音楽ナタリー Power Push - 「ミステリヤ・ブッフ」三浦基(地点)×空間現代 対談

音の洪水が描く革命劇

ビール飲んでトーク聞いて演劇論買って帰るって異常事態だよ!

──その後は「ファッツァー」以外にも、地点が設立したアトリエ・アンダースローで空間現代の単独ライブが行われたり、空間現代のライブのゲストとして地点のメンバーが参加されたり、幾度も共同での活動が行われました。

古谷野慶輔(B)

古谷野 ライブでの共演は3回ぐらいやりましたね。これは僕たちがオファーして実現して。アンダースローでのライブは地点側からのお誘いで決定しました。

山田 でも「ファッツァー」の頃から続けていこう、っていう話ではなかったです。

古谷野 「ファッツァー」は東京ではなかなかできないっていうこともあったので、こういった試みをもっと見せることができたらなっていうのも目的に。

三浦 でも東京のSuper Deluxeでのライブは大変だった……。あの会場で「ファッツァー」の一部分をやったときはショックで。会場の広さをカバーするためにでっかいスピーカーを使うから、音が劇場とは全然別物。1回目は俳優が肉声でやったんですけど声が通らなかったんです。終わったあと感想を聞いたらみんなステージに上がるのを躊躇したぐらいで(笑)。それでも観客の反応はよくて、アフタートークにもみんな残ってくれて。

古谷野 かなり集中して観てくれた感じはありましたよね。

三浦 「どうしたん!?」って思っちゃった(笑)。正直俺は「何がよかったの?」「二度とやるまい!」と思ってたの。そしたらまた誘われちゃって。

古谷野 こちらがついついオファーしてしまって(笑)。

三浦 それにSuper Deluxeのスタッフもすごくいい人で。もう「よかったよ!!」って言ってくれて、「またよろしくお願いします!」って頭下げちゃった(笑)。

山田 この前の打ち上げでも三浦さんのことすごい褒めてましたよ。

三浦 彼、横浜でやった「光のない。」の再演にも来てくれて。公共ホールでけっこう厳かな感じの会場なんだけど、ロビーでぶらぶらしてたら「うおー三浦さん! よかったよかった!」って話しかけてくれて(笑)。あのノリがいいなと思って。

古谷野 ライブハウスの人特有の雰囲気ですね(笑)。

三浦 でも最初にメールをもらったときはこういうコラボは不可能だと思ってたし、実際先日の「collaborations」の公演のときも、空間現代のみんなは劇団員の様子を見て猛省してて。「もう『collaborations』はやりません」って言ってたぐらい。

山田 もちろんやってよかったなって部分もあったんですけど。

三浦基

三浦 ミーティングを重ねて、本気でやるなら1カ月近い稽古が必要ってことにも空間現代の3人は気付いてくれて。予定より3日多く稽古の時間も作って、肉声を残しつつマイクでしゃべるっていう、ライブ仕様のコラボレーションをすることができて。これは後々のヒントにもなったしすっごくよかった。トークにもお客さんがけっこう残ってくれたんだけど、マヤコフスキーの本が売り切れ近くまで売れて。俺の演劇論を買う人もいてあり得ないと思った(笑)。

古谷野 六本木にバンドのライブを観に来たのに(笑)。

三浦 ビール飲んでトーク真面目に聞いて演劇論買って帰るって異常事態だよ!(笑) バンドTシャツならわかるけど、マヤコフスキーの詩集とか演劇論も売れちゃうんだから。こうなったらもう音楽理論とか書けばいいかもよ。

古谷野 楽譜しかなかった時代みたい。

山田 物販スペースに本とTシャツしかないっていう(笑)。

古谷野 でもこの3回を通して、ライブでの共演と「ファッツァー」での生演奏って全然別物だなって身に染みてわかった気がしました。初めはまだあんまり理解していなかったんですよね。

山田 「ファッツァー」はある程度完成してたしね。先日の「collaborations」の場合は何もできていない状態からのスタートだったし。

古谷野 役者の肉声を聞かせるのがなかなか難しいなって。でも「ミステリヤ・ブッフ」の本を買ってくれたってことは、ある程度何か伝わってたんじゃないんですかね。

演劇×ダンス×美術×音楽…に出会う37日間
フェスティバル/トーキョー15

2015年10月30日(金)~12月6日(日)

地点×空間現代「ミステリヤ・ブッフ」
地点×空間現代「ミステリヤ・ブッフ」

2015年11月20日(金)~28日(土)
東京都 にしすがも創造舎

作:ヴラジーミル・マヤコフスキー

演出:三浦基

音楽:空間現代

出演:安部聡子 / 石田大 / 小河原康二 / 窪田史恵 / 河野早紀 / 小林洋平

ゾンビオペラ「死の舞踏」イラスト:古泉智浩
ゾンビオペラ「死の舞踏」

2015年11月12日(木)~15日(日)
東京都 にしすがも創造舎

コンセプト・作曲:安野太郎

ドラマトゥルク:渡邊未帆

美術:危口統之

出演:浅井信好 / 岸本昌也 / 左藤英美 / 新大久保鷹 / 滝腰教寛 / 東金晃生 / 中村桃子 / 長屋耕太 / 八重尾恵 / 山崎春美

V.A.「空間現代Remixes」 / 2015年9月2日発売 / 2592円 / HEADZ / UNKNOWNMIX-40 / HEADZ-208
V.A.「空間現代Remixes」
収録曲
  1. 同期 / Mark Fell
  2. 不通 / Hair Stylistics
  3. 痛い / ZS
  4. 通過 / Takeshi Ikeda(core of bells)
  5. 通過 / 蓮沼執太(feat. 古川日出男)
  6. 誰か / Oval
  7. 誰か / 宇波拓
  8. 不通 / 湯浅学
  9. 同期(相違remix) / OMSB
三浦基(ミウラモトイ)

演出家。地点代表。1999年から2001年まで文化庁派遣芸術家在外研修員としてパリに滞在。帰国後、劇団・地点の活動を本格的に開始する。2005年には東京から京都へ活動拠点を移し、2013年に地点の稽古場兼アトリエ施設「アンダースロー」を開場。同施設を軸足に、国内外の公共劇場やフェスティバルで演劇作品の上演を行っている。

空間現代(クウカンゲンダイ)

2006年に野口順哉(G, Vo)、古谷野慶輔(B)、山田英晶(Dr)の3人によって結成されたロックバンド。一定のリズムやフレーズを反復するようなアレンジを特徴とする。2009年に1stアルバム「空間現代」、2012年に2ndアルバム「空間現代2」、2014年にライブアルバム「LIVE」を発表。今年9月には、これまでに配信リリースされたリミックス曲をまとめたアルバム「空間現代 Remixes」を発売した。地点のほかECDや飴屋法水、灰野敬二、Phewなどミュージシャン、演出家、ダンサーとのコラボライブも数多く実施している。