ナタリー PowerPush - フジファブリック
キーパーソン3組とメンバー3人が語る アルバム「STAR」完成への道のり
──後藤さんとフジファブリックの出会いについて教えてください。
フジファブリックとの出会いは渋谷屋根裏で対バンしたのが最初ですね。確か2002年だったと思うんですけど、今のフジファブリックの3人がバンドに加入する前です。志村くんと彼と一緒にバンドを始めたドラムの子、それから当時は女の子のメンバーもいたし、ホントの初期ですよ。それからメンバーチェンジを経ていくんですけど、常々思っていたのは曲が変わってるなってこと。音階選びにしても、コード進行にしても、なんでそっちにいくんだろう?っていう曲なんですよね。だから、2005年のライジングサンで一緒になったとき、志村くんに「いい意味で、ホントに変わってるよね」って言ったことをよく覚えてます(笑)。
──そして、ASIAN KUNG-FU GENERATIONとフジファブリックの関係ということで言えば、昨年から今年にかけて行われたアジカンのツアーにキーボードの金澤くんが参加しましたよね。これはどういうきっかけで実現したものなんですか?
フジファブリックの「蜃気楼」、そのアウトロのピアノがめちゃくちゃ良くて、「これはスゴいな」と思ったんですよね。(金澤)ダイちゃんが不協和音を弾いているんですけど。だから、このキーボードの人といつか一緒に音楽を作ってみたいなって思ったというか。まあ、思ってただけだったんですけど、ここ何年か、自分の作る曲にシンセや鍵盤を入れたいなっていうモードになっていて、「ツアーにキーボードを入れたいんだよね、例えばフジファブリックの金澤くんみたいな」っていう話はしていたんです。そして、2010年のタイミングで「最近はどうしてるのかな? 今だったら、金澤くんと一緒にツアーができたりしないかな?」って思ったことをきっかけに声をかけてみたら、ワンツアー参加してくれることになったんです。だから、一方的なこちらのラブコールですよね。
──そして実際に音を合わせてみて、その手応えはいかがでした?
こちらが想像していた以上にお互い意気投合したんですよね。それがどういうことなのか、よくわからないんですけど、どうやら興味の対象が似てるんですよね。うちらのバンドって、遊びに行きたい場所も合わなくて、例えば、僕が行きたいってことで(アートで知られる)直島に遊びに行ったら、ほかのメンバーはアートとは全然関係ないものも「あれはアートだね」なんて、茶化し始めるんですよ(笑)。でも、ダイちゃんとはそういうところも合うんですよね。音楽的な部分では、音楽の趣味の話をいろいろ聞いたりしたんですけど、彼はいろんな音楽を幅広く聴いてそのライブラリからちょいちょいつまんでプレイに反映させるタイプではなく、聴いている音楽とは別のところにアウトプットがある感じかな。僕ほどナードにあれこれ音楽を聴いてないと思います。
──という意味では、リスナー気質というより、プレイヤー気質のアーティストなのかもしれないですね。
そうですね。プレイヤー気質なんでしょうね。だから、アジカンの曲のアレンジも彼のアイデアは面白かったですよ。あと、そういう意味でプレイヤーとしての引き出しがすごくたくさんあるので、こちらがやりたいと思っていることに対してのリアクションがすごく早いんですよ。だから演奏中も気が合うなと思ってましたね。それからうちはドラムがバンドの屋台骨になっているんですけど、ダイちゃんが入ったことでドラムの負担が減ったし、僕も歌うのが楽になったんですよ。ダイちゃんは演奏中の空気が読めるというか、音楽的なコミュニケーション能力に優れた人なんだなと思いましたね。
──そして、アジカンとのツアー後に完成したフジファブリックのニューアルバムを聴いてみて、いかがでした?
ダイちゃんが歌詞を書いた「cosmos」はものすごい散文でしたよね。「韻、踏もうよ!」って思いましたけど(笑)、そういうところに彼の個性が表れているんでしょうね。それから山内くん、いい声してますよね。バンドメンバーは変わってないんですけど、新しいバンドなんだなと思いました。やっぱり、アルバムとしては特殊な作品だと思うんですよ。でも、フジファブリックの場合、みんなが彼らの活動継続を応援しているところが不思議だなって思うし、「がんばってほしいな」って僕も思っているところが我ながら不思議なんですよね。JOY DIVISIONがNEW ORDERに名前を変えたように、バンド名を変えるという選択肢もあったとも思うし、そんな中でフジファブリックとしてやっていく選択というのは、3人にとって一番厳しいものだったんじゃないかと思うんですよ。だって、何をやったって、とやかく言われるに決まってますもん。だからミュージシャンとして、彼らの決断というのはものすごく強いものだったと思いますし、僕がフジファブリックの4人目のメンバーだったら、多分弱音を吐いたでしょうね。
──そんな勇気ある決断を下したフジファブリックにメッセージをお願いします。
ダイちゃんに参加してもらったうちらのツアーが震災の影響で途中で終わってしまったこともあって、達成できなかった何本かを一緒にやりたい気持ちもありますが、ここから先、彼らの音楽がどうなっていくのか非常に興味があるので、ライブが観てみたいし、それ以上に新しいフジファブリックと競演したいなと思いますね。そして今後の彼らも変わらずに応援させてもらいます。
CD収録曲
- Intro
- STAR
- スワン
- ECHO
- 理想型
- Splash!!
- アイランド
- 君は炎天下
- アンダルシア
- Drop
- パレード
- cosmos
初回限定盤DVD収録内容
“STAR” MUSICVIDEO
フジファブリック
志村正彦(Vo, G)を中心に2000年に結成されたロックバンド。都内を拠点に活動を開始し、2002年にミニアルバム「アラカルト」をリリース。そのユニークなサウンドと捻りの利いたアレンジ、志村の綴る独特の歌詞が注目を集める。2004年4月にシングル「桜の季節」でメジャーデビュー。「フジファブリック」「FAB FOX」「TEENAGER」といったアルバムがいずれも高い評価を受け、2009年5月発売の4thアルバム「CHRONICLE」でさらに支持を拡大するも、同年12月24日に志村が急死。バンドは山内総一郎(Vo, G)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(B)の3人でその活動を継続し、2011年9月に新体制で初となるアルバム「STAR」をリリース。
2011年9月21日更新