音楽ナタリー PowerPush - fripSide
satが語る!“fripSide然としたもの”と“南條愛乃の進化”
作詞家・南條愛乃の2年間とその成長
──実際、前作「Decade」から今までの2年間のお2人の活動が今作になんらかの影響を及ぼしている?
例えば僕ならこのアルバムを作る直前にALTIMAの1stアルバム(2014年3月発表の「TRYANGLE」)を作ってますから。ALTIMAは本当に攻撃型のサウンド。BPMも速いし、メロディや歌詞もタフなものが多いし、音圧も高い。今回のfripSideのアルバムは、ある意味、その反動のようなものなんだと思います。ALTIMAのアルバムを作ったことで改めてfripSideの本質を見つめることができた。ALTIMAに対抗するかのようにBPMを上げたり、四つ打ち感を出しまくったりするのはfripSideらしくない。じゃあ「fripSide然としたもの」ってなんだ?って振り返れた気はします。
──南條さんにもこの2年間でなんらかの変化が認められました?
僕は南條さんじゃないから安易なことは言えないけど、日々変化を遂げている印象は受けますね。で、なぜ変化しているかっていうと、fripSideのほかにもソロワークであったりとか、「ラブライブ!」のμ'sの一員としての活動であったりがあったからなんでしょうね。
──具体的に南條さんが変わったところって?
歌詞は明らかに変わった気がしています。
──シングルのカップリングのような既発曲を除くと2曲、南條さんが作詞してますよね。
特に6曲目の「Secret of my heart」はパーフェクトだなと思っていて。
──エレピが印象的なメロウなハウスに乗せて、ものすごくセンチメンタルなラブソングを歌っています。
それがパーフェクトだなと思ったんですよ。曲ができあがってデモを渡すとき「切ない系の恋愛の歌を頼むよ」とは言ったんだけど、ホントにここまで切ないラブソングを書いてくるかって。これまでお互いをホメることなんてほとんどなかったのに、思わず「南ちゃん(南條)、最高の歌詞を書いたね」って言っちゃいましたから。そしたら南條さんから「いや、satさん、この曲すごくいいですよ」って(笑)。
──あはははは(笑)。satさんもホメられた。
光栄なことに(笑)。あともう1曲のほう、「always be with you」の歌詞でもちょっと面白いアプローチをしたみたいですし。
作詞家・南條愛乃のクリエイティビティ
──「面白いアプローチ」?
南條さんが愛用しているものを擬人化したらしいんですよ。
──確かに愛用品的な存在。友人なのか恋人なのか、けっこう近しい存在である「君」に対する思いをつづってますね。
これまで僕はfripSideでは、抽象的ではあるんだけど誰の心にも思い当たるものを描く歌詞を書いてきていて。それも200曲前後そういう歌詞を書いてきているだけに、最初「あるアイテムを擬人化したいんです」って聞いたときは「おいおいfripSideで具体的で身近なアイテムの擬人化とかやめてくんね?」って内心思ってたんですけど……。
──「擬人化しています」っていう話を聞いても「君」の正体はわからない。そのくらいの抽象性を保ててるし、かつfripSideのリスナー層の中心であろう若い子たちの背中を押す詞になってます。
そうなんですよね。ちゃんと形になってる。これってすごく喜ばしい兆候なんですよ。これまでの彼女のスタンスって「fripSideはあくまでsatさんのプロジェクトであって、私はそのメロディやアレンジの上で歌う人なんです」っていうものだったと思うんです。
──過去のインタビューでも「加入当初からsatさんの世界観ができあがっていた」、「主張を盛り込むことよりも歌うこと、声帯を震わせることに楽しさを見出している」(参照:fripSide「sister's noise」インタビュー)、「タイアップ先のアニメ作品に寄り添いたいというエゴがある」(参照:fripSide「black bullet」インタビュー)と言っています。
でも「always be with you」はそういう受け身のスタンスで書かれたものではない。自分の内にあるクリエイティビティみたいなものをfripSideでも発揮していこう。そういう意志をもって取り組んでくれた歌詞なんですよね。彼女の場合はさっき言ったソロワークもあればμ'sもあるし、もちろん声優としての活動もある。あそこまで忙しい人ってそうそういないはずなんですよ。そういう人が、これまでだって100%全力でfripSideに臨んでいたんだけど、今回はそれ以上。さらに情熱やエネルギーを傾けてくれているっていうのは僕にとってもそうだし、ファンの皆さんにとってもすごく心強いことだと思いますよ。これからもどんどん歌詞を書いてほしいと思ってます。
ボーカリスト・南條愛乃の意識の変化
──以前satさんはfripSideの歌詞は外注にはあんまり向かないと言っていましたけど。
今の南條さんは、すごく安心して任せられる作詞家さんの1人です。しかも今回のアルバムでは歌い手としても何かをつかんだ感じがありますし。
──音が飛ぶときにフェイクを入れて経過音を作ったり、エモーショナルな歌い方をしている印象を受けました。これまでは熱い歌詞や攻めてるアレンジをいかに情緒的なんだけどクールに歌うかに注力していると言っていたのに。
でも今回の南條さんのボーカルワークがfripSideの世界観を破壊しているわけではない。より魅力的なものにしてくれていますよね。南條さんの言葉を借りるなら「声帯を震わせるのが楽しい」というところからもう1段階上。「みんなはどういう歌を聴きたいんだろう?」「みんなはどういう歌を私らしく、しかもfripSideらしいと思ってるんだろう?」っていうことをよりシリアスに意識した結果、ああいう歌声になったんでしょうね。fripSideの活動はもちろん、ソロ活動やμ'sを見ていてもわかることなんだけど、もともと歌のうまい人、表現力のある人だから、その意識が生まれてさらに魅力的になったんじゃないのかなあ。
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- ニューアルバム「infinite synthesis 2」 / 2014年9月10日発売 / NBCユニバーサル・エンターテイメント
- 「infinite synthesis 2」初回限定盤
- 初回限定盤 [CD+Blu-ray] 4320円 / GNCA-1415 / Amazon.co.jp
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3888円 / GNCA-1416 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 3240円 / GNCA-1417 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- sister's noise
- infinite synthesis
- fermata ~Akkord:fortissimo~
- lost dimension
- I'm believing you
- Secret of my heart
- eternal reality
- black bullet
- rain of tears
- scorching heart
- waiting for the moment
- always be with you
- true resonance
初回限定盤 BD / DVD収録内容
- infinite synthesis PV
- PV Making
- SPOT In Stores Now ver.
- SPOT Special ver. 1
- SPOT Special ver. 2
- special interview
- Live映像「ANIMAX MUSIX 2013」
- only my railgun
- sister's noise
- eternal reality
- Live映像「リスアニ!LIVE-4」
- sister's noise
- LEVEL5 -judgelight-
- only my railgun
fripSide LIVE TOUR 2014-2015 FINAL in YOKOHAMA ARENA
2015年3月1日(日)神奈川県 横浜アリーナ
OPEN 15:30 / START 17:00
※2014年9月19日12:00~26日23:59、「infinite synthesis 2」購入者を対象にチケットの先行予約販売を実施。
fripSide(フリップサイド)
コンポーザー&プロデューサーのsatこと八木沼悟志と声優としても活躍する南條愛乃(Vo)からなるユニット。2002年から活動開始し、2009年に南條が加入。テレビアニメ「とある科学の超電磁砲」のオープニングテーマ「only my railgun」をリリースする。その後もアニメやゲームの楽曲を多数手がけ、2010年発売のアルバム「infinite synthesis」でそのスタイルを確固たるものに。結成10周年となる2012年12月にはアニバーサリーアルバム「Decade」をリリースし、2013年5月には結成11年目第1弾作品となるシングル「sister's noise」とライブBlu-ray / DVD「10th Anniversary Live 2012 ~Decade Tokyo~」を同時に発表。「sister's noise」はオリコン週間シングルランキングで1位に輝き、続く8月のシングル「eternal reality」では小室哲哉とのコラボレーションを果たすなど、現在アニソンシーン内外で圧倒的な存在感を示している。そして2014年9月、3rdアルバム「infinite synthesis 2」をリリースする。