音楽ナタリー PowerPush - fripSide
satが語る!“fripSide然としたもの”と“南條愛乃の進化”
satの思う普遍的メロディと誰もが思う普遍的メロディ
──「腕によりをかけて肩の力を抜いた」って、ホントに「infinite synthesis 2」っていうアルバムを象徴するフレーズですね。
うん。今まで以上にこねくり回さず、自然と思い浮かんだメロディをそのまま譜面や鍵盤に落とし込めた気がしています。
──だから今回のアルバムでは特にsatさんのメロディメーカーとしての力を見せつけられた気がしていて。ある意味“素”であのメロディ群を生んだわけですから。
ありがとうございます(笑)。おかげさまで長い間音楽活動できている理由の1つにはそれがあるのかもしれないとは思っています。僕の思う普遍的なメロディと、皆さんの思う普遍的なメロディにはそれほどズレがないというか。皆さんがふとしたときに口ずさんだり、口笛を吹いたりしたくなるメロディラインのことは、僕もいいメロディだと思っているし、そういうメロディを作ることができている気はしていて。ちょっと乱暴な言い方をするなら、その「日本人の心」みたいなところを見つめてメロディを作り続けていさえすれば大丈夫。「sister's noise」や「black bullet」みたいな攻めたアレンジを施しても、皆さんに「いい曲じゃん」「カッコいいじゃん」って聴いてもらえるんだろうなって思うんですけどね。
──実際、単に美メロを打ち出すアルバムじゃない。新録曲はアレンジも面白いですよね。リード曲の「infinite synthesis」なんて、1コーラス目のAメロの途中でビックリするくらいテンポアップするし、トラックもパッドの音をフィーチャーしたトランス系ではあるんだけど、サビは安易な四つ打ちじゃないし。踊れるんだけど、ループされると表拍と裏拍を見失う変わったビートを採用しています。
あっ。「今回どの媒体さんが四つ打ちのことを指摘するかなあ」と思ってたんだけど、ナタリーさんだったか(笑)。
──思わず気付いちゃいました(笑)。
どの曲もどこかしらに四つ打ちは入ってるんですけど、確かに減ってはいて、一番顕著なのは「infinite synthesis」のサビですよね。ただ意図的に「四つ打ちを減らそう」とか「ちょっといつもとは違った、抑えめのビート感、リズム感にしてみよう」と思っていたかというと、それも実はちょっと違う。もちろん「実験してみよう」「ちょっと攻めてみよう」っていう気持ちがまったくなかったわけではない。以前もお話した通り、新作を作るのに新しいことをやらないのは怠慢だと思っているんだけど。
──ではなぜ四つ打ちを後退させたんでしょう?
「infinite synthesis」について言うなら、メロディを引き立てるためのリズムパターンがあれだった。それだけなんですよ。
──「rain of tears」も面白いですよね。加工しまくった南條さんの声ネタをループさせたり、ギミックの効いたアガるダンストラックなんだけど、メロディラインの譜割は比較的緩やか。だからノリ的には縦ノリではなく横ノリになっています。やっぱり単なる四つ打ちじゃないし(笑)。
それも結局メロディラインを生かすことを念頭に置いた結果、生まれたアレンジですね。やっぱり皆さんが「いいな」と思ってくれている部分、「fripSide然としているな」と思ってくれている部分については曲げちゃいけないと思っていますから。
実は簡単! fripSideの作り方
──周囲が期待する「fripSide然」としている部分って?
きっと、キャッチーなんだけどどこか哀愁のあるメロディやコードワークと、南條さんの声の持つ情緒感が並び立っている状態のことなんじゃないかなあ。アマチュア時代も含めるなら僕は300曲くらいfripSide名義で作ってるんだけど、常にメロディやボーカルの質感にはこだわっていて。それが、今みんなが「いいね」って言ってくれているfripSideらしさにつながってる気がしています。
──ものすごく基本的な話なんですけど、fripSideというプロジェクトの立ち上げ当初、なぜそのキャッチーなんだけど哀愁あるメロディやコードワーク、情緒的なボーカルを打ち出そうと?
さっきの「日本人の心」の話じゃないんだけど、それらが並び立っている曲、それらの要素で切なさやうれしさ、心の静と動のコントラストを描き出す音楽って、言ってしまえば「いい曲」ってことじゃないですか。単純明快に言ってしまうと「いい曲を書きたい」。そのひと言に尽きるんだと思います。だから、実はfripSideサウンドのレシピってすごく簡単なんです(笑)。
──美メロと、情緒的なボーカルと、クールなんだけど攻めてるアレンジがあるいい曲を作れればできあがり、と(笑)。
実はそれだけなんです(笑)。
──ただ、言うは易く行うは難しというか……。
ですね(笑)。しかも「それ以上にイメージを限定させてはいけない」とも思っていますし。例えば今後大ヒット曲が生まれたからといって「売れるためにはその曲のように作ればいいんだ」「そうしなきゃいけないんだ」ってレシピをガチガチに固定化させてはいけない。「固定化させたくない」というよりは「固定させてはいけない」んです。そうしてしまうと短期的には売れるかもしれないけど、未来はないと思うので。僕と南條さんがそのときどきに持っている武器や感じたものを持ち寄って、美しいと思うメロディを書いて、それに似合う、でも何か新しいアレンジを組み上げて、情緒的だと思う歌を歌う。それが「fripSide然としたもの」なんだと思ってます。
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- ニューアルバム「infinite synthesis 2」 / 2014年9月10日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 「infinite synthesis 2」初回限定盤
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] 4320円 / GNCA-1415 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / GNCA-1416 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3240円 / GNCA-1417 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- sister's noise
- infinite synthesis
- fermata ~Akkord:fortissimo~
- lost dimension
- I'm believing you
- Secret of my heart
- eternal reality
- black bullet
- rain of tears
- scorching heart
- waiting for the moment
- always be with you
- true resonance
初回限定盤 BD / DVD収録内容
- infinite synthesis PV
- PV Making
- SPOT In Stores Now ver.
- SPOT Special ver. 1
- SPOT Special ver. 2
- special interview
- Live映像「ANIMAX MUSIX 2013」
- only my railgun
- sister's noise
- eternal reality
- Live映像「リスアニ!LIVE-4」
- sister's noise
- LEVEL5 -judgelight-
- only my railgun
fripSide LIVE TOUR 2014-2015 FINAL in YOKOHAMA ARENA
2015年3月1日(日)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 15:30 / START 17:00
※2014年9月19日12:00~26日23:59、「infinite synthesis 2」購入者を対象にチケットの先行予約販売を実施。
fripSide(フリップサイド)
コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2009年に南條が加入。テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリースする。その後もアニメやゲームの楽曲を多数手がけ、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」でそのスタイルを確固たるものに。結成10周年となる2012年12月にはアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースし、2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングで1位に輝き、続く8月のシングル「eternal reality」では小室哲哉とのコラボレーションを果たすなど、現在アニソンシーン内外で圧倒的な存在感を示している。そして2014年9月、3rdアルバム「infinite synthesis 2」をリリースする。