戦慄かなの×頓知気さきな|私たちのやりたいことはfemme fataleにある

妹がMCを回して感動

──いち早く妹さんの才能を見抜いた戦慄さんは、頓知気さんが青春高校3年C組の一員として活動することに対してはどう思っていたんですか?

戦慄 私はその前からテレビに出たり、ZOCとして活動したり、ある程度認知されていたんですけど、当時は頓知気に何もなかったから、どこかで頓知気のことをみんなに見つけてほしかったんですよね。そういうときに青春高校に入ることになって、センターを任されてみんなにかわいがられているようだったので、私としてはうれしかったです。けっこうみんなから「頓知気が青春高校に入るの嫌じゃないの?」と聞かれたけど、逆にいいなと思って見てました。ギャルの子と仲よくなっているのとか見るの、めちゃくちゃよかったな。楽しそう。

頓知気さきな

頓知気 うん。楽しかったよ。

戦慄 ウチら2人でいるときって、何が普通かわからなくなっちゃうんですよ。どんどん内気になっちゃうというか。だから頓知気が青春高校に入って、社会勉強をしてきてくれた感覚ですね。

頓知気 確かに社会勉強に近かったかも。

戦慄 仕事をするうえでの心構えとか忍耐強さは、青春高校で鍛えられたと思います。それに今まではリーダーみたいなことをやってこなかったのに、青春高校では率先してグループを引っ張っていて。私といると甘えん坊キャラみたいになっちゃうんだけど、青春高校だとがんばってMCを回していたりするんですよ。それを見て感動してました(笑)。

頓知気 私からすると切り替えているつもりはないんですけど、やっぱり一緒にいる人によって自分の立ち方が変わるんだと思います。「かなといるときは別に何もしなくていいや」って思っちゃう(笑)。外に出るとしっかりしてる風にしなきゃみたいなのがあるんですよ。青春高校では最年長だったし、謎に頼られることも多くて。

戦慄 学生時代とかでは絶対なかったでしょ。

頓知気 でも私、部長やってたよ。委員長もやってた。まあ名ばかりだったけど(笑)。

ファムで登り詰めるしかない

──4月にシングルがリリースされ、5月には大きめのライブも控えていて、ここから2人のfemme fataleとしての活動が活発化してくるということでしょうか?

頓知気 始まってからずっとアップグレードを繰り返してきたつもりではあったんですよ。徐々に上がっていっている感覚はあって、次はこういうことしたい、みたいなアイデアもあって。それがちゃんと形になるペースが上がってきたのかな。

戦慄 私はもう1個のグループがなくなったことも、まあ……(参照:ZOCから戦慄かなの卒業、所属事務所ekomsのグループマネージメント終了)。

頓知気 なくなってはないよ!(笑)

戦慄 そこが抜け落ちたことがすごく大きいかも。femme fataleは姉妹でゆるくやるから面白いと思ってるところがあって。頓知気は青春高校、私はもう1つのグループで、それぞれバリバリやっていくのがいいのかなみたいな。でも今となってはどっちもなくなってしまったし、自分が本当にやりたいことはファムの世界観だから、こうなった以上はファムで登り詰めるしかないなと。2人ともファム1本になったここからがスタートくらいに思っています。

──それぞれに活動がある中で、その中でも自分たちの好きなものを凝縮したものをやる場所がfemme fataleだったわけですよね。

戦慄 そう。だから前は「ファムが売れなくてもいいや」くらいに思っていたんですよ。ガツガツやらなくてもいい、心の拠りどころみたいな。ただ、今になって思うと「こんなに自分たちの好きを集めたものを、なんで2年間も放ったらかしにしてたんだろう?」って。2人ともほかの活動で鍛えられてきたからこそ、やっと満を持してファムの活動に力を入れられるのかな。

頓知気 2年前は私にそんなにやる気がなかったし……。

戦慄 本当にそう! 頓知気は気分屋なんですよ。

femme fatale

自分で書くというこだわりを捨てる

──femme fataleは「完全セルフプロデュース」を謳っていて、これまでの曲では戦慄さん自身が作詞を手がける曲が多かったですよね。それは明確にやりたいことがあるからですか?

戦慄 そうですね。ただ自分でやりたいことが明確にあるからこそ、理想が高すぎてそこに届かないもどかしさを感じていたんです。ほかのグループで誰かが作ったコンセプトの中で自分を出し切るようにやるのは全然苦じゃないのに、自分のやりたいことの中で自分が出しきれないとすごく病む。とにかく病んじゃうんですよ。「死にたい」くらいのことを考えちゃう。

──ただそれを形にできていたのはすごいと思います。

戦慄 曲も自分で作りたいから、まずDTM教室に通うところから始めたんですけど、どうがんばっても私はプロじゃないから、“自分がやりたい風な音楽”しか作れないんですよね。人にお願いするにしても、自分のイメージをうまく伝えられないから、プロの方に作ってもらうのも大変で……。今回、ケンモチ(ヒデフミ)さんにお願いして曲を作ってもらったんですけど、初めて自分以外の人で自分のやりたいこと、理想に追い付いた曲ができたと感じたんです。ケンモチさんと出会えてよかったです。本当に。

──ケンモチさんにはどのように楽曲制作を依頼したんですか?

戦慄 自分でメールしました。以前からケンモチさんが作った曲には触れていて、ケンモチさんの音作りはきれいでカッコいいなと思っていたんです。それで、ダメ元で頼んでみようとメールしてみたら、まさかのOKだった。驚いたけど、ケンモチさんが実はユルい感じの人で、「面白そうだからOK」みたいな適当な感じでした(笑)。

戦慄かなの

──曲のオーダーはどのように?

戦慄 何曲かデモを送ってもらいながら進めていたんですけど、私の語彙力がなさすぎてけっこう苦戦させてしまったみたいで……。基本的にケンモチさんは曲を書くのが早いみたいなんですけど、わがままを言いすぎてすごく時間をかけてもらった曲もありました。

──今作の2曲は作編曲だけではなく、作詞もケンモチさんですね。

戦慄 歌詞を自分で書くというこだわりは捨てました。そこは音のプロであるケンモチさんに任せようって。ケンモチさんの書く歌詞って、意味がないんですよ。意味はないけど、音に一番ハマったリリックを書いてくれる。私も歌詞に意味はなくてもいいと思っていて。自分としてはリリックにメッセージ性がある曲って聴くときに心構えが必要というか。何気ないときに音楽をシャッフルで再生しているとき、メッセージ性が強すぎる曲に当たると重い気持ちになってしんどいから飛ばしちゃう、みたいな。ファムの音楽はそういうものじゃなくていい。だからケンモチさんにお願いしているところもあります。

──「鼓動」の歌詞に関しては多少femme fataleに寄せている印象も受けましたが。

戦慄 たぶん私を見て、私の気持ちを代弁するかのようなものを書いてくれたんだと思います。歌詞を読んだときは「私、これを歌うの恥ずかしいんだけど」と思ったけど、逆に自分が書かないようなストレートなリリックなのでこれはこれでOKだなと。ただケンモチさんは自由にすると本当に意味わかんない歌詞を書いてくるから、かなり話し合いは重ねました。これはこの曲の話じゃないんですが、ビタミンドロップの原材料をそのまま歌詞にした、みたいなものが一度届いて。「ビタミンB1、ビタミンB2」とか。これはひどい!と思って文句を言いました(笑)。本当にケンモチさんはいい意味でヤバい人です。めっちゃ面白い。


2021年4月12日更新