戦慄かなの×頓知気さきな|私たちのやりたいことはfemme fataleにある

“少年院上がりのアイドル”としてバラエティ番組などでも話題の戦慄かなのと、テレビ東京「青春高校3年C組」でアイドル部のセンターとして活躍していた頓知気さきな。奇妙な名前を持つ実姉妹による音楽ユニット・femme fataleがニューシングル「鼓動 / ピューピル」をリリースした。

2018年10月にfemme fataleとして初めてライブを行い、その後はそれぞれ別グループの活動と並行してスローペースで姉妹ユニットを動かしてきた2人。戦慄はZOC卒業、頓知気は青春高校3年C組の活動終了とそれぞれに転機を迎え、2人の活動がfemme fataleに集約されるタイミングでリリースされる今作には、ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)提供の2曲が収録される。音楽ナタリーではいよいよユニットを本格始動させた姉妹2人にインタビュー。幼少期の2人の思い出や音楽的なルーツに触れながら、毎日のように喧嘩していた2人がなぜユニットを結成したのか、また「完全セルフプロデュース」を謳う彼女たちがケンモチに楽曲提供を依頼した背景など、バラエティ番組などで見せる表情とは異なるfemme fataleとしての2人に迫った。

取材 / 臼杵成晃 文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 星野耕作

毎日のように喧嘩していた幼少期

──それぞれの経歴はいろんなところで語られていますが、幼少期の姉妹がどのような2人だったかに関してはあまり明かされていないですよね。小さい頃はどんな姉妹でしたか?

femme fatale

頓知気さきな 昔のこと、全然覚えてない。

戦慄かなの そう。頓知気は昔のことをまったく覚えてないんですよ(笑)。

頓知気 毎日のようにケンカばかりしていたのは覚えてるかも。

戦慄 歳が1つしか違わないから、友達に近い感覚でした。対等な関係というか、なんなら妹のほうが力が強くて、ケンカをしたらはっ倒されたりしてました。

──でも仲はよかったんですよね?

戦慄 超仲よかった。普通の姉妹だと同じ学年同士の友達と遊ぶことが多いらしいんだけど、私たちは一緒に公園に遊びに行ってたし、児童館も絶対2人で行ってた。ずっと2人だったよね?

頓知気 ……覚えてない。

戦慄 覚えてないですって!

頓知気 1つだけ覚えているのは……お姉ちゃんは子供の頃からちょっと精神が病んでいて、揺れているものを見るとおかしくなっちゃうんですよ(笑)。でも私はブランコが大好きで、ブランコに乗るんだけど、そうするとお姉ちゃんが発狂しちゃう。ブランコだけじゃなくて、アスレチックとかもダメだったよね?

戦慄 うん。しかもアスレチックに登る人を見るのもダメだった。「お願いだから降りて!」って叫んでた気がする。

──年齢が上がるにつれて姉妹の関係が冷めるようなことはなかった?

戦慄 ずっと同じ感じ。新しい友達ができたとしても、その子たちとも遊びながら、2人でもずっと遊んでたから。

頓知気 ケンカは徐々に減った気がする。

戦慄 うん。小さい頃は2人でずっとケンカしてたんだけど、年齢が上がるにつれて親対ウチらみたいなケンカが増えていったかな(笑)。関係の近さはずっとこのままだよね。

2人で1人、何もかもが全部正反対な姉妹

──2人で過ごしていると、属性が2つに分かれがちと思うんです。例えば“動と静”とか“陰と陽”みたいな。2人はそれで言うと、どういう属性をそれぞれ持っていますか?

頓知気 “陰と陽”で言うなら、私が陽だと思う。お姉ちゃんは今はうるさいけど、昔は全然社交的な感じではなくて。

戦慄 今は私がやかましいよね(笑)。小さい頃の“陰と陽”と、今の“陰と陽”は真反対かも。

頓知気 昔は私のほうが社交的で明るくて、誰とでもしゃべれる感じ。でもお姉ちゃんは……。

戦慄かなの

戦慄 ほかの人と全然話せなくて、人と目も合わせられなかった。歩くときに首を90度曲げていたから「貞子」っていう変なあだ名が付いてたし。周りに心配されるくらい暗くて、「いじめられているんじゃないか」って近所の人が心配して学校に連絡が入るくらいだった。今はこうやって人前に立つ仕事をしてますけど、小学校の頃の朝の1分間スピーチみたいなので教室の前に立つと何もしゃべれなくて。ずっと黙り続けて泣いたりして、先生が「もういいよ」って言うまで戻ることもできない、かなり暗くて何もできない子供でした。

頓知気 いつ変わったんだろうね?

戦慄 徐々に変わったというより、少年院に入ったのを境に、真反対になったのかな。ずっと変われなかった分、そこで一気に全部変わったみたいな感じだと思います。

──2人がずっと一緒にいられるのはお互いにリスペクトし合える関係だからですか?

戦慄 そうだと思います。

頓知気 私は意識してないかな。もともとかわからないけど、何もかもが全部正反対の性格なんですよね。たぶん、2人合わせて1人の人間になったら完璧な人間になるんじゃないかってくらい、全部真逆。

戦慄 無意識下で補い合ってるところはあるかも。でも全然自分たちで意図はしてないんですよね。

超かわいくなった妹を巻き込むために

──2人の音楽的なルーツは共通しているんですか?

戦慄 聴く音楽はずっと一緒だったよね。

頓知気 お姉ちゃんが昔から音楽がすごく好きで。ずっと一緒にいたから、触れてきた音楽は一緒だし、観てきた映画とかドラマとかも全部一緒。だから通ってきているものはだいたい同じかな。

戦慄 小さい頃の影響が強いかもしれないけど、今でも好きな音楽はわりと似てるよね?

頓知気 うん。似てると思う。

──具体的にルーツになっている音楽を挙げるとすれば?

戦慄 親の影響でブラックミュージックをよく聴いていたから、その影響は大きいかもしれないですね。親の影響じゃなくて、自分で最初に見つけて聴き始めたのはPerfumeさん。NHKの「天才てれびくん」に出ていたのを観たときに「何この曲、超かわいい!」って。それでお母さんにCDを買ってもらって、そこからずっと聴いてました。頓知気は最初、全然興味なさそうだったけど、私がひたすら家で流していたのと、ライブ映像を観て振りコピしたのを見させられていたから脳裏に焼き付いていると思います(笑)。

──戦慄さんはどういう経緯で妹とユニットを組もうと思ったんでしょうか?

戦慄 ちょっと複雑ではあるけど、少年院から出てきたときに、私はやっぱりアイドルがやりたいなと思って。どういうアイドルになりたいかとか、明確なものはなかったんだけど、仕事としての憧れがすごくあった。それでひさしぶりに家に帰ってきたら、妹が超かわいくなってたんですよね。少年院に入る前は妹のことをかわいいと思ったことがあまりなくて。でもこんなにかわいくなっているなら、一緒にアイドルをやるしかない。こいつを巻き込むんだ!と思って、まず私が「ミスiD」(個性豊かな人材をジャンル問わず発掘するオーディション企画)に出たんです。そのあとに妹を「ミスiD」に出して、私がめっちゃ宣伝しまくった(笑)。本人はアイドルをやることに対してそこまで乗り気じゃなかったんだけど、私が必要としていたんですよね。活動と関係ないところでも。親元を離れて暮らそうと思ったとき、1人で暮らすのは無理だと思ったけど、2人でなら暮らせると思ったし。

頓知気 グループ名を2人で考えてたのをすごく覚えてる。

戦慄 「戦慄」とか「頓知気」とか、私が変にキャッチーな語彙しかないからもっと違うアイデアが欲しくて。

頓知気 「天才姉妹」とか。あと「才能姉妹」!

戦慄 そうそう(笑)。ヤバイ名前しか思い付かないときに、頓知気が「femme fatale」という言葉を見つけてくれて、「あ、これだ」と思ったんだよね。“ウチらのカワイイはfemme fataleだ”と思って。

頓知気さきな

──femme fatale(ファム・ファタール)という言葉はフランス文学や映画などに馴染んでいる人だとわかるフレーズですよね。この言葉をどこから引っ張り出してきたんですか?

頓知気 確かグスタフ・クリムトという画家の人のことを思い出したんですよね。女性をめっちゃ描く人で、「femme fatale」というテーマで語られていて。それで知った言葉だったと思う。

戦慄 名前を決める前にどんなイメージのアイドルにしようか、お互いにリファレンスとなりそうな作品をいっぱい出し合ったんですよ。例えば「女性上位時代」(1969年公開のイタリア映画)という、ちょっとセクシーな感じの映画とか。そういういろんなものの中に出てきた「femme fatale」という言葉がすごくピッタリだった。

──いろんなリファレンスを出していく中での「これは好き」「これは嫌い」という判断において2人の感覚にズレはない?

戦慄 「ここまでやったら下品だよね」みたいな線引きがまったくと言っていいほど一緒なんですよね。たまに怖くなるくらい(笑)。

次のページ »
妹がMCを回して感動