音楽ナタリー PowerPush - 藤原さくら
19歳新鋭が描き出す音楽の“アラカルト”
メロディや音の響きを重視した曲作り
──今回の「à la carte」のレコーディングには、先ほども話したようにものすごいミュージシャンが集まっているわけですが、その中ではちゃんと自分の意見も言いつつ制作を進めていったんですか?
はい。自分の中ではそれぞれの曲にイメージがあって、レコーディングの前からノートにいろいろ書きとめていたんですよ。例えば「この曲では木琴を使いたい」とか。でもそのノートを見せてないのに、Curly Giraffeさんが木琴を使ったアレンジをしてくださっていたりとか。それで「私のやりたかったことが全部伝わってる!」って(笑)。ギター1本から生まれた曲なのに、レコーディングでどんどんすごいことになっていくのを見るのは本当に感動的でしたね。いい経験をさせてもらいました。
──あと聴いていて印象的だったのは、英語で書かれている曲が多いっていうこともあるかもしれないですけど、10代の女の子の曲にありがちな自意識の葛藤みたいなものがあまりないところで。情景を切り取っていく感じの歌詞を書く方だなと。
メロディから歌詞が導かれていくことが多いんですよね。実際、自分が普段聴いている音楽も、ベルベル語(※モロッコやアルジェリアなどの言語)の歌だったりすると、本当に何を歌っているのかまったくわからないから。
──そうでしょうね(笑)。
でも、その言葉の音の響きに心を持っていかれたりするんですよね。だから、自然に自分もメロディや音の響きを重視した曲作りをするようになっているのかもしれませんね。
──歌詞に共感してもらいたいという思いはあまりない?
いや、もちろん聴いた人に共感はしてほしいです。今回のミニアルバムにも自分の感情をそのまま吐き出したような曲もありますし。でも共感だけじゃなくて、自分の作品を聴いて「あれ? この楽器って何?」とか思ってもらって、そこからほかのいろんな音楽に出会ってもらえたらなってことは思いますね。
──そういう意味でも、今回の「à la carte」は可能性の塊のような作品だと思うんですよ。純粋に音楽的なクオリティが高いだけじゃなくて、いろんな要素が含まれていて。藤原さんがこの作品をきっかけに、この先どこにでも行けるっていう。
タイトルの「à la carte」には、“いろんなタイプの曲がここにあるから、リスナーがそこから好きなものを選んで食べられるように”っていう意味を込めているんです。自分の中に「こうなりたい!」っていうイメージがあるわけじゃなくて、今思うのは、自分はずっと歌っていきたいし、いろんな人に自分の歌を聴いてもらいたいってことで。一部の人に向けた音楽じゃなくて、いろんな人に聴いてもらえるような曲を歌っていきたいという思いは強いですね。私、ポール・マッカートニーが大好きなんですけど、ポールが作る音楽の持つ、世界中の誰にでも響くあの親しみやすさがすごいなって思っていて。
──なるほど。自分が「どこにでも行ける」って言ったのも、メロディや歌の親しみやすさと、世界中の音楽に親しんでいるマニアックなセンス、それが絶妙なブレンド具合だなって思ったからなんです。もしそこでセンスばかりが先走りすぎると、オシャレな音楽という文脈だけで狭い場所で消費されてしまう可能性もあるわけだけど。
ああ(笑)。でも、自分はオシャレな音楽も大好きなんですよ(笑)。だから、そこはバランスの取り方が大事なのかもしれませんね。
──藤原さんの音楽って洋楽的なバックグラウンドを強く感じさせるという意味では、今の邦楽シーンにあまりいないタイプのシンガーソングライターだと思うんですよ。よく「若い世代が洋楽をあまり聴かなくなった」って言われるじゃないですか。でも、自分は全然そんなことないと思っていて。いわゆる同時代のロックを熱心に追うような層は確かに以前に比べたら減っているのかもしれないけど、ポップスに範囲を広げたら、今でもみんな普通に海外の音楽にも親しんでいるわけで。だって、日本でテイラー・スウィフトの東京ドーム公演2DAYSがあっという間に2日間ソールドアウトになっちゃうわけですし。
本当にそうですよね。
──だから潜在的には洋楽的な音楽を求める若い世代のニーズというのはものすごくあって、自分は藤原さんの音楽はそこにうまく応えることができるんじゃないかって思うんですよね。
そう言ってもらえるとありがたいですね。私自身、本当にいろんな音楽を聴いているので、自分の音楽にもそれを反映させているし、ラジオの番組とかでは自分の好きな世界中の音楽を紹介しているし。そうやってどんどん自分の音楽の世界と、その周りの世界が広がっていったらいいなって思いますね。
──ちなみに、藤原さんを音楽の道へと導いたお父さんは、今回の作品を聴いてどんなことを言ってました?
私がこうしてメジャーデビューすることを本当に喜んでくれているんですけど、今回の作品はまだ聴かせてないんですよ。私としてはすぐにでも送りたいんですけど、「自分で買いたい」って言っていて(笑)。CDショップで予約したそうです。
──ああ、いい話ですね(笑)。
アルバムの最後の「ありがとうが言える」は、東京に出てきてから感じた福岡にいた頃の周りの人への感謝の気持ちを歌ってて、泣きながら作った曲なんです。親にも聴いてもらえたらなって思ってます。
- デビューミニアルバム「á la carte」 / 2015年3月18日発売 / 1944円 / SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64288
- デビューミニアルバム「á la carte」
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iTunes Storeにて配信中
収録曲
- Walking on the clouds
- Cigarette butts
- My Heartthrob
- Just one girl(Original Ver.)
- We are You are
- ありがとうが言える
さくら前線北上インストアツアー2015
- 2015年3月21日(土・祝)
福岡県 タワーレコード福岡パルコ店 イベントスペース
START 14:00 - 2015年3月27日(金)
広島県 タワーレコード広島店 イベントスペース
START 19:00 - 2015年3月28日(土)
大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
START 16:00 - 2015年3月29日(日)
愛知県 名古屋パルコ西館1Fイベントスペース
START 13:00 - 2015年4月3日(金)
東京都 タワーレコード渋谷店 1Fイベントスペース
START 19:30 - 2015年4月4日(土)
東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
START 12:00 - 2015年4月11日(土)
宮城県 タワーレコード仙台パルコ店 イベントスペース
START 16:00 - 2015年4月12日(日)
北海道 タワーレコード札幌ピヴォ店 イベントスペース
START 14:00
藤原さくら(フジワラサクラ)
福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼少期からさまざまな音楽に親しみ、父親の影響で10歳からギターを弾き始める。高校進学後からオリジナル曲を作り始め、地元でライブ活動も行う。高校在学中の2013年に3枚の自主制作盤「bloom1」「bloom2」「bloom3」を発表し、2014年3月に初のフルアルバム「full bloom」をリリースする。高校卒業を機に上京すると、音楽活動が本格化。2015年3月にミニアルバム「à la carte」でSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューを果たした。