表情や歩き方で新しいことを
──そして、楽曲のミュージックビデオは“自分とのコラボ”という形で、みゆなさんは出演だけでなく制作の立場も経験されたんですよね。
はい。いつかやってみたいなと思っていたことなんです。それも自分にとって挑戦になるなという思いがあったし、何より楽しいんじゃないかなって。自分から生み出したものだからより愛せるし、皆さんにも愛してもらえると思ったし。今回クリエイターとして参加させていただいたんですけど、自分にとってもうれしい機会でした。
──撮影では、特にどういったところにこだわりましたか?
私は普段歌うときに笑わないんですけど、いつもよりも明るい表情で歌ってみました。それと、たくさんアドバイスをくださった樋口監督やカメラマンさんたちといろんなところを回らせてもらって、小さくて細長いトンネルやレインボーブリッジ、お台場のあたりを歩いたんですけど、歩き方を工夫して、ビートに合わせて歩きました。
──そうなんですね。
皆さんもないですか? 音楽を聴いていて、楽しくなりすぎていつの間にか音楽と同じ歩幅で歩いちゃったこと。私、よくなっちゃうんです。「my life」も心地よいビートだから歩幅を合わせたいと思って、カメラマンさんに「すみません、ちょっとスピードが速くなっちゃうんですけど撮っていただけますか」って。カメラマンさんは後ろ向きで進むじゃないですか。一生懸命足を動かしてくれたので、カメラマンさんの必死さも伝わればいいなと思うし……! あと今回の作品は景色もすごくキレイなんです。屋上のシーンでは都会にいるのに解放されている気分で。東京は狭いし人が多いから窮屈さを感じるかもしれないけど、この映像を見て解放されてほしいなという気持ちもあります。
──自分の表情や動き方に、特にこだわりを持って撮影に臨んでいたんですね。
そうですね。自分の表情や歩き方で新しいことをしてみようと思っていたので、自分に厳しくできたかなって思います。それに、今回の撮影の企画段階から取り組むことにしていた、自分のスマートフォンで撮った映像を使っているのもこだわりの1つです。自分の目に見えているものを、15秒くらいで切り取って。金魚を上から撮ってみたり、過去の映像を引っ張り出してきたりもしました。そうやって撮影するのが好きなんです。自分も思い出に浸れるような映像もたくさん入っているので、“今と昔”みたいなものも表現できているのかなと思います。
──撮影を振り返って、特に印象に残っていることはありますか?
初めて新宿駅の人混みを体験したんです。その人混みを眺めるシーンがあったんですけど、みんな同じ場所にいるのに持っている物語や抱えている感情はバラバラで。真横にいる人が何をするかもわからないし……って、不思議な気持ちになりました。自然としんみりした顔になっていると思います(笑)。あとは、屋上のシーンで雲の切れ間から夕日が出てきたんです。それはうれしいハプニングでしたね。
──出演者だけではない立場でMV撮影を経験して、新たな発見はありましたか?
難しいなって思いました。頭の中で描いている構成と、カメラを覗いたときの構図って全然違うんです。「ちょっと違うな」と感じたものが増えていくとアイデアをまた練り直さないといけないし、監督さんの想像力や感受性ってすごいんだなって思いましたね。
──今後も映像の表現に挑戦したい?
悔しさも残っているので、もっともっとがんばりたいですね! いずれはすべてを作り上げる監督も経験してみたいです。今の自分のレベルも知れたので、ホントにいい挑戦になったと思います。
音楽に関してはほぼすべて、自分の心に従っている
──ここからは“Follow Your Heart & Music”というテーマについて伺いたいのですが、お話を聞いているとみゆなさんにとって音楽は、本当に切っても切り離せない存在なんだなと感じます。
そうですね。自分が音楽を始めたきっかけも、もちろん音楽があったおかげだし、不登校だった時期にも音楽に助けられて、常に寄り添ってくれている状態でした。昔から母が音楽好きでよくかけていたし、小さい頃の記憶も、音楽が関係しているとよく覚えていたりするんですよね。それほど身近にあったからこそ、きっと今こういう活動をできていると思うので。自分の今は音楽のおかげであるというか。
──音楽が紐付くことで過去の記憶がハッキリ残ることってありますよね。
そう、例えば片思いしてたときに聴いてた曲とか、曲がなければ思い出しもしないのに……みたいなことあるじゃないですか。恋愛系の思い出になると、ちょっと苦い気持ちになっちゃうんですけど(笑)。あと、それこそ陸上をやっていたとき、モチベーションを上げるために聴いていた音楽とかも、やっぱり今聴いても「よし、がんばろう」という気持ちになるんですよね。いつまでもずっと寄り添ってくれる。だから今回作った曲も、今がんばっている人を応援したいという気持ちはもちろんあるんですけど、その先に進んでも聴き続けてくださるような存在の音楽になってほしいんです。不安になったときとかに、いつでも聴いてほしいなって思います。
──みゆなさんがこれまでに、“自分の心に従って”何かを決めた経験は?
やっぱり、「アーティストになる」って本気で思ったときかな。おじいちゃんおばあちゃんが陸上をすごく応援してくれていて、歌手になることに対して最初は不安な気持ちが多かったみたいなんです。私自身も陸上は好きだし、タイムも出ていて期待されていたので、なかなか「歌手になりたい」と言えない時期もあったんですけど、やっぱり音楽が好きだからおじいちゃんおばあちゃんに「私は歌手になりたいです」って手紙を書きました。そうしたら、2人はそれを見て「がんばりなさい」って。それほど音楽が好きだったし、音楽に関してはほぼすべてのことが自分の心に従っていると思います。何があるかわからないし不安もあったけど、でも「音楽を届けたい」という思いのほうが自分の中で強かったので。そこは、自分の心に従って進めたのかなと思います。
まずは朝起きよう!って伝えたい
──では、これまでの人生の中で「これは挑戦だったな」と思うことはありますか?
中学のとき、陸上の全国大会で日産スタジアムで走ったときのことですね。リレーのアンカーだったんですけど、ラスト何歩で思い切り転んで、ダントツのビリになっちゃったんです。それでも走り抜いた、その勇気を出すことが最大の挑戦でした。転んだあとに走るってだいぶキツいし、そのあとみんなに延々と言われ続けるのでトラウマに近い状態だったんですけど……って、何言ってるんですかね(笑)。でも、それが自分の中で一番の思い出です。
──それは忘れられない挑戦ですね。
全国大会ということもあったので、生きてきた中で一番緊張しました。しかも、バトンか体がほかのレーンに出てしまったら即失格なんですけど、私、細いレーンの中でバトンを手放さず、キレイに1回転したもんだから、記録だけ残ったんです(笑)。もう大失敗だったけど、そのおかげで仲間ともより仲良くなれたと思うし……今となっては笑い話っていうことも含めて、いいことだったんじゃないかなとは思います。
──では、そんな挑戦を経験したみゆなさんが、一歩をなかなか踏み出せない人へエールを送るとするなら?
「これをやらなきゃ」と思って苦痛になるならあまりしないほうがいいと思うけど、したらしたでとてつもなく自分をほめてあげてほしいです。あと、誰かに「がんばれ」と言われてもどうしてもネガティブになっちゃったり、気持ちの変化はあるものだと思うから。私じゃなくてもいいから、誰かの音楽を聴いて元気になって、明日の玄関のドアをがんばって開けようとしてくれるだけでいい。音楽が、一歩を踏み出す勇気や挑戦につながればいいなと思います。だから、まずは朝起きよう!って伝えたいです。ご飯も3食食べて。
──ありがとうございます。最後に今回の経験を経て、みゆなさんがこれから挑戦してみたいことはありますか?
「my life」で挑戦した変拍子やBPMで遊ぶアレンジは楽しかったからこれからの曲にも生かしたいと思ったし……あと、歩くときの靴の音とか鈴の音とか、自分で拾ってきた音を入れてみたりもして、そういったサンプルをもっと集めて曲を作れたらいいなとも思いました。それに、MVの監督もしてみたいですよね。もうしたいことづくしなので(笑)、1つひとつゆっくり叶えていけたらいいなと思います。
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2020年3月12日更新