音楽ナタリーでは、新たな一歩を踏み出そうとする人々を音楽の力で応援するリクルートの企画「Follow Your Heart & Music」特集を展開中。第4回となる今回は、みゆなに話を聞いた。
現役の高校生である彼女は「挑戦をする皆さんの心境をリアルに感じ取れる」という思いを胸に新曲「my life」を書き下ろし、この曲のミュージックビデオでは“自分自身とのコラボ”という形で映像制作にも初めて携わった。作品の細部に至るまで自身のメッセージを詰め込んだみゆなが、同世代の人々へ向けて伝えたい思いとは。
取材・文 / 三橋あずみ 撮影 / 曽我美芽
皆さんの心境をリアルに感じ取れると思った
──まず、今回の企画の話を聞いたときの率直な感想を教えてください。
素直に「やった!」と思いました。というのは、自分も高校生で、挑戦をする皆さんの心境をリアルに感じ取れると思ったから。これまでの「FYHM」ではいろんな経験をしてきたアーティストさんがエールを送ってきたのかなと思うんですが、自分はまだそこまでの経験はないと思うんです。だからこそ、皆さんと同じ立場に立てるというか。「どんな音楽を作ろうか?」って、すごく楽しみになりました。
──リクルートに対する印象って、どんなものでしたか?
今回のお話をきっかけに、すごく身近な存在になりました。あと、最近は一人暮らしに憧れて物件を見たりもしているので、テレビや街中でスーモくんを見ると「お疲れ様です、ありがとうございます!」って話しかけちゃいます。
──“挑戦”というテーマでの曲作りはいかがでしたか?
私は自分の想像の中で曲を作っていくので、テーマがあると幅が狭まるような感覚はあるんですけど、今回の“挑戦”というテーマは想像がしやすかったです。小学校・中学校と陸上の短距離走をやっていたんですけど、スタートを切る瞬間まで、不安な気持ちがすごくあるんです。実際にコケちゃったこともありますし(笑)。なんと言うか、そのときの「すぐそばの一歩先が見えない」感覚と似ているところがあるんじゃないかな?と思ったので、そういったイメージを膨らませつつ書いていきました。
──そうだったんですね。
自分がリアルに感じたことってスラスラと出てくるんです。今回の歌詞も悩むことなく書けたんですけど……自分も何かに挑戦したいと思ったので、自分で調べた英語を取り入れてみました。あとはリアルな人の心情を落とし込みたいと意識しながら書いていきました。人間って「がんばろう」と一度思っても、何かイヤなことがあると一気にネガティブになってしまうこともあるじゃないですか。そういう弱い部分をあえて表現することでより多くの人に共感してもらえる歌詞ができるんじゃないかなと思って、ネガティブな言葉を入れてみたり。もともと、みゆなというアーティストはあまり幸せなことばかりを書かないんですよね。人間のちょっとダークなところを表現しているので、そこは自分の特徴として置いておきたいなと思ったのもあります。
──では、サウンド面で新たに挑戦したことはありますか?
今回の楽曲の構成が、サビが3拍子になっていまして。プラス、後半になるにつれてBPMが若干上がっていく曲にしたんです。それは自分にとって新しい表現だったんですが、すごく楽しかったです。「そう来る?」っていうような反抗的なアレンジにしたくて3拍子を選んだんですが、思いの外いい感じになっちゃいました(笑)。
好きな音楽を聴くこと
──みゆなさんがおっしゃったように、気持ちの変化のコントラストが鮮やかに描かれている歌詞だなと思ったんですが、それはみゆなさんの実体験を入れ込めたから?
はい、この曲の心情はリアルに私です。がんばろうと思っても、その日の夜には「もうダメだ」と思ったり。それと、SNSで世の中の人のつぶやきを見ていると、みんなロボットみたいに毎日過ごしているのかなと感じたというか……自分の特性を生かせずに誰かの指示に従っている、“動かされてる”感覚、自由に身動きが取れない感覚を言葉にしている方が多いなと感じたので、その気付きは「動かされる日々 もう私じゃないな」っていう歌詞にして、社会の暗い部分を表現したり。私も一応社会人なので、こんなこと書いてもいいかな?っていう思いもありつつ。
──日々の心の動きや感じたことが反映されているんですね。
そうですね。もともと私、すごくネガティブで。自分のことが毎日嫌いになる一方だし、それにイヤなことが1つあっただけですぐにダメになっちゃうタイプなんです。そのおかげでダークな歌詞を書けているのかもしれないんですけど、自分でも自分がめんどくさいなって思うときがあって(笑)。だからそこもうまく出したいというか、みんなもわかってくれるかなという気持ちで書きました。
──とはいえ、最後には“私にしかなれない私を受け入れて前を向こう”と、前向きなメッセージを受け止められるような歌詞ですよね。ネガティブな自分であったとしても、前向きに進んでいくために必要なことはどんなことだと思いますか?
やっぱり、音楽を聴くことかなと私は思います。例えば誰かに「がんばれ」と言葉をもらったとしても、「もうがんばってるよ」と思ってしまうというか。ありがたいけれどひねくれ者だから、そう言われるとがんばりたくなくなっちゃうんです(笑)。自分のそういう性格もあり、「がんばれ」と言われずとも自分が一番みなぎる音楽を聴きながら電車に乗っていたりすると、やりこなせる部分もあったりして。この間ツアーで声帯を悪くしちゃったんですが、私、怖さから逃げてばかりだったんです。本番当日のリハーサルで泣いてしまったりしちゃったんですけど……そのときもライブ直前まで好きな音楽を聴いて「よし、やるぞ」という気持ちに持っていっていたので。やっぱり音楽が一番効果的かなと思います、立ち上がるには。
──それって“Follow Your Heart & Music”という今回の企画とすごく重なるものでもありますね。そういうときに聴く音楽は、みゆなさんの中で決まったものがあるんですか?
そのときにハマっている音楽をめちゃくちゃ聴きます。だから「がんばろう!」っていうファイトソングを聴くわけでもなくて……むしろ“病み病みの病み”な曲を聴いてがんばれることのほうが多いです(笑)。私のタイプ的に、悲劇のヒロインって言ったら大げさですけど……一緒に落ち込んでくれるタイプの曲を聴いて「やるぞ」って思うんです。
──そうなんですね。
でも今回書いた曲はわりと元気な曲なんですよね。そう、自分でも通学のときなんかによく聴いているんですけど、これが感動するんです!(笑) 自分がこんなに元気をもらえるということは、ほかの方が聴いたらもっと元気になってもらえるのではないかな?なんて考えたりもしました。やっぱり、自分の曲なので愛しい気持ちもちゃんとあるんですね。それが皆さんに届いたらいいなと思います。
ほんのちょっとのことでもいいからチャレンジしていこう
──今回の楽曲では英語詞にも挑戦されたということですが、印象的に使われている「I'm always challenging」というフレーズには、どんな思いが込められているんですか?
「Challenge」という言葉は絶対に最後に入れようと決めていたんです。ただ「毎日チャレンジ!」みたいな大きな気持ちで過ごすのはとても大変だと私は思っていて。でも、苦手なことや避けてきたことをほんのちょっと動かそうとすることだって、立派なチャレンジなんじゃないかなと思うんです。例えば、ケンカしたあの子に「ごめんね」と言おうって思うだけでも、私の中ではチャレンジなんですよ。今日は寝坊したから会社に行きたくない……けど行こうって決めるとか、電話して連絡しようとか、それもチャレンジ。起きてドアを開けて外に出ること自体が、チャレンジだなと思うんです。それに、失敗してもいいんですよ。ほんのちょっとのことでもいいから、自分にとってのチャレンジをして、ほめてあげることが大切なことだと思うし、毎日チャレンジを重ねていったら、それが次のチャレンジの糧になる。いいことづくしじゃないですか。だから、「ほんのちょっとのことでもいいからチャレンジしていこう」という思いを込めて。
──「チャレンジ」って言うと大きい壁に立ち向かうことを想像しがちですけど、すごく素敵な考え方ですね。
私がもともと、大きな夢を抱えたくない人なんです。目の前のことを1つひとつ大切にしていったら、その分の経験値が“壺”の中に溜まっていく。で、その壺がいっぱいになったときに目標がリアルになって……手が出せるところまで来たときに、初めて夢を口に出したいなって思うんです。RPGもそうじゃないですか。いきなりボスと戦うわけじゃなく、1-1、1-2とステージを1つずつクリアして、強くなってからボス戦に進む。そのほうが、気も楽だと思うんです。ほんの小さなことでも自分をほめてあげながらやっていくことで、ストレスも生まれずに夢が現実的になるんじゃないかな……というのを思ってたからこそなのかな。
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表情や歩き方で新しいことを
2020年3月12日更新