FRIENDSHIP.特集第4弾|武田信幸(LITE)×マスダミズキ(miida)インタビュー (2/3)

コレクションを可視化できる

──事前に思想を伝えるという点では、クラウドファンディングの仕組みとも似てる部分があると思うんですけど、そこは似て非なるものなんですか?

武田 LITEはまだクラウドファンディングをやったことがないんですよ。なぜかと言うと個人的にはそのアクション自体にあまりアート感が出ないと判断しているからなんです。でもNFTはさっき言ったように表現の場だから、アートとの紐付きが強い。それに実際に販売するものとして、クラウドファンディングと同じようなリターンも用意できるんですよ。例えば僕らがレコーディングをやりたい場合、「このNFTを買ってくれた人を最速の試聴会に招待します」みたいな。

──チケットを所持していることをNFTで証明できるとnoteで書かれていましたが、それはどういうことなんでしょう?

武田 2通りあって。1つはプラットフォーム上で、チケットぴあでチケットを買うみたいにNFTを買うことができるということ。もう1つは会場に来た人に対してNFTを配布することができることですね。で、そのどちらもがNFTとして記録が残るんですよ。チケットの半券を記念に残している人もけっこういると思うんですけど、なくしてしまう可能性もあれば、同じ半券が何枚も存在するから自分のものだと証明できない可能性もあるじゃないですか。NFTではそれを唯一無二のものとして、このライブに行ったんだと証明ができる。NFTの履歴が残るウォレットと言われるものが、ライブの記録代わりになっていくイメージですね。自分のアート作品が並んでる棚みたいな感じで、「この人、あのライブを観に行ったんだ」というのが見えるんですよ。

武田信幸(LITE)

武田信幸(LITE)

マスダ コレクションですね。

武田 そう。コレクションを見れる。自分のポートフォリオみたいなものとして存在して、すごくレアなライブに行っていたことが証明されたら、そこに満足感を感じる人もいるでしょうし、どんな音楽が好きかとかまでもがほかの人にもわかるわけで。

──友達の家の本棚やCDラックを見て、趣味の話をするのに近いというか。デジタル化してからそういう機会が減ったので、それは魅力的ですね。

マスダ 確かに。サブスクだと、それができないですからね。

NFTは音楽産業のカウンターになりうるのか?

──武田さんはnoteに「NFTはカウンターカルチャーになる可能性がある」とも書かれてらっしゃいましたが、それはどういう意味なのでしょう?

武田 今の時代、音楽を聴く手段の主流はサブスクになっているわけですが、サブスクは作品を広くいろんな人に聴いてもらう、NFTは限られた人にレアな部分を聴いてもらうという真逆のベクトルの存在なんです。サブスクの場合、ユーザー1人あたり1000円ぐらいがプラットフォームに流れていって、そこからアーティストに分配される。再生回数が多い人に多く分配される仕組みなので、再生されない人はマネタイズできないんですよ。なので皮肉なことにサブスクで音源がめちゃくちゃ広がるより、NFTで一部の人に聴いてもらったほうがアーティストの経済圏が潤う可能性があるんです。NFTはコアなファンがいれば成り立つので、1000円だけじゃなくて10万円出します、100万円出しますとなり得る。それが今の音楽活動にとってのカウンター的な流れになるのかなと考えています。

──ストリーミングではアーティストにお金がなかなか還元されない、という議論は定期的にSNSを中心に話題になります。実際インディペンデントで音源を作られていて、マスダさんが困っていることや課題だと感じていることはありますか?

マスダ サブスクの登場によって音楽を気軽に楽しめるようになったのはいいことなんだけど、いちアーティストとして音楽の価値をどうやって見出すかはずっと考えているんですよ。CDに替わるフォーマットというか、新たな音楽の扱われ方を考えていかないと、誰もデータを持ってないみたいなことになっていくんじゃないかなと。8月にアルバムを出してCDも作ったんですけど、「皆さん満足してくれてるのかな?」と考えるような領域まで来ていると思っていて。活動を今後長く続けたいという前提で、新しいアイデアや時代の流れを感じていきたいなと思って、そこを危惧している段階なんです。

マスダミズキ(miida)

マスダミズキ(miida)

武田 そういう意味では、CDがNFTに置き換わるかもしれない。NFTは近い人たちに向けて売るという側面もあるから、アルバムをサブスクとNFTで出すようになる可能性はありますよね。ちょっと話が逸れちゃうかもしれないけど、サブスクは絶対なくならないと思うんですよ。

マスダ うん。めちゃ便利ですからね。

武田 自分たちの音楽を海外でもボーダーレスに聴いてもらえる可能性があるツールだから、僕自身もなくなったら困る。だからなくなってほしくないし、否定もしていないんですよね。サブスクは引き続き活用しつつ、物販はCDなのかNFTなのかみたいな流れになっていくのかなと感じています。

FRIENDSHIP. DAOが目指す世界

──ここからは、FRIENDSHIP. DAOのお話をお伺いさせてください。具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

武田 簡単に言うとブロックチェーンを使ったコミュニティです。アーティストだけじゃなく、例えばインフルエンサーだったり、キュレーター、映像作家、海外のアーティストもグローバルに入ることができる。それらがブロックチェーンでつながっているから「このアーティストを広めたのは、このキュレーターだ」というのが可視化されるんですね。だからアーティストは「このバンドのギターいいな」と思ったら、その人にダイレクトにアクセスできる。つまり脈々とデータがつながっているので、自分の音楽を広めたり、よくする可能性が網目上に広がっていくイメージですね。FRIENDSHIP. DAOではそういう世界を目指しているんです。なので先ほど話した音楽NFTというのは、あくまでその中の一環なんです。

FRIENDSHIP. DAOロゴ

FRIENDSHIP. DAOロゴ

──音楽に携わる人たちが有機的につながっていくと。

武田 もっと言うと、ブロックチェーンを使って将来的には仮想通貨の仕組みを導入していくことによって、独自の通貨でやり取りができるようになるんです。今までドルで支払わないと契約できなかったのが、FRIENDSHIP. DAO上のポイントで契約できるようになる。そうなるとグローバルな垣根も契約の垣根もないし、対価の垣根もない。そういう世界になってくるんです。

──1年半前の取材の時点で、FRIENDSHIP.に関わるクリエイター同士が協力して作品を作る流れが生まれていると伺っていたんですけど、それをさらにオープンにしようとした理由はどういうところにあるんでしょう?

武田 音楽の世界をよりグローバルに広げていくためには、FRIENDSHIP.の日本人たちの組織だけだと限界があると思っていて。DAOの場合、例えば自分が海外のプロモーターとつながっていたとしたら、そのプロモーターがつながっている海外のクリエイター、インフルエンサー、キュレーターというように全部網目のように複利的に広がっていくんですよ。それによって音楽が広まる可能性や、売れる可能性がこれまで以上に高まるんじゃないかと考えています。

マスダ 確かに実現したいことがあっても「そこにたどり着くためにはどうしたらいいんだろう?」と、最初の段階で挫折してしまうことがあって。「たぶんあの人とつながれたら実現できそう」と思っても、つながり方がわからないみたいな。それが可視化されると、ワンステップがもう少し軽やかになる可能性はありますよね。

左から武田信幸(LITE)、マスダミズキ(miida)。

左から武田信幸(LITE)、マスダミズキ(miida)。

──表現の幅を広げるためにいろんな人と出会いたい?

マスダ 1人でやってるのでなおさら思います。アイデアはあるけど、どうやって形にしようと悩むことが多いですね。あとは自分が詳しくないジャンルの表現方法だと、そもそも誰に頼めばいいのかわからなかったりするんですよ。そういうときにDAOでクリエイターのつながりをたどれたら健全だし、クリエイティブが膨らんでいくのかなと思います。

2022年11月1日更新