フラワーカンパニーズ × 福本伸行|謳歌できなかった青春を歌い 転がり続けた48年

バンドを続けるコツ

福本 何度も聞かれてると思いますけど、バンドを長く続けるコツはあるんですか?

マエカワ そうですね……まずは楽しいことを考えてやるということかな。それは自分自身もそうだし、バンド全体もそうだし。ネガティブなところだけを見てたら、つまらなくなると思うんですよ。「こいつら下手だな」とか(笑)。もちろんよくないところを直していくことも大事なんだけど、まずは「楽しく活動するにはどうしたらいいか?」と考えますね。

福本 1人だったらそれでもいいと思うけど、フラカンは4人いるじゃないですか。一緒にやっていくにあたって、人間関係の難しさもあるんじゃないですか?

グレートマエカワ(B)

マエカワ ありますね。それぞれに「ここは好き」「こういうところは嫌い」という部分があると思うんだけど、僕はメンバーに対して「ここが面白い」「ここがカッコいい」というところを見るようにしていて。

福本 その感じはライブから伝わりますね。「仲がいいんだろうな」と思えるほうが、こっちも心地がいいので。ほら、寿司屋なんかに行って、大将が下っ端の板前を怒ってたりすると、こっちもつらくなるでしょ(笑)。

マエカワ わかります(笑)。もちろん僕らは普段から遊んでるわけではないし、正直言って仲がいいのか悪いのかもわからないんですけど、今もバンドが続いてるということは、そういうことなんだろうなと。

鈴木 バンドを続けるためにあえて距離を置いてるところもありますね。昔はもっとベタッとした人間関係だったんだけど、年齢を重ねて、それぞれに家族ができたりすると、一定の距離を置いたほうがいいんですよ。そのやり方がわかってきたと言うか。

まだ描きたいものがある

マエカワ 福本先生はどうなんですか? ずっとマンガを描き続けるのもすごいことだと思うんですけど。

福本 「ハイエース」で歌われていることと同じで、「やれるうちはやろう」ということですよね。ちょっと人気が出たからって、マンガを休んで「海外でゴルフ三昧」みたいなことをやってしまったら、戻ってきても仕事なんかないですよ。あとね、連載は“慣れ”なんですよ。「この雑誌にはいつも『カイジ』が載ってる」って慣れてるから読んでもらえるところがある。しばらく休んで戻ってきても、また読んでくれるかどうかわからないですよ。読者には、「カイジ」って存在を友達のように、慣れてもらわないと(笑)。

マエカワ (笑)。連載の流れもありますからね。

福本伸行

福本 そう。もう1つの理由は、まだ描きたいものがあるということですね。鈴木さんもそうだと思うけど、長いことやってると「もう大体のことはやったな」っていう気持ちになるじゃないですか。

鈴木 なりますね。

福本 僕は、話に困ったとき、「大きなことは描けない。小さいことを描こう」と思うようにしてます。小さい事柄にこそ真実があるんですよ、本当は。例えば電車に乗り遅れそうになって、走っていて、前にiPodを聴いて、ゆっくり歩いてるヤンキーがいて乗り遅れたとしたら、そりゃあ、「なんだよ」って思う。それはくだらない怒りだけど、そこに、案外、自分の真実があるし、そこらへんから始めていくといいかな……と。世界平和とか「世界の子供たちが飢えませんように」とか、それは、もちろん、大事なことだけど、テーマが大きすぎて、どうしたらいいやら……。

鈴木 テーマが大きすぎると、とっかかりをつかみづらい。

福本 そうそう。あと「アイデアが固まらないうちは始めない」ということ。急がば周れというのかな。友達と意味のない会話をしたり、酒を飲んだり、寝たり、歩いたり、そういうこともいつか何かのきっかけになるかもしれないですから。「無駄に過ごして日々が少しずつ花を咲かす」(「キャンバス」)ですよ、まさに。

最後にゃなんとかなるだろう

鈴木 それでもなかなか話を思い付かないこともありますか?

左から福本伸行、鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)。

福本 ありますよ。ファミレスで1時間半とか2時間くらいぼんやりして「あの子供、かわいいな」とか思っているうちに、「あ、こういう話はどうだろう」と思い付く感じなので。いつも「もう無理かな」と思うんだけど、やっぱり鈴木さんが歌ってる通り「最後にゃなんとかなるだろう」なんです(笑)。

マエカワ いいですね(笑)。

福本 あとは本なんかを読んで刺激をもらったりね。この前も三島由紀夫の「豊饒の海」を読んで。やっぱり三島はすごいですね。言葉の使い方、言い回しが素晴らしくて。

鈴木 刺激を受けたフレーズなんかをそのまま使うこともあるんですか?

福本 基本的には変えますね。でも、「カイジ」の初っ端、THE BLUE HEARTSの歌詞をあえてそのまま引用して、「未来は僕等の手の中」というフレーズを使いました。あそこは、あえて、そうさせていただきました。

鈴木 なるほど。マンガを描き始めるときは、結末を想定しているんですか? それとも登場人物が勝手に動き出すような状態でどんどん進んでいくとか。

福本 僕はケツを決めてから描き始めるタイプですね。「カイジ」や「アカギ」はギャンブルの話だから、結末を決めておかないと描けないので。その大枠の中で、キャラクターが勝手に動き出す感じはあります。でも、大枠は、変わらない。

フラワーカンパニーズ「ROLL ON 48」
2017年9月6日発売 / チキン・スキン・レコード
フラワーカンパニーズ「ROLL ON 48」

[CD]
3000円 / XQNG-1001

Amazon.co.jp

収録曲
  1. ピースフル
  2. 人生Roll On
  3. ハイエース
  4. てのひら
  5. NO YOUNG
  6. 花のようでした
  7. HAPPY!
  8. あまくない
  9. キャンバス
  10. 最後にゃなんとかなるだろう
  11. あなたはだぁれ?
フラワーカンパニーズ
フラワーカンパニーズ
1989年4月に鈴木圭介(Vo)、グレートマエカワ(B)、竹安堅一(G)、ミスター小西(Dr)の4人により名古屋で結成されたロックバンド。地元・名古屋を拠点とした精力的なライブ活動を経て、1994年に上京。1995年にアルバム「フラカンのフェイクでいこう」でメジャーデビューを果たす。以後、2000年までに6枚のフルアルバム、1枚のミニアルバム、12枚のシングルを発表。翌2001年にメジャーレーベルを離れ、活動の場をインディーズに移す。その後も「発熱の男」「東京タワー」「世田谷夜明け前」「脳内百景」といった名作を連発。特に2004年に発表されたシングル「深夜高速」は、ファンのみならず多くのロックファンから愛され続けている。2008年11月、7年8カ月ぶりにメジャー復帰。バンド結成20周年を迎えた2009年には「深夜高速」をさまざまなアーティストがカバーしたコンピレーションアルバム「深夜高速 -生きててよかったの集い-」のリリースや、11年ぶりの日比谷野外大音楽堂ワンマンライブなどで注目を集めた。2010年1月には結成20周年を記念した初のオールタイムベストアルバム「フラカン入門」を発表。同年3月発売のシングル「元少年の歌」は映画「誘拐ラプソディー」の主題歌に起用され話題となった。その後2013年に「ハッピーエンド」、2015年に「Stayin' Alive」とオリジナルアルバムをリリース。同年12月19日、結成26年目にして自身初となる日本武道館公演「フラカンの日本武道館 ~生きててよかった、そんな夜はココだ!~」を開催。当日券含めて完売、大成功を収めた。2017年6月に自主レーベル「チキン・スキン・レコード」を立ち上げると、9月にレーベル第1弾作品となるアルバム「ROLL ON 48」を発表した。
福本伸行(フクモトノブユキ)
1958年12月10日神奈川県生まれ。1979年月刊少年チャンピオン(秋田書店)にて「よろしく純情大将」でデビュー。1982年に投稿作「ワニの初恋」で第9回ちばてつや賞大賞を受賞、翌年も大賞を受賞した。1989年近代麻雀ゴールド(竹書房)にて「天」を連載開始。以降、1992年にアクションピザッツ(双葉社)で「銀と金」、近代麻雀(竹書房)では「アカギ~闇に降り立った天才~」を開始した。ギャンブラーたちの命を賭けての心理戦が読者から絶賛を受ける。1996年週刊ヤングマガジン(講談社)にて「賭博黙示録カイジ」を連載開始。創作ギャンブルの目新しさと、金で運命を狂わせる男たちを描きヒット作に。同作は1998年に講談社漫画賞を受賞し、2007年にアニメ化され2008年には実写映画化。他にも「アカギ」が2005年にアニメ化、2015年にドラマ化。「銀と金」は1993年にVシネマ化、2017年ドラマ化された。2007年、週刊少年マガジン(講談社)にて「賭博覇王伝 零」を連載開始。 現在は週刊ヤングマガジンにて「賭博堕天録カイジ ワン・ポーカー編」、ビッグコミックオリジナルにて「新黒沢 最強伝説」、近代麻雀にて「アカギ~闇に降り立った天才~」を連載中。