GADORO|何も見えないからハングリーでいられる

電波少女は唯一無二な存在

──宮崎出身のPMXさんとはこれまでにもタッグを組まれて来ましたが、「VERY VERY」でフィーチャーした同じく宮崎出身のハシシ(電波少女)さんは初の顔合わせとなりますね。

そうですね。ハシシさんとのコラボは闘争心というよりも、一緒に登っていきたいという感じでした。この曲ではハシシさんにフックを歌ってもらうことで、自分ができない部分を補ってもらって、さらにいい作品を一緒に作りたいっていうか。ハシシさんとの出会いは宮崎のバーでした。偶然居合わせてご挨拶したら、ハシシさんも僕のことを知ってくれていて。それで飲んで、ラーメン食いながら「曲作りましょう」って話になって、今回に至るというか。

──電波少女とGADOROさんの音楽は、スタンスはかなり違いますよね。

でも電波少女は唯一無二な存在だと思うし、僕は唯一無二な人が好きなんですよ。なんというか……“ジャンル:電波少女”だと思うんですね。ハシシさんのスタイルはメロディアスで聴きやすいけど、リリックは普通の人が書けないような独特の内容だし、そういう部分がすごく好きなんです。僕は彼のようなハイトーンでメロディアスなアプローチはできないんで、そのエッセンスを曲に入れてもらいたくて。

孤独は自分の特性

──前作の「I'm sorry」のような、GADOROさんが歌フックを担当する部分は今回はありませんね。メロディアスなフロウはあるけれども、明確に“歌う”という表現性は強くありません。

歌がクソうまいってわけじゃないんで……(笑)。逆に歌を意識しすぎると、リリックで自分の言いたいことが書きにくくなるんですよね。だから“ヒップホップを意識した歌”は表現するけど、単なる“歌”は自分ではやらないほうが今回はいいのかなって。

──同じように「靴紐」のボーカルパートには4s4kiさんを迎えています。

彼女も“4s4ki”っていう唯一無二のブランドを持ってると思うんですよね。彼女の持ってる孤独な感じがすごく好きだし、その部分に勝手に仲間意識を感じるんです。

──GADOROさんにもそういった孤独は強く感じますね。

それは僕も特性として考えてもいいのかなって思うようになりました。別に無理して友達を作ろうとも思ってないし……東京行って知り合いをたくさん作ったほうが有利っていうのもわかるんですけど、わざわざ頭下げたりっていうのは性に合わないし、俺はそういうのはいいやっていう。俺は俺でやろうっていう意味でも、孤独やコミュ障みたいな部分は自分の特性なんで……っていう言い訳はしてます(笑)。

──バトル後のフリースタイルセッションから“逃げた”こともあったそうですね。

大嫌いなんですよね、あれ。バトルで戦ってもフリースタイルセッションしたら仲間でしょ、みたいなのが。なんか馴れ合いっぽくないですか? 視聴者はそう思うだろうし、俺も「なんで戦ってたやつが終わってすぐに一緒にやってんだろうな」って。見せる側の意思として、そういうのはちょっとよくないよな、って。

GADORO

最初にクズを売りにしたのは俺

──先程の唯一無二という意味では、「BACK DRAFT」の中で、「AKにZEEBRA.MACCHO.西成にKREVAどれにすら収まらない独特のflavorさ」と自分のラップについて書かれていますね。

GADOROっていうジャンルを作りたいというか、作られているとは勝手に思ってますね。「俺にしか書けない言葉ってなんだろう?」って考えてるし、俺以外にこういうリリック書く人って絶対いないでしょって勝手に自負してるんで。

──ただ、その意味ではこれまでにリリックに印象的に登場していた「クズ」や「カス」というネガティブなワードが……。

多いですか?

──いや、逆にすごく少なくなってるなと。

あ、そうなんすか。でも口癖かもしれないです、「カス」とか。

──そういったワードを、これまでは自分に向けていることも多かったと思うんですが、今回は「クズだった」のような過去形になっていたり、今の自分に直接は向けていないですね。

どこかであるんでしょうね。自分で言いすぎちゃってたなっていう(笑)。

──「クズ」という曲があったから、余計にそういうふうに感じるのかもしれないけど、そこからの脱却のイメージが、GADOROさんの中にはあるのかなって。

もしかしたらクズから卒業したいのかもしれない(笑)。意識して減らしたわけではないんですが、確かにクズとかカスって言葉が自分のリリックには多いなとは思っていて。最初にクズを売りにしたのは俺のような気がするんですよね(笑)。バトルでポロッと出ちゃった「彼女に50万借りてる」って話がSNSでバーッて広まって、逆にそのクズさをアピールするしかなかったというか。その一連の流れによって本音をさらけ出すことができるようになった怪我の功名みたいな部分はあるんですけど、もう今は自分を卑下してクズっていう必要もなくなったのかな。それがリリックに反映されてるのかもしれない。それにバトル(「KING OF KINGS」)で優勝した賞金やギャラでちゃんと借金も返しましたし。利息付きで(笑)。