.ENDRECHERI. / 堂本剛インタビュー|「人生は一度きりでも、何度だって生まれ変われる」不変の信念を刻んだ「END RE」 (2/2)

いずれは心の声を最大限に聞いた音楽作品を

──少し意地悪な質問なんですが、今の環境であれば剛さんがご自身の音楽を自由に表現することもできると思うんです。言ってしまえば、迷ったとしても、音楽家としてのエゴを押し出した作品も出せる。ディープなファンク一色の作品でもいい。でも、以前のインタビューでもお話しされていたように(参照:堂本剛が憧れのジョージ・クリントンと初コラボ、みのミュージックが.ENDRECHERI.「雑味 feat. George Clinton」に迫る)、剛さんは周りの意見やファンからの理想というものを大切にされている。それはどうしてですか?

僕自身は「アーティストは誰でも、何も気にせず好きなものをリリースすればいい」と思ってるタイプですけど、いろんな人がこの人生を支えてくださっていると考えたら、よくも悪くも振り切ることができない。

──なるほど。

あ、でも、2021年に出した「GO TO FUNK」は、わりと自由に自分の心の声を聞きながら作ったアルバムだったな。コロナ禍という時代の影響を受けて作った曲を全部詰め込んでおこうと思ったんです。そのアルバムがアメリカで評価されたことはうれしかったですね(※ファンク専門の音楽メディア「Funkatopia」が選ぶ「2021年のファンクアルバムベスト20」に選出された)。アメリカへのアプローチは特にしていませんでしたし。ただ、求められていることに応えることも僕は好きですよ。そうすることによって新たな自分を発見できたり、感覚や思考がアップデートされたりするので。同時に、いずれは心の声を最大限に聞いた音楽作品を作ることをやるべきだとは、改めて思っていますね。

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──それはライブ制作においても、でしょうか?

そうですね。本来はライブの楽しみ方とはそれぞれでいいと思うし、ショーではなくライブというものはそうあるべきだと思います。ただ、最近同性のお客さんも増えて、若い世代の方もライブに来てくれるようになりましたから、そういう新しい出会いをくださった人たちも、いつも会場に来てくれている愛する人たちと一緒に巻き込めるような演出も思考も優しさも必要になってくるだろうし、このぜいたくな変化を楽しみたいですね。現状に満足して留まるのではなくて、進化していくこと、進んでいくこと、それこそ何度も言葉にしている「生まれ変われること」を、すべての性別、世代の方々と、体感して実感していきたいですよね。

──なるほど。

.ENDRECHERI.ライブの後半では、毎回50分近くのフリーセッションをしています。フリーセッションにおける自分もギターやベースを弾き倒しますが、バンドメンバーも同じく弾き倒し合います(笑)。僕はそれをサポートしたり、ソロを聴きながら休憩したり、その場のノリを楽しみながら自由に自分の我を出す大切さを体現しているんです。エゴという言葉の響きが邪魔しているだけで、ありのままの自分を生きることが決して悪いことだとは思ってない。それを受け入れられる、愛のある環境が整えばいいだけだから。.ENDRECHERI.のライブや音楽は、愛と自由に満ちたものにしたいし、オーディエンスやリスナーには勇気を苦しいほどに与えたい。今の僕はいろんな場所でアウトプットができているし、ステージにも立てていますが、ずっと心の葛藤や孤独を抱えて生きてきたし、パニック症の影響で自分の心をコントロールできないときもあるし、体調面では今もなお闘っていることもありますから。

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だまされたと思って聴いてみてほしい

──決してリスナーとかけ離れた存在ではない?

そう。だから、同じ境遇にある人にはこの「END RE」という作品、僕の音楽を聴いてほしいな。だって僕はその方々と同じような思いを抱えながら、自分を奮い立たせて音楽を続けて来ているし、歌を歌ってきました。パニック症になると、人と対話することが苦手になって、誰かとごはんを食べることも、乗り物に乗ることも、高い場所も怖くなってしまうんです。本当に外に出るのが怖くなって、内向的になってしまった時期もあったけど、僕はジョージ・クリントンとファンクミュージックに出会って生まれ変わることができた。そういう自分の姿、音楽を伝えることで、今いる環境から旅立とう、新しい自分に生まれ変わるんだと思えるお力添えができる気がするんです。

──心の処方箋的なものでしょうか。

そういうものに、ちょっとはなると思うんで。あの……だまされたと思って聴いてみてほしいです。

──だまされたって、そんな(笑)。

バラードもありますが、摩訶不思議なファンクミュージックも入ってますから(笑)。手に取ってみてほしいです。それが僕にとっての新しい出会いにもなり、いつの日か何かを一緒に作るきっかけになるかもしれない。

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──ご縁というのはどこでどうつながるかわからない。

あと、真面目なことほど柔らかくというか、関西人の感覚で言うなら、しんどいときにこそつらいことを笑いに変えていく。僕にとってファンクミュージックもつらい状況を変換する音楽なんです。

──ソウル、ファンクミュージックはサウンドこそポップではありますが、アフリカン・アメリカンの人たちの抑圧や差別に対する抵抗、反逆のメッセージを込めた音楽として生まれた背景もありますから。

そうなんです。まあ、僕を見て「ちょっと自分と似てるなー」と思ったら聴いてもらうくらいのラフな感じで十分です。今の自分ができる最大限の環境の中で、愛と優しさをつなぎ合わせて作った作品です。よろしければインタビューを読んでくださった方ともつながっていきたいと思う次第です。

──ひさびさのパッケージ作品ということでいろんな仕掛けもありますが、気軽に聴けるサブスクリプションサービスでの配信もありますし。

はい。

──「END RE」を引っさげてのライブツアーなども予定されている?

もちろん。.ENDRECHERI.のライブは来た人をマジで後悔させないんで、音楽好きの人はぜひ足を運んでください! 皆さんに会えることを楽しみに、会場で待っていますね。

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公演情報

【 Reborn 】

  • 2025年4月12日(土)神奈川県 横浜BUNTAI
  • 2025年4月13日(日)神奈川県 横浜BUNTAI
  • 2025年4月20日(日)愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
  • 2025年4月21日(月)愛知県 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
  • 2025年4月28日(月)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2025年4月29日(火・祝)京都府 ロームシアター京都 メインホール
  • 2025年5月5日(月・祝)宮城県 仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
  • 2025年5月6日(火・祝)宮城県 仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
  • 2025年5月9日(金)兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
  • 2025年5月11日(日)奈良県 なら100年会館 大ホール
  • 2025年5月12日(月)奈良県 なら100年会館 大ホール
  • 2025年6月1日(日)大阪府 グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)メインホール
  • 2025年6月2日(月)静岡県 アクトシティ浜松 大ホール
  • 2025年6月7日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
  • 2025年6月8日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA

プロフィール

.ENDRECHERI.(エンドリケリー)

1979年4月10日生まれ、奈良県出身のシンガーソングライター堂本剛のクリエイティブプロジェクト。ジョージ・クリントンに感銘を受けたことをきっかけに、ファンクミュージックを軸にしたジャンルレスな音楽を発信している。2022年にはファンク専門の米音楽メディア「Funkatopia」が選ぶ「2021年のファンクアルバムベスト20」にアルバム「GOTO FUNK」が選出され話題となる。2024年5月から6月にかけて.ENDRECHERI.として全国7都市を回る全国ツアー「.ENDRECHERI. LIVE TOUR 2024『RE』」を実施。同年10月にジョージ・クリントンとのコラボ曲「雑味 feat. George Clinton」、12月にシンガーソングライターとしてのデビュー曲「街」を再レコーディングした「Machi....」を配信リリース。2025年2月にミニアルバム「END RE」を発表した。

衣装協力
FILL THE BILL
SANDINISTA