ音源から選んで、ブラッシュアップして。作品の世界観やアートワークを含めて、自分たちが音楽をやっていることの喜びをちゃんとパッケージしたいなと。
──ジャンルやトレンドではなく、自分たちの創造性を形にしたいと。
雄貴 トレンドはまったく見てないかな。ガリレオの後期から「王道感」「ど真ん中感」ということを言ってたんですけど、それは今も続いていて。例えば「いろんなことをやるけど、ずっと憧れてるのはブルース・スプリングスティーンの歌の感じなんだよな」とか。大事なものはずっと一貫していると思います。サウンドに関しては、意味不明かな(笑)。
和樹 確かに(笑)。
雄貴 多種多様というか。
岩井 説明が難しいね。
雄貴 ちゃんとポップスの枠組みには入ってるんですけどね。歌謡の要素を入れてみたり。
岩井 聴いたことのないものになってます。
雄貴 もしくは「どっかで聴いたことある気がするけど、わからない」感じ。何かのジャンルに傾いたり、流行りを追っているわけではなくて、その日その日、一期一会という感じです。
岡崎 確かに言葉で説明できない曲ばかりですね。「こういうジャンルです」とは言えなくても、聴いてもらったらわかるというか。リスナーの方に判断してもらえたらなと。
雄貴 うん。僕らはこれまで、作品に対して語りがちだったんですよ。「こうやって作ったんです」とか「こう思ってほしい」とか。でも、今回のアルバムはマジで自分たちでもわからなくて、スタッフの皆さんも困ってます。
岩井 プロモーション文句が決められないって(笑)。
雄貴 全部違うんだけど、全部似ていて。それを言い表せないのが超楽しいんですよ。
岩井 (笑)。以前はある程度、ゴールを設定してたんですよ。リスペクトしているものがあって「そこを目指してがんばろう」とか、何かに向けて書き下ろすとか、発表の場があるとか。今はそういうものが一切ないんです。初めてかもしれないですね、自分たちから出てくるものをそのまま形にして届けられるのは。
──すごく楽しみです。まずはボックスセット「Tsunagari Daisuki Box」をじっくり聴きたいと思います。
雄貴 アルバムとのつながりもバッチリあると思います。さっきも言いましたけど、Galileo Galileiの原点や本当の僕らを知ってもらえると思うし、そのうえで次に向かっていけたらなと。アルバムの曲に比べると蛹が蝶になるくらいの違いがあるんだけど、同じ生き物なんですよね。ボックスセットで自分たちの出自を知ってもらって、一緒に冒険してくれたらうれしいです。
──もちろん、Galileo Galileiはずっと続くんですよね?
雄貴 続きます。僕らが飽きるまで(笑)。
岩井 (笑)。先のことはあまり考えてないんですけどね。
和樹 今のことだけ。
雄貴 そうだね。ライブをいっぱいやりたいなという思いはあるけど。
岩井 そういうフワッとした欲求だけですね(笑)。
岡崎 まずは目の前のことに集中して。
雄貴 うん。このバンドに対して、いろんな人がお話を持ってきてくれたり、親身になって動いてくれたりする。それはすごくありがたいことだし、愛されて、恵まれてるバンドだなってめちゃくちゃ感じてるんですよ。目の前に現れたものを大事にしながら進んでいけたらいいなと思っています、今は。
ライブ情報
Galileo Galilei "Bee and The Whales" Tour 2023
- 2023年5月31日(水)北海道 Zepp Sapporo
- 2023年6月6日(火)東京都 Zepp DiverCity(TOKYO)(追加公演)
- 2023年6月8日(木)愛知県 Zepp Nagoya
- 2023年6月9日(金)大阪府 Zepp Namba(OSAKA)
- 2023年6月21日(水)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2023年6月24日(土)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
プロフィール
Galileo Galilei(ガリレオガリレイ)
尾崎雄貴(Vo, G)、佐孝仁司(B)、尾崎和樹(Dr)を中心に2007年に北海道・稚内にて結成されたロックバンド。2010年2月にミニアルバム「ハマナスの花」でメジャーデビューを果たす。その後「青い栞」「サークルゲーム」などでヒットを記録。2016年1月に4thアルバム「Sea and The Darkness」を発表した。リリースと同時期にGalileo Galilei名義での活動を“終了”することを告知し、10月に東京・日本武道館でのライブをもって活動を休止した。約6年を経て、2022年10月に尾崎雄貴、尾崎和樹、ベーシストの岡崎真輝、初期メンバーの岩井郁人の4人による新体制での活動再開を発表した。2023年3月にボックスセット「Tsunagari Daisuki Box」、5月に7年ぶりのニューアルバム「Bee and The Whales」をリリース。5月末より全国5都市のZeppを回るツアー「Galileo Galilei "Bee and The Whales" Tour 2023」を開催する。
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