音楽ナタリー PowerPush - fripSide
satが語る!“fripSide然としたもの”と“南條愛乃の進化”
作詞家・satの真実味のある言葉
──一方satさんの歌詞なんですけど、今まで以上にエモいというか、熱くなってません?
あっ、それはバトルもののタイアップ曲が多いからかもしれない。
──確かに「fermata ~Akkord:fortissimo~」や「lost dimension」はゲームのテーマソングに採用されてます。ただ“fripSideの”アルバム収録曲である以上「ゲームのテーマソングを作るんだ」っていう職業作家的な作り方は……。
してないですね。なんだろうなあ……。まあ僕もさすがに歳をとりまして(笑)。
──いや、「歳をとったから熱くなりました」じゃ矛盾しまくりですよ(笑)。
でもちょっと話が大きすぎてバカらしく聞こえてしまうかもしれないんだけど、歳をとったことで「ヒトにとって何が幸せで、何が不幸せか?」っていうことを多少は見極められるようになってきていて。幸せであるためにはやっぱりときには熱く何かと闘わなきゃいけない瞬間ってあるよなとは思ってるし、歌詞っていうのは、そういう実感のあるメッセージを盛り込むとより真実味を増すんだろうなっていう気がしてるんです。
──あっ「気がしてる」というレベル? キャリアを積んだことで年若いリスナーや後輩ミュージシャンも増えたことだし、先輩として生き方の1つを提示してみよう、みたいな意識は……。
ないです!(笑) もちろん聴いてくれる人たちのことは意識しますよ。より心に響く言葉を聴いてもらいたい、とか、より美しい、それこそインタビューの最初のテーマじゃないけど「洗練された」言葉の響きを楽しんでもらいたいとか。だから歌詞にはこだわるし、そうやって理想的な歌詞を追求した結果、こういう言葉を並べてはいるんだけど「先輩として」という意識は薄いかもしれない。より真実味のある歌詞を書きたいっていう欲求があるだけで。ある地点で満足してしまったら、そこでオシマイ。自分はまだまだだと思ってるし、いろいろなことを試しているうちは成長できると思っているから、より真実味のある歌詞を書くことを試してみたかったんです。
作詞家・satの慢心と成長への欲求
──楽曲についてももちろんなんだけど、言葉についても、ある種の実験精神をもって取り組んでいる、と。
そうしないといけないと思ってますから。若い頃の僕がなかなかデビューできなかったのって、たぶん才能があると思ってたからなんですよね。
──へっ!? 才能がある人がデビューするんじゃないんですか?
うん。「才能がある人」がデビューするんだけど、「才能があると思ってる人」はただ慢心しているだけだから。
──若かりし頃のsatさんも慢心していた?
メジャーレーベルのコンペにいくら曲を出してもまったく採用されない時期があって。そのとき僕が何を思っていたかといえば「音楽業界はクソだ」「オレはこんなにいい曲作ってるのに、そこに気付きもしない」と(笑)。
──あはははは(笑)。確かにその人はデビューできなそうですね。
ですよね(笑)。で、一旦音楽で食べていくことをあきらめて就職したんですけど、そうやって現場を離れたとき、ふと気付いたんですよね。「あ、今こうなってるのはオレに才能がないからだ」「じゃあ才能がないなりに努力を重ねてみよう」って。それが実を結んで、今こうやって音楽の仕事をやらせていただいている、っていう実体験があったので。だからもし若いファンの人や後輩に何か伝えることがあるとすれば、そういうことかもしれない。とにかく努力と実験っていう闘いを続けてみればって。
──satさんも今でも続けてるわけだし。
僕の尊敬する先輩に(川田まみらを擁する音楽制作集団)I'veの高瀬一矢さんがいて。僕よりもキャリア的にも年齢的にも先輩なんだけど、まだまだ実験や挑戦をやめてないし、一線を張っている。高瀬さんを見てると、まだまだ努力は続けなきゃいけないんじゃないか、まだまだがんばれるんじゃないか、僕も成長できるんじゃないかっていう気がするんです。
プロデューサー・satの完璧なセットリスト
──アルバムリリース後にはツアーが待っています。
「アニサマ」(Animelo Summer Live 2014 -ONENESS-)も終わったことだし、そろそろリハが始まる頃ですね。
──ということはもう構想はある?
来年3月の横浜アリーナについてはさすがにまだですけど、年内11月までのツアーについてはもうセットリストも決まってます。ただ今回はセットリストを組むのに比較的時間がかかったんですよ。3日くらいかかったんじゃないかな? アルバムのトラックリストを組むのに比べて格段に難しかった。
──それはどうして?
fripSideって結局僕が曲を書いてアレンジをしてプロデュースをするユニットだから、アルバムのトラックリストっていうのは作曲をしている時点である程度見えてるんですよ。プロデューサーでもある以上「こういうアルバムにしたい」っていうイメージがすでにあるわけだから。だからレーベルに「アルバムのトラックリストを出してください」って言われてから30分くらいで決められたんだけど(笑)、ライブでは今回のアルバムの曲以外の曲もやるわけだし。それにお客さんの反応が直に返ってくるものだから、当然お客さんのノリも意識しなきゃいけないし、あと会場ごとに違う曲、日替わり曲を入れようなんてアイデアもあるし。
──そういう諸条件を勘案した上で3日間を要して組み上げたセットリストは……。
完璧ですね(笑)。僕自身、今からライブが楽しみなくらい、いいセットリストだと思ってます。
- ニューアルバム「infinite synthesis 2」 / 2014年9月10日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 「infinite synthesis 2」初回限定盤
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] 4320円 / GNCA-1415 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / GNCA-1416 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3240円 / GNCA-1417 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- sister's noise
- infinite synthesis
- fermata ~Akkord:fortissimo~
- lost dimension
- I'm believing you
- Secret of my heart
- eternal reality
- black bullet
- rain of tears
- scorching heart
- waiting for the moment
- always be with you
- true resonance
初回限定盤 BD / DVD収録内容
- infinite synthesis PV
- PV Making
- SPOT In Stores Now ver.
- SPOT Special ver. 1
- SPOT Special ver. 2
- special interview
- Live映像「ANIMAX MUSIX 2013」
- only my railgun
- sister's noise
- eternal reality
- Live映像「リスアニ!LIVE-4」
- sister's noise
- LEVEL5 -judgelight-
- only my railgun
fripSide LIVE TOUR 2014-2015 FINAL in YOKOHAMA ARENA
2015年3月1日(日)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 15:30 / START 17:00
※2014年9月19日12:00~26日23:59、「infinite synthesis 2」購入者を対象にチケットの先行予約販売を実施。
fripSide(フリップサイド)
コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2009年に南條が加入。テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリースする。その後もアニメやゲームの楽曲を多数手がけ、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」でそのスタイルを確固たるものに。結成10周年となる2012年12月にはアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースし、2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングで1位に輝き、続く8月のシングル「eternal reality」では小室哲哉とのコラボレーションを果たすなど、現在アニソンシーン内外で圧倒的な存在感を示している。そして2014年9月、3rdアルバム「infinite synthesis 2」をリリースする。