戦慄かなの×頓知気さきな|私たちのやりたいことはfemme fataleにある

コンテンツが強ければコンセプトはいらない

──ボーカルとして2人の声もすごくいいと思いました。音楽的にすごく合っているのはもちろん、ちょっと湿っぽいというか。サウンド的にはもっと無機質な方向に振り切ったほうが合うのかもしれないけど、すごくウエットで人間臭く仕上がっている。

戦慄 あまりエフェクトはかけてないですね。そのままの声で入っていると思う。

──姉妹ということもあり声質は近いんですけど、ちょっとしたニュアンスの差があるのもいいですね。

femme fatale

戦慄 どちらかと言うと、頓知気のほうがセクシーな声なんですよ。

頓知気 そう?

戦慄 ちょっと鼻にかかる感じで。

頓知気 確かに、かなはビームみたいなキーンとした感じの声だよね。

戦慄 前はどっちがどっちを歌っているかわからないくらい似た声だったから、なんでこうなったんだろうね。

頓知気 確かに最初は声が本当に一緒だったよね。音源聴いてもどっちの声かわからないから、ライブでどっちも歌ってたりした。

戦慄 それは適当すぎ(笑)。

頓知気 そうよく間違えてた(笑)。でも今聴いてて自分の声わかる、かなとの違いわかる。

戦慄 「頓知気にはこう歌ってほしい」みたいなものが私にあって、それを頓知気に伝えるとちゃんとやってくれるんですよ。そのボーカルがめっちゃかわいい。しゃくりとかめっちゃかわいい。音源に起こしてみると私とのボーカルのバランスもいいんですよ。おそらくお互いがアイドルとして活動する中で、自分の声の特徴とか歌い方とかに差が付いていったんだと思います。「鼓動」はCメロでちょっとウルッとさせにいく感じがすごく好き。MVは観てくれました?

──観ました。とんでもない作りのMVですね(笑)。

頓知気 とんでもない映像だよねえ。

戦慄 私はファムのイメージが凝り固まるのが嫌で、コンテンツが強ければコンセプトはいらないと考えているんです。個々に主張がないからコンセプトに頼ることになるわけで、私たちは2人がしっかり立っていれば、どんな雰囲気でもfemme fataleっぽくなるはずだから。「鼓動」のMVは今までのファムのイメージと変えたかったし、スタイリッシュだけどゴチャゴチャした感じが表現したくて、初めて渡邉直さんに監督をお願いしてみました。イメージしたのは“長旅”で、いろんな場所を巡るんだけどMVを観終わったときに「あれ、今まで何してたんだっけ?」となるような演出にこだわりました。だからいい意味でゴチャゴチャした映像になったと思います。

──あくまで音を楽しむための映像ですよね。

戦慄 MVの大事なところってそこだと思うんですよね。今までは私の伝え方が悪かったのもあって、音を表現するという点で自分が納得できる満足いくようなMVがなかなか作れなかった。場数を踏んできたのもあって、今回は満足いくMVが完成したと思います。

「ピューピル」はタイトルでオチてる

──シングルに収録されているもう1つの楽曲「ピューピル」は、ベタな韻の踏み方をしながらも言葉自体が面白おかしい、ポップなんだけど引っかかりが異常に多い曲ですね。

戦慄 「ピューピル」というタイトル、日本語にすると「瞳孔」という意味なんですよ。「鼓動」と「瞳孔」でダジャレにしているらしくて、この曲は出オチというか、存在自体でオチているんですよ(笑)。だから歌詞の意味はまったくないと思います。私が好きな音楽としてファンクを今回お願いしたくて。「鼓動」のカップリングは絶対にファンクがいいと思って、ケンモチさんにはお願いしました。

──「鼓動」と「ピューピル」の2曲のバランスもいいし、ケンモチさんならではの要素を取り入れながらもfemme fataleの音楽的な軸は以前の作品と並べても全然ブレていないですね。コンセプトはなくても、戦慄さんの中でブレない音楽的な軸や、表現したいビジョンがあるわけですよね?

戦慄 タイミングによってやりたいことも変わってくるので、言語化できるようなものではないんですが、「明らかにこれはファムっぽくない」みたいな基準はありますね。この基準を守れば絶対にブレることがない。頓知気もファンクは好きでしょ?

頓知気 好き好き。あとケンモチさんの曲も好き。

──ブレない軸がありながらも、戦慄さんはいろいろなことに挑戦していきたい気概みたいなものも持っていますよね。

戦慄 新しいことにはやっぱり挑戦しないと。

頓知気 新しいことをしてもウチらがブレなければたぶん大丈夫。

戦慄 もしズレ始めたらお互いで立て直し合おうね。

今が一番モチベが高い

──ここ1年くらいはライブの開催が難しいご時世が続きましたが、5月には東京・Zepp Haneda(TOKYO)でのワンマンが予定されています。今年はライブにも力を入れるんですか?

femme fatale

戦慄 これまではガツガツやろうというのがあまりなかったから、対バンに出るほうが多いくらいだったんですが、ここ3、4カ月でワンマンの予定をちゃんと立ててやるようになって。5月にはZepp Haneda(TOKYO)でのライブもありますし、これからはワンマンを継続的に打って、規模をどんどん大きくしたいというビジョンがあります。

──5月のライブタイトルは「ユートピア」で、「femme fataleが思い描く理想郷が音楽とダンスで表現される」と謳われていますが、どんなライブになりそうですか?

戦慄 理想郷を表現……します! めちゃめちゃ練習してますし。私たちが好きなものを詰め込んだライブになりそうなので、内容はしっちゃかめっちゃかなものになるかもしれないけど、それを楽しんでほしいな。

頓知気 ダンスはがんばるけど、MCはめっちゃユルかったりするし。

戦慄 どうなるんだろうな。まだわかんなーい(笑)。

──5月のライブの先の展望はありますか? femme fataleが理想を追求して登りつめると、どこにたどり着くんでしょう?

頓知気 ……世界?

戦慄 世界がいい! でもあまり場所を夢とか理想に置きたくないんですよ。大きい会場とか、がんばったら誰でも立てるんですよ。だから場所を目標にはしていないです。

──femme fataleがどうなると一番うれしいですか?

戦慄 個人的には自分が納得するところまでやれて、そこまで頓知気がついてきてくれたらいいですね。永遠とは言わないけど、納得いくまで続けられるのが私の理想。femme fataleというプロジェクトは私がやりたいことにみんなを巻き込んで、私がやりたいことに付き合ってもらってるって感覚が強いから、そこまでみんなが付いてきてくれるか、それが心配ですね。

──頓知気さんはどうですか?

頓知気 そうですね。

戦慄 そうですねじゃないでしょ(笑)。

頓知気 よくここまできたな、と思ってます。

戦慄 ここまでは誰でもできるだろ! おかしい。まだ何もしてないんだから!(笑)

頓知気 デビュー前からずっと「辞める」ってケンカを何十回としてきたけど、今は意外とやる気があるから大丈夫じゃない?

戦慄 ファム史上、今が一番、やりたいことが明確に見えてきたタイミングだと思うんです。だから妹のモチベも一番高いと思う。

頓知気 最初はマジで楽しくなかったんだけど、最近楽しくなってきたかな。

戦慄 ずっと自信がなかったんですよね。ファムでやっていることに対して、これでいいんだろうかみたいな気持ちがずっとあったけど、最近やっとそういう気持ちが軽くなってきた。それはいろんな人が面白いと思ってくれて、いろんなクリエイターさんたちに協力してもらったりしたからだと思う。今は本当にピュアな気持ちで「売れるためにがんばろう」と思える状態になりました。

頓知気 いろいろあったけど、この2年間徐々によくなってきてる気がするから、これからも大丈夫じゃない?

戦慄 頓知気もこう言ってるから大丈夫だと思います(笑)。

ライブ情報

femme fatale「ユートピア」
  • 2021年5月9日(日) 東京都 Zepp Haneda(TOKYO) OPEN 16:00 / START 17:00
femme fatale

※記事初出時、内容の一部に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。


2021年4月12日更新