音楽ナタリー PowerPush - fripSide

satが語る!“fripSide然としたもの”と“南條愛乃の進化”

オリコンNo.1シングル「sister's noise」に、小室哲哉との共作曲「eternal reality」、ストリングスと男声コーラスを大胆にフィーチャーした「black bullet」と、この1年半、攻めに攻めた楽曲をリリースし続けてきたfripSide。そんな彼らがこのたび新作「infinite synthesis 2」をリリースする。

今作は彼らにとって3枚目のオリジナルアルバム。その内容はここ数枚のシングル同様、ハードなデジタル感、ダンスミュージック感を打ち出しつつも、どこかリラックスムードをたたえたものとなっている。「black bullet」の詞の通り「赤く燃え」「熱く響く」シングル曲と、“大人の”余裕を見せる新録曲。一見相反する2つの楽曲群をスムーズかつ美しく1枚のディスクに収めるトータルパッケージ術とは? コンポーザー、アレンジャーにしてプロデューサーのsatに話を聞いた。

取材・文 / 成松哲

老若男女楽しめるfripSide

──ここ2年くらいのナタリーのfripSideインタビューのキーワードの1つに「洗練」、南條(愛乃 / Vo)さんの言葉を借りるなら「オシャンティー」(参照:fripSide「Decade」インタビュー)があると思うんです。グループとして日々音が洗練され、おしゃれになっている実感があると繰り返していましたし。

そうですね。

──で、今作「infinite synthesis 2」なんですけど、ホントに音を洗練させましたよね。特に9曲目「rain of tears」以降の洗練ぶり、抑制の効き方にはちょっと目を見張るものがありました。リスナーに(ユニットのイメージカラーである)ウルトラオレンジのサイリウムをガツガツ振らせるんじゃなくて、ステップを踏ませる、踊らせるタイプの楽曲が続きます。それこそ“オシャンティーな大人のデジタルJ-POP”とでもいうか。

はははは(笑)。

──「sister's noise」「eternal reality」「black bullet」とここ最近のシングルがホントに攻めっ気満載だっただけになおのこと驚いたんですよ。

1stアルバムが「infinite synthesis」で、3枚目の今作が「infinite synthesis 2」。1stのアンサーアルバム的位置付けなんですよね。「infinite synthesis」をリリースした2010年当時からのお客さんも、「sister's noise」以降の攻めてるfripSideのお客さんも新旧問わずみんなで盛り上がれる1枚にしようっていう。だから「infinite synthesis」の続きの1枚、つまり「infinite synthesis 2」だっていう発想をもう少し拡大して、老若男女問わずfripSideを楽しめるものにしようっていうコンセプトのもと作ったから、このサウンドになったって感じなんですよね。攻めてるfripSideとは、また別の角度のfripSideを楽しめる音も盛り込みたかったんです。

腕によりをかけて肩の力を抜く

──2年前の2ndアルバム「Decade」にも「whitebird」のような“オシャンティー”な楽曲はあった。けど、あの曲はアコースティックな楽器を使ったメロウな1曲で。そういう編成なら洒落て聞こえるのもある意味当然だとは思うんですけど、今回の“オシャンティー”系楽曲はある種「sister's noise」と同じ。デジタルサウンドをフィーチャーしている。でも確実に“オシャンティー”だし、洗練されています。

僕ももうキャリアが長いので。そのくらいのことはできないとクビになっちゃうと思うんですよ(笑)。

──fripSideのリーダーが誰にfripSideをクビにされるんですか(笑)。

はははは(笑)。さっき「新旧問わず」って言いましたけど、それは聴いてもらいたいリスナー像だけじゃなくて、僕のマインドのことも指していて。南條さん加入前にも7年間、この名義で活動していて、その頃のfripSideは僕にとっての音楽的な実験場。いろんなサウンドを試してみるっていうことを何度となくやっていた場所なんです。今回はある意味その頃に立ち返ったというか「昔はいろんなことにチャレンジしてたじゃん、自分」と。「新旧問わないアルバムを作るんだったら、『Decade』とはまた違う実験をしてみようよ」っていう気分ではいました。その実験の最たるものが13曲目の「true resonance」だと思うんですけど。

──ですね。メロディラインは日本のポピュラーミュージックが「J-POP」と呼ばれる以前のポップミュージックテイスト。ちょっとノスタルジックで、アレンジもガツガツ踊らせるタイプではない。ちょっとクラシカルなハウス仕立て。でも音使いは2014年型という。

まさにそういう感じですよね。でも実はこの曲もじっくり考え込んで作ったっていう感じでもなくて。「実験してみよう!」って思い立ったときに、ふと浮かんできたのがこのメロディとアレンジだったんですよね。

──「実験」と「ふと浮かんだ」って明らかに矛盾するキーワードだと思うんですけど……。

2曲目の「infinite synthesis」の歌詞の通り「旋律は 心のまま 今日も刻」みたかった。そういう実験をしたかったんです。今までももちろんそうしてきたつもりなんだけど、今回は特にそう。もしこのアルバムに「新旧のファン、みんなで楽しもう」のほかにもう1つコンセプトがあるとしたら「腕によりをかけて肩の力を抜いた」っていうことだと思いますし(笑)。

ニューアルバム「infinite synthesis 2」 / 2014年9月10日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
「infinite synthesis 2」初回限定盤
初回限定盤 [CD+Blu-ray] 4320円 / GNCA-1415 / Amazon.co.jp
初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / GNCA-1416 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3240円 / GNCA-1417 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. sister's noise
  2. infinite synthesis
  3. fermata ~Akkord:fortissimo~
  4. lost dimension
  5. I'm believing you
  6. Secret of my heart
  7. eternal reality
  8. black bullet
  9. rain of tears
  10. scorching heart
  11. waiting for the moment
  12. always be with you
  13. true resonance
初回限定盤 BD / DVD収録内容
  • infinite synthesis PV
  • PV Making
  • SPOT In Stores Now ver.
  • SPOT Special ver. 1
  • SPOT Special ver. 2
  • special interview
  • Live映像「ANIMAX MUSIX 2013」
    • only my railgun
    • sister's noise
    • eternal reality
  • Live映像「リスアニ!LIVE-4」
    • sister's noise
    • LEVEL5 -judgelight-
    • only my railgun
fripSide LIVE TOUR 2014-2015 FINAL in YOKOHAMA ARENA

2015年3月1日(日)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 15:30 / START 17:00

※2014年9月19日12:00~26日23:59、「infinite synthesis 2」購入者を対象にチケットの先行予約販売を実施。

fripSide(フリップサイド)

コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2009年に南條が加入。テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリースする。その後もアニメやゲームの楽曲を多数手がけ、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」でそのスタイルを確固たるものに。結成10周年となる2012年12月にはアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースし、2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングで1位に輝き、続く8月のシングル「eternal reality」では小室哲哉とのコラボレーションを果たすなど、現在アニソンシーン内外で圧倒的な存在感を示している。そして2014年9月、3rdアルバム「infinite synthesis 2」をリリースする。