Furui Riho特集|テレビアニメ「CITY THE ANIMATION」主題歌は“天からのプレゼント”、自然と湧き出た自分らしさ (2/3)

みんなに委ねられるようになった

──ここから少し、2ndアルバム「Love One Another」のリリース以降の活動についてお話を伺いたいと思います。先ほども少し触れましたが、あのアルバムは次のフェーズに移るための重要な作品となったというお話がありました。

「Love One Another」のあとに出したのが「言えないわ」というシングルで、内容はまだ話せないけど、その時点でもう次のアルバムのタイトルとテーマが見えたんです。だから「Love One Another」のリリース後すぐに、次のアルバムに向けてという意識で曲作りをしていました。ただ“自分の理想を目指して作りたいものを作る”というのは変わってないです。

──これまでとの違いがあるとすれば、例えばMAZZELや&TEAMに楽曲提供をしたり、昨年12月発表のシングル「Tomorrow」のレコーディングにバンドメンバーを迎えたりと、Furuiさんを中心としたサークルのようなものが広がって、そこと制作とがうまくリンクしているような気がします。

ああ、なるほど。それで言うと、以前なら妥協できないがゆえに1人でやっていたことを、バンドのみんなに委ねられるようになりました。それまでは1つのメロディをかなりの時間をかけて再構築する、というのをずっと1人でやっていたんです。でも、いい意味で割り切れるようになると曲を作るのも早くなって。要は執着が減ったということなんでしょうね。実際「Tomorrow」の制作を通して「バンドメンバーに委ねることでいい曲になる」ということも経験できましたし、新たな発見をしながら一歩ずつ進んでいる感じがします。

Furui Riho

──その気付きは「言えないわ」の制作時からすでにあったんですか?

「言えないわ」の制作を経て気付けた、という感じですね。それこそ4月にリリースした「MONSTER」で描いているように、「言えないわ」を作っていたときはまさにモンスターになって火を噴いてるような状態だったんですよ(笑)。でも、そうやって毎日を120%くらいの力で過ごしていると、体調を崩して、心までぐちゃぐちゃになってしまう。その原因はやっぱり作品に対しての執着だと思うんですよね。「ここまでやらなきゃ!」とか「がんばらなきゃ!」みたいな状態で生活してるといずれ限界は来る、ってことを学んだというか。曲への悪い意味でのこだわりを手放せるようになったんです。すごく生きやすくなったし、毎日80%くらいの力で、ちょっとサボったり、たまに韓国ドラマを観たり(笑)、それくらいでやるのが健康的に音楽に向き合えている気がしますね。ただ、正直そのペースをまだつかめてなくて、めっちゃがんばっちゃうときとサボりすぎちゃうときのバランスを見極めながらやってます(笑)。

Furui Rihoの今のモード

──今のお話がそのままニューシングルのカップリング曲「ちゃんと」につながっているように感じます。

ははは、そうですね。気付いたことをそのまま歌詞にしています。

──「ちゃんと」は“ちゃんとしようよ”ではなく、“ちゃんとしすぎるのもしんどいかもね”というメッセージが歌われているのが新鮮でした。

ありがとうございます。

──サウンド的にはFuruiさんのカラーの1つであるダンサブルなビートのポップスですね。

A.G.Oくんと一緒に制作するのは4回目なんですけど、彼とタッグを組むと間違いないので、それこそ委ねながらやっていきました。メロディもサウンドも最初に出てきたアイデアのところもあるし、歌詞もそこまで悩まなかった。「LOA」や「Hello」のようなゴスペルをベースとしたポップスと、この「ちゃんと」や過去曲で言うと「ABCでガッチャン」とか「ピンクの髪」といった、R&Bを軸としたちょっと個性的なポップス、この2つが今のFurui Rihoのモードなのかなと感じました。ちょっと前まではもっとクールな曲もあったんですけど。

──「PSYCHO」とかね。

そうそう、ほかだと「青信号」とか。でも、だんだん自分のやりたい方向性が見えてきた気がします。

──その音楽的なモードは今後も変化していくんでしょうね。

そうですね、飽き性なので(笑)。

Furui Riho
Furui Riho

夢は叶う

──A.G.Oさんとの制作で言うと、お二人はAyumu Imazuさんが4月にリリースした楽曲「LIVE IT UP! (feat. Furui Riho)」に参加されています。この楽曲の制作はどのように始まったんですか?

まずはAyumuくんが作ったデモからスタートしました。それで「2番はRihoちゃんにお願いしたい」ということで、2番のヴァースを私が作ることになって。それと同時進行でA.G.Oくんにトラックをブラッシュアップしてもらって、という感じですね。Ayumuくんと私の色が出た曲になったと思います。Ayumuくんの楽曲はもともと好きだったんですけど、一緒にやってみて彼のすごさを改めて感じました。天才だと思います。「LIVE IT UP!」は歌詞が英語だし、洋楽のエッセンスがある曲なので、私もじゃあそっちに全振りしようと。今までは「J-POPという枠の中で自分の色を出す」という意識で曲を作っていたところがあるんですけど、あの曲ではそれを全部捨てて、私が今まで聴いて育ってきた音楽の要素を全力で抽出して作ったので楽しかったです。

──「LIVE IT UP!」はユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」のWeb CMのタイアップソングですが、このコラボはどういうきっかけで決まったんですか?

ユニクロさんがWeb CMを制作することになって、Ayumuくんと私の名前を挙げてくださったみたいなんです。あと、私もともとユニクロでアルバイトをしていて。

──そうなんですか! 札幌ですか?

地元の小樽で、大学生のときに。初めてのアルバイトで、けっこうがんばってたんですよ。それで、六本木の東京本部で表彰されたこともあって(笑)。

──すごい!

その頃、私が働いていたお店にはやる気のあるスタッフがたくさんいて、顧客満足度ナンバー1のお店に選ばれたんです。ユニクロで一生懸命アルバイトした日々は大切な思い出ですし、当時すでに音楽活動をしていたので店内BGMを聴きながら「いつか音楽でユニクロと関わるお仕事ができたら」と想像して洋服を畳んでいたので、お話をいただいたときは「絶対にやりたい!」と思いました(笑)。それに大好きなAyumuくんとA.G.Oくんと一緒だし、鍵盤はうちのバンドのバンドマスターをやってくれているハナブー(ハナブサユウキ)なので、すごく親しみのあるメンバーで作ることができたっていうのも感慨深かったですね。

──夢って叶うんですね。

そう、夢は叶うんです!

Furui Riho

──ここまでの道のりで音楽をあきらめようと思うことはありませんでしたか?

1回あきらめようとしたんですけど、もしここでやめちゃったら私には何もなくなるなと思ったらやめられなかったですね。なんでこんなにつらいことやってんだろう?と思うこともありましたけど。

──もうやめようと思った次の瞬間に新しい曲のアイデアが浮かんでしまう、みたいな。

そうなんですよね。結局音楽が好きなんですよ。だから売れることがゴールではなくて、大切なのは自分が今いる環境の中でどれくらい一生懸命生きられるか、音楽を通していろんなものを得られるか。そんな人生になったらいいなと思ってます。