GADORO「リスタート」インタビュー|韻に対する意識が変わり、打撃も寝技もいけるオールラウンダーなラッパーに

コンスタントなリリースを重ね、着実にアーティストとしてのキャリアを伸ばしているラッパーのGADORO。「韻贅生活」から約1年半ぶりのアルバムである「リスタート」は、新たに立ち上げられた自身のレーベル・Four Mud Arrowsからのリリースとなった。客演を迎えずにGADOROのワンマイクで制作された本作は、これまでの作品でも顕著に表れ、そして彼のラップの魅力であるリスナーの芯を打ち抜くようなパンチラインや、内面をすくい取るような描写力はもちろん、「韻贅生活」からより強固となったライミングによって、さらにその“ラップ力”は強烈なものになっている。そしてそこからは、これまで以上にラッパーとして、アーティストとしての自我を垣間見ることができ、まさに彼にとってのリスタート、新たなチャプターを感じさせる作品として完成した。

彼がこのアルバムを作り上げるに至った理由は何だったのか、インタビューを通して問うた。

取材・文 / 高木“JET”晋一郎撮影 / cherry chill will.

武道館に立つためには現状維持ではダメ

──新作「リスタート」は独立しての新作アルバムということですが、この「独立」というのは、ご自身でレーベルを設立されたということですか?

そうですね。今までお世話になった方から離れ、ライブDJのMXNIST、DJ HITOSHI、そしてその幼なじみと自分の計4人で、イチからというよりマイナスからのスタートを切った、という感じですね。正直、大変なこともめちゃめちゃあって。今までは曲制作とライブのことを考えるだけでよくて、何もわからない状態でここまで来たんだなと改めて気付きました。それはそれでめちゃめちゃありがたいことだったんですけど、ここから先このままでいいのかなって。今後の活動を続けるなら、自分でも「そういうこと」がわかっとかんといけないなっていう。

GADORO

──「そういうこと」とは具体的には?

運営というか、何もかも人任せだった部分が多かったんで、もっと向き合いたいなと。

──そういった部分もコントロールしようと。

コントロールというか……言いたいことを言い合って、無謀かもしれないような自分がやりたいことを自分で決断して進んでいくのは、怖いし、リスクも大きいし、面倒くさいことだらけですよ。だけど、だからこそハングリーになれるんじゃないかなって思えましたね。「何かを決断するときは、何かを選ぶんじゃなくて捨てるんだ」と思ってるんで、今までの何不自由ないありがたい環境を捨てることで見えない景色が見えるんじゃないかなって。それを打ち明けたときに、こんな頼りなさすぎる俺についてきてくれたみんなと、Four Mud Arrowsというレーベルを立ち上げたんです。

──これからの自分のキャリアを考える上でも、と。

間違いないです。もう言い散らかしてるんですけど、やっぱり武道館に立ちたいというのが、自分にとってずっと目標だし、その目標に向けて動くには、これまでのまんまというか、現状維持の状態ではダメだと思ったんですよ。現状維持って言葉は裏を返せば衰退の始まりだと思っています。これを続けていっても衰退してしまいそうな気がするし、武道館という目標を見据えたら、やっぱり自分たちで新しいことをバンバンやっていって、活動をもっと大きくしていかないといけないなと。

──目標に向けてエンジンを踏み込むためにも必要な行動だったと。新しく立ち上げたレーベルには、新しいアーティストを迎えるような考えもありますか?

それはまだ考えてないですね。今はレーベルを立ち上げた4人で精一杯というところもあるので、もっと余裕ができてから、いろいろ考えようと思っています。

GADORO
GADORO

俺について来いとか、面倒くさそうじゃないですか

──GADOROさんはずっと宮崎に地場を置き続けていますが、レーベル自体の所在地も宮崎ですね。

そうですね。宮崎の友達と一緒に作ったレーベルでもあるし。それに自分は宮崎で育って、そこで見てきたもの、抱いてきた感情をリリックにするタイプ。今回のアルバムも宮崎で培ったリリックなので、俺が活動する、リリックを書く、音楽を作るという意味は「宮崎に住む」ということにつながるんですよね。だから、もし宮崎という場所を離れたら、どんな歌を作るようになるのか自分でもわからないし、今のGADOROの歌詞は宮崎に住み続けているから書けるんですよね。

──「これからもここにいよう / この街で書いて この街で泣いて この街で最低な詩を歌うのさきっと」と「ここにいよう」と歌うように、宮崎という場所から受けるすべてを栄養素に音楽を作っているというか。

それにシンプルに好きなんですよね、宮崎が。やっぱり宮崎じゃない場所に3日ぐらいおったら、ちょっとホームシックになったりするし(笑)。

──「1LDK」のタイミングでお話を伺ったとき、宮崎のヒップホップシーンは今は盛り上がっていないと仰ってましたが(参照:GADORO「1LDK」インタビュー)。

ハハハ。そんなこと言ってました?

──この3年でその状況は変わりましたか?

若いラッパーも増えてきて盛り上がってきた感じがしますね。クラブもめっちゃ増えてきてて。ただシーン……ん~、「宮崎のシーン」となるとどうだろう。若くて売れたいやつは東京に行くし。でも、あくまでも俺が見てる範囲の宮崎は、盛り上がってると思いますね。

──GADOROさんが見る限りは、状況は好転してきていると。

ただ「シーン」みたいな部分は、俺もそんなようわからんくて。「宮崎を盛り上げよう」「宮崎のヒップホップシーンを」というよりも、自分がそこで歌ってたら、自ずと宮崎のシーンが盛り上がるようになっていくと思ってるんで。だから「シーン」については、あんま考えてないですね。それに、宮崎に対しては、本当にいろんな感情があるんですよ。好きな場所だけど「認められてない」と思うこともあるし、友達はそんなにいない。でも信頼できる人はいる、みたいな。もちろん、宮崎のラッパーの中では間違いなく俺が一番だと思っていますし、この日本の中でも俺が一番だと思ってます。それはこれから先も変わらないと思います。

──だけど、その街のボスになるというような意思はないというか。

そうですね。俺について来いとか、子分を増やそうみたいなことは、マジでないんで。だって単純に面倒くさそうじゃないですか(笑)。

──ハハハ。

そういう考え方が、後輩から慕われないし、先輩からもかわいがられない理由なのかなと思います、自分(笑)。