体の一部になっている曲を再録
──今作には、エルスウェア紀行が前身バンド時代から演奏していて、ツアーファイナルでも披露された「ベッドサイドリップ」の再録も収録されていますね。
安納 新しい曲ができると、なかなかやらない過去の曲も増えてくるけど、「ベッドサイドリップ」は10年間ライブでずっと歌っているので、やっぱり特別な曲ですね。今の自分にはもう書けないけど、どこか根幹にあることを歌っているから、「歌わなきゃ」という気持ちになる曲です。ずいぶん前から「いつか改めてレコーディングしよう」とトヨシさんとは話していて。「ghost walk e.p.」は「地に足をつけず、自由に実験的に」をコンセプトにしているから、新曲と昔の曲を並べるのは不自然かなとも思ったんですけど、メジャー最初のEPのタイミングなら入れられるんじゃないかと2人で決めました。
──「ghost walk」は「地に足をつけない」という意味なんですね。
トヨシ 「ベッドサイドリップ」のレコーディングでは安納がアコギを弾いて、自分がドラムを叩きましたけど、2人とも曲が体に染み付いていて、よくなじんでました。
安納 私は普段、レコーディングではアコギを弾いていないので(笑)。
トヨシ やっぱりもう10年やってるから、気持ちいい落としどころがわかっていて、本当に体の一部になってる曲なんだなと実感しました。
──「ベッドサイドリップ」の前には1分ほどの「For the Unseen」という曲が入っていて、眠りというテーマでつながっていますね。
安納 実はこれ3年前ぐらいに作った曲で、曲というよりもトヨシさんが……。
トヨシ 新しいプラグインエフェクトを買って、「これ気持ちよくない?」と僕が試奏的に弾いていて。
安納 「その音めっちゃいいじゃん」と、言葉とメロディを書いて、iPhoneを置いてその場で録って。「子守唄っぽくていいな、いつかレコーディングしたいな」と思っていたんですけど、直感的にその音源を超える気はしなかったんです。「地に足をつけない」という今回のコンセプトにも、曲の並びにもぴったりハマっていたので、iPhoneで録った音源をそのまま収録してます。
トヨシ ギターを間違えてるのもそのままにしてるぐらい。
安納 タイトルもダジャレ的なところがあって、「安心のために」と「見えないものたちへ」というニュアンスです。
挑戦はまだまだ続く
──EPにはもう1曲、こちらも短いインストの「ghost walk II」が収録されています。
安納 この曲の成り立ちは「表題曲のインストを入れたい」という思いつきからで、タイトルの「II」にも意味はないんです……美術館などで「I」はなくて「II」だけが展示されている作品を目にしたりしますけど、いろいろな想像ができるから好きで。
トヨシ EPの表題曲なのに安納の声が入っていない、というのはかなり実験的でした。最初はもうちょっと怖い、お化けのイメージでデモを作ったんですけど、最終的にできあがったのはもうちょっと優しいサウンドで。
安納 「tour "strange town" 2025-2026」を通して、エンディングのSEとしてこの曲を使っていたんです。初日のデモバージョンからだんだんアップデートしていって、最終公演では完成版を流したので、「II」が似合うかもしれない。
──「ghost walk e.p.」のジャケットに写っているのはなんですか?
安納 猫なんです。いつもアートワークを作ってくれている板橋佳介くんが撮った写真をたまたま見せてもらったときに、猫の自由で気ままな感じが、地に足をつけない自由さと合うなと思って。ちゃんと写ってるバージョンと、このブレてるバージョンとすごく迷ったんですけど、タイトルに合わせて“自由なゴースト感”のあるほうを選びました。
──メジャーデビューという大事なタイミングで、「ここからは地に足をつけてがんばろう」となりそうなところ、「地に足をつけないでがんばろう」という、そのユーモアと自由なムードもすごくエルスウェア紀行らしいですよね。9月にはEX THEATER ROPPONGIでのワンマンライブ「夢幻飛行2026」の開催も発表されています。そこに向けて、今後はどんな活動をしていきたいですか?
トヨシ また新たな挑戦はしていきたいなと思っていて。可能かどうかはまだわからないですけど、今回のEPでストリングスのアレンジもいろいろ試せたので、ライブでやれたらなと思いますね。
安納 今回、変わらない部分と新しい部分が混ざった「ghost walk e.p.」を作ることができたので、今度はまだ知らないこと……個人的には、9月までには難しいかもしれないですけど、役者や脚本を書く同世代が多いので何か一緒にできたらいいなと思います。また、新しい挑戦を探しに行きたいです。
公演情報
夢幻飛行2026
2026年9月13日(日)東京都 EX THEATER ROPPONGI
プロフィール
エルスウェア紀行(エルスウェアキコウ)
“どこでもない場所を旅する記録”をコンセプトに活動する、安納想(Vo, G)とトヨシ(G, Dr, Cho)による2人組バンド。2020年12月に1stアルバム「エルスウェア紀行」、2024年10月に2ndアルバム「ひかりを編む駐車場」をリリース。2026年2月にシングル「のびやかに地獄へ」でトイズファクトリーからメジャーデビューし、3月にメジャー1st EP「ghost walk e.p.」を配信リリースした。9月には東京・EX THEATER ROPPONGIでライブ「夢幻飛行2026」を行う。
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