ナタリー PowerPush - FAT PROP
新しい挑戦を詰め込んだ勝負作 2ndフルアルバム「Brand New World」
今のメンバーになってからすべてが動き出した
──そこを境にメンバーの意識も自分たちを取りまく状況も変わり始めたんですね。音楽活動に対してどんどん意欲的になって、上京もして。
Shintaro 2009年に今のメンバーになってから、すべてが動き出した感じですね。東京でのライブの機会も増えて、イベントも前より誘ってもらえるようになって。僕らの名前が少しずつ認知され始めてる気がします。
Ema 関東での反応は特に変わったかな。
Nagiken 今は100%上がってる状態だよね。東京に出てきたことで、今回のCDの出荷枚数も前回より伸びました。2010年に1stフルアルバム「THE DIE IS CAST」を出したんですけど、その手応えも感じてます。アルバムのツアーで知り合った人たちが声をかけてくれて、今年は名古屋と青森のフリーフェスに出たりもしたんですよ。そういうのはすごくうれしいですよね。
Rinda 曲作りのペースも格段に上がりましたよ。それはShintaroが正式加入してくれたことが大きいですね。以前は自分1人で曲を作ってたんですけど、今はサポートしてもらえる。僕らの場合、2人ずつに分かれて作業するんです。僕とShintaroが別部屋で曲を作って、その間にリズム隊2人はライブの練習をしてたりする。曲作りって、1人だと「これはどうなんだろう?」みたいに悩む時間も多いじゃないですか。そうすると、時間が無駄になっちゃう。でも今は、自分のアプローチに対してShintaroがスパッと答えをくれるから、うまく短縮できるようになりましたね。
Shintaro そこのやり取りは早いよね。迷ったら、すぐやめようってなるし(笑)。
──精神的にも楽になりましたか?
Rinda うん、次に進みやすくなりましたね。Shintaroに「いいね!」って言ってもらえたら、やっぱり自信にもなるし。
──じゃあ、曲作りは基本スタジオでやっているんですね。
Shintaro そうですね。まだ東京に出てきたばかりなので、今は環境を築けてない部分もあるんですけど、これまではそうしてきました。
Rinda 自宅で作ってくることはほぼないですね。
──だから、曲のアレンジがすごくバラエティに富んでいるのかもしれないですね。
Shintaro あー、そうなのかも(笑)。
自由なスタイルの中で進化していきたい
──今回のニューアルバム「Brand New World」は、作るにあたってどんな構想があったんですか?
Shintaro 売りでもあってデメリットでもあるのかもしれないですけど、今おっしゃってくださったように、僕らはいろんな曲をやるジャンルレスなバンドなんですよ。だから、とにかく僕らがやりたい曲を作るということを考えましたね。自由なスタイルの中で進化していきたい。去年発表した「Close My Eyes」っていう曲が、僕らのイメージとして強いのかもしれないんですけど、そこに寄るつもりはないんです。
Nagiken 極端に偏り過ぎないようにしようっていう意識はあるよね?
Shintaro そうだね。4曲目の「CAN'T STOP THE MUSIC」では、今までにやったことがなかったエレクトロ / ダンス系の曲にチャレンジしてみたりもして。
Ema 個人的には、今回はアルバムを通して、ドラムのフレーズをなるべく事前に決めないようにしてみたんです。今まではレコーディングに入る前にフィルやリズムをガチガチに決めてたんですが、それをやめてみました。だから新鮮でしたね。「CAN'T STOP THE MUSIC」のドラムソロなんかは、自分で聴き直しても何をやってるかわからないんですよ。PV撮影どうしよう、みたいな(笑)。
──いろいろなチャレンジがあって、面白いですね。ちなみに、「Brand New World」というタイトルに込めた意味は?
Shintaro ちょうど制作時期に東日本大震災が起きたのもあって、次のステップというか、聴いてくれた人が新しい世界をイメージできるようなタイトルにしました。
──アルバムを聴いて、1曲目からラストまでの流れにストーリー性がある感じがしたんですね。気持ちが沈んだところから徐々に上がっていくような展開にしたのかなって。最初の2曲で渦巻いているネガティブな感情や張り詰めた雰囲気が、だんだんと解けていくというか。そのムードがタイトルにも表われているのかと。
Ema 言われてみるとそうですね。
Shintaro 狙ってはなかったんですけど、そういう気分の中で作ってきたアルバムではあるから、自然とそうなったのかもしれないです。基本的には曲順はライブを組み立てるように決めました。
途中で4人全員が違うアイデアを出すと面白く転がる
──5曲目の「Feelin' Pop」も新機軸だと思います。ハネるピアノがあったり、フレディ・マーキュリーばりに壮大に歌い上げたり、アンバランスなようで絶妙な曲ですね。
Shintaro 僕らなりにオールディーズをやってみた曲ですね。それで、追いかける感じのコーラスを入れてみようかっていうアイディアが出てきたりして。あの曲は実はBメロが……ね?
Rinda そうそう! なんか直前でピンと来なくなって、レコーディング中にその場で変えたんです。楽器を全部録ったあとに、メロディもすべて変えて(笑)。
──その瞬発力はいいですね。ポジティブでハイテンションな曲だと、「Well, Well, Well」も印象的でした。
Rinda Shintaroのリフからできた曲ですね。
Shintaro あれは完全に僕の、ギタリストとしてのエゴが炸裂してますね(笑)。
──でも、全員それぞれが見せ場のある曲ですよね。ドラムの力強いビートから始まって、序盤はヒップホップ×ロックなテイストがありながら、ラストはハードロックばりにシャウトする面白い曲だなって。
Shintaro なんだかんだでめまぐるしい展開のある曲が好きなんです。最初に方向性をイメージしても、途中で4人全員が違うアイデアを出すこともある。そうなると面白く転がりますね。
──一方で「Brand New Morning」のようなゆったり聴かせる曲もありますね。
Shintaro できあがったとき、個人的に長く聴かれてほしいと思った曲です。メンバーみんながこの曲をすごく気に入ってて、PVも僕らの意向で作ることにしました。
CD収録曲
- Drive
- Stop The Time
- Shade
- CAN'T STOP THE MUSIC
- Feelin'Pop
- Brand New Morning
- I Don't Care About You
- Well,Well,Well
- Reach
- Hi
- Dream Continue
- Hello
FAT PROP(ふぁっとぷろっぷ)
Nagiken(B)、Ema(Dr)、Rinda(Vo)、Shintaro(G)の4人からなるロックバンド。2002年に鹿児島で結成され、2008年にメジャー1stミニアルバム「CHANGE THE FUTURE」をリリース。その後メンバーチェンジを経て、現在の編成となる。2010年にCAFFEINE BOMB RECORDSヘ移籍し、約2年ぶりの新作アルバム「THE DIE IS CAST」を発表。今作は「第3回CDショップ大賞」入賞作に選出され、高い注目を集めた。2011年には活動拠点を東京に移し、同年9月に2ndフルアルバム「Brand New World」をリリース。タフなライブとエモーショナルなサウンドでライブハウスシーンを中心に人気を獲得している。