HIP LAND MUSICによる音楽ディストリビューションサービス・FRIENDSHIP.がキュレートするショーケースイベント「【SSR2025】SHIBUYA SOUND RIVERSE」が、9月28日に東京・LIQUIDROOM、KATA、LIQUID LOFT、Time Out Cafe & Dinerで開催される。
デジタル中心となった世の中で、言語や国境、時代を越えて人々がつながり、生の現場ならではのアナログな温かみを感じられる空間作りを目指して行われるイベント「SSR」。今年はSPARK!!SOUND!!SHOW!!やODD Foot Works、Enfants、揺らぎ、ゆうらん船、エルスウェア紀行、VivaOla、YJC LAB.(YAJICO GIRL)、Rol3ert、阿部芙蓉美、aldo van eyck、JunIzawaなど、ジャンルや世代を越えた全27組がパフォーマンスを繰り広げる。
音楽ナタリーでは「SSR」の開催を記念し、近い界隈にいながらも今回が初競演となるSPARK!!SOUND!!SHOW!!とODD Foot Worksにインタビュー。音楽性こそ異なれど、既存のジャンルの枠に収まらない表現を続ける2組に、天邪鬼な気質から生まれる音楽への思い、現在進行形で更新され続ける“オルタナティブ”な姿勢、「SSR」で楽しみにしていることについて語ってもらった。
また特集の後半には、「SSR」出演者の中からaldo van eyck、エルスウェア紀行、楓幸枝、揺らぎの4組のコメントを掲載する。
取材・文 / 三宅正一撮影 / kokoro
公演情報
【SSR2025】SHIBUYA SOUND RIVERSE
2025年9月28日(日)東京都 LIQUIDROOM / KATA / LIQUID LOFT / Time Out Cafe & Diner
OPEN & START 12:30
LIQUIDROOM
SPARK!!SOUND!!SHOW!! / Enfants / ODD Foot Works / DURDN / 揺らぎ / エルスウェア紀行 / YJC LAB.
KATA
Gateballers / aldo van eyck / Blume popo / Tyrkouaz / ベルマインツ / くゆる/ GeGeGe
LIQUID LOFT
阿部芙蓉美 / ゆうらん船 / Foi / 鳥兎-uto- / kiwano / Rol3ert / 楓幸枝
TimeOut Café & Diner
JunIzawa / VivaOla / SPENSR / WAZGOGG, Koshun Nakao / Tamuraryo / KEISUKE SAITO
知り合いフェスやれそう
──SPARK!!SOUND!!SHOW!!とODD Foot Worksは今回が初対面ですが、まずはお互いの印象について教えていただけますか?
タクマ(Key, G, Cho / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) 俺、最近リリースされたPecoriくんのソロの新曲「Gonzo」めちゃくちゃ好きです。YouTubeのおすすめに出てきて、曲もミュージックビデオもめちゃくちゃカッコよかった。
Pecori(Rap / ODD Foot Works) ありがとうございます! もう満足なんで、今日の取材は終了で(笑)。
タナカユーキ(Vo, G / SPARK!!SOUND!!SHOW!!) ミクスチャーという音楽性では通じる部分が多いけど、オドフットがすげえシュッとしてるのに対して、俺らはけっこうガチャガチャした品のない音楽をやってる(笑)。これまで意外と交わるタイミングがなかったから、「SSR」で競演できるのはうれしいですね。
──オドフットのスサシに対する印象は?
榎元駿(B / ODD Foot Works) 俺はベースのチヨさんと飲み屋でたまに会うんですけど、その前からスサシの音楽が好きで聴いてたんですよ。それでチヨさんとTHE MAD CAPSULE MARKETSの話で盛り上がったりして。スサシはTHE MAD CAPSULE MARKETSとは全然違うアプローチをしているし、リスナーに激しく食らわせるような音楽をやってるけど、その中にもポップさを兼ね備えてるところが好きです。
有元キイチ(G / ODD Foot Works) 俺はアーティストのグッズを作る会社でバイトしてたことがあって、そのときにスサシのグッズをめちゃめちゃプリントしてました(笑)。確か水色っぽいグラフィックがフロントと袖に入ってるロンTだったかな。それがめちゃくちゃかわいかったし、一緒に働いてた人から「スサシはすごいグッズが売れるんだよね」という話も聞いていて。サザンオールスターズのグッズを刷ってるのかと錯覚するぐらい、ものすごい量を刷りましたね(笑)。
Pecori 俺は初対面の人に「スサシと仲いいっすか?」ってよく聞かれるんですよ。近い界隈にいるっていう前提で話をされるというか。
──お互い共通の知人を掘っていったら、下手したら20~30組じゃきかないくらいいそうですよね。
ユーキ フェスできますね。
Pecori 共通の知り合いフェス(笑)。
オルタナティブ=天邪鬼
──スサシとオドフットは楽曲制作において、やりたくないことは徹底的にやらない2組だと思うんです。それぞれに“オルタナティブ”を追求しているといいますか。なぜ、そういう姿勢のバンドになったんだと思いますか?
ユーキ オルタナティブって言われてる人は結局、大の天邪鬼やと思うんですよ。多数決で多い方に乗っかるバイブスやったら、オルタナティブな方向には行ってないというか。ほかの人はわからないけど、俺はずっとそうやったなと思います。で、なんで俺らが今のスタイルになったかと言うと、子供の頃にRIP SLYMEやKICK THE CAN CREWのような、J-POPとしてのヒップホップが流行ってたんです。J-POPとしてラップを聴いて、バンドはインディーズとか洋楽をチェックしてた。その時期に聴いてたものが、今クロスオーバーしてるのかなと。広義で言うとミクスチャーやけど、言葉としてはオルタナティブのほうがカッコいいんで、俺らとしてはそう呼んでほしいですね(笑)。
──ミクスチャーという言葉はどこか前時代的になりましたよね。
ユーキ ミクスチャーって今でこそリバイバルでカッコいいみたいな風潮がありますけど、10年ぐらい前にやってたら「え、あれやってんの?」って感じだったと思うので。
──タクマさんは2017年2月にスサシに加入しましたが、いろんなサウンドが折衷しているという点も合流するうえで大きかったですか?
タクマ そうですね。バンドに入って少し経ってから基本的に僕が曲を作るようになったんですけど、やっぱり天邪鬼な部分があるし、刺激的な音楽が好きなんですよ。そうなると、必然的にオリジナリティを求めていく。常に前作と同じようなニュアンスにならないように意識していて、歌詞やメロディはユーキが書くんですけど、お互い「なんかこれ前回と同じ感じじゃね?」「じゃあ変えよう」という会話に自然となるんですよ。
──自分たちの過去作にカウンターを当てていく。
タクマ やっぱりほかのバンドを見ていても、常に変化してる人たちの作品のほうがすごいと思っちゃうので。
──オドフットも特定のジャンルではくくれない音楽をやっていますよね。自分たちに天邪鬼な気質はあると思いますか?
Pecori はい。そこはマジでスサシと似てると思います。オドフットの結成当初はメンバー全員に裏道を走るのがカッコいいというバイブスがあって。活動を重ねる中で、王道を行き切るカッコよさみたいなものに気付いてきたんです。ジャンルでくくれないって話で言うと、そもそもメンバーのバックグラウンドがバラバラなんですよ。
榎元 確かにそれはそう。
Pecori 榎はマスロック、有元はジャズやファンク、俺はヒップホップだったんで。そもそも今一緒にバンドやってるのがレアなグループだと思うんです。それは混ぜたらなんか変な音楽できるよなっていう。
──そういったバンドを8年も続けられる理由は?
Pecori うーん、それはこっちが聞きたい(笑)。
嫌いなものが一緒
榎元 初期の頃を思い出すと、聴いてきた音楽はバラバラだったけど、嫌いなものは共通してたんですよ。悪口を言うポイントが一緒、みたいな。あとスサシは共感してくれると思うんだけど、天邪鬼でありつつもポップなものがちゃんと好きなんですよね。スサシのトラックを聴いてみると、めちゃめちゃなことが起きているんだけど、ちゃんとポップでぶち上がれるポイントが用意されている。その“天邪鬼が目的にならない”ってところは、俺ら3人も共通認識として持ってますね。
ユーキ ヘイトするポイントが共通してるのは、俺もバンドにとってデカいと思う。結局、長く付き合えている人って、ヘイトしているものがだいたい一緒なんですよ。むしろその部分だけ共通してたら、何を好むかはどうでもいい。逆に好みがバラバラだからこそ、バンドという1つの集合体として曲を作ったときに、グニャグニャなバランスのものをアウトプットできるんだと思う。
──バンドだけの話ではなく、人間関係全般においてもそうだけど、何が好きかより、何が嫌いか、何に拒否反応が出るかという共通項のほうが関係性を強固にしますよね。
榎元 3年前に出した「Master Work」というアルバムに、スリーピースロックバンドみたいなサウンドの「音楽」って曲が入ってるんですけど、それもほかの曲がバランスを取ってくれていて。それがなかったらリスナー的に「意味わかんない」で終わってたと思う。そういう温度感や線引きも、スサシとオドフットはある程度近い感覚を持っている気がします。
──スサシは「これをやっちゃうとダサい」というボーダーラインをメンバー間で共有できていますか?
タクマ そうですね。たまにドラム(イチロー)の人だけどっか行っちゃうんですけど(笑)。
有元 どっかに行くっていうのは?(笑)
タクマ バンドとして「それダサいよ!」という方向に1人だけ行っちゃうときがある(笑)。そうなったら「こっちだよ!」って俺らで軌道修正するんですけど、そういう変化球を投げられるメンバーがいるのもよくて、結果的に面白い方向に転ぶときもあるんです。
1月生まれ考察
ユーキ オドフットはドラムいないですよね?
有元 正式メンバーとしてはいないですね。今は箱木駿という信頼してるサポートドラマーがいるけど、結成当初はサポートも入れてなかったです。
ユーキ 今でこそドラムレスのバンドは多いけど、オドフットが出てきた2017年頃にそのスタイルやってたバンドっておらんかったと思うし、その時点でもう大天邪鬼やなって(笑)。オドフットはその先駆けやし、そのスタイルを“アリ”にしてきた人たちですよね。
Pecori オドフットはそもそもヒップホップグループ的なノリで結成したんですよ。1MC1DJ編成にギタリストのメンバーがいるのオモロい、みたいな感覚だったから、最初はベースもいなかった。でも、活動していく中でバンドっぽいトラックもできてきて「これ普通にシンセベースじゃなくて誰かに弾いてほしいよね」という話になったんです。
有元 オドフットを結成した頃、俺はまだ別のギターロックバンドもやっていて、これまでの自分と真逆のことやる、新しいバンドにしたいという感覚があったのかもしれない。これってたぶん早生まれだからかもしれないと思って(笑)。
タクマ その考察オモロ(笑)。
ユーキ 俺は1月15日生まれ。ちなみに、うちのドラムは俺と同い年で1月14日生まれっす。
Pecori ヤバ! 俺は1月12日で、有元が1月10日なんですよ。
有元 さっき会った瞬間に1月生まれかなと思いました。
榎元 ホントかよ(笑)。
ユーキ 1月生まれはゆったりしていて、明るくない人が多い気がするんですよ。俺ら今年、ENTHとスプリットシングル(2025年7月発表の「#ワイタイスカッ2」)を出したんですけど、そのバンドのボーカル・daiponも同い年の1月20日生まれで。daiponはめちゃ明るくてパーティ感もあるけど、1月生まれっぽい落ち着きのギアも持ってるから接しやすいんですよね(笑)。
Pecori その落ち着きのギアは、世間がまだ正月ボケしてる静かな時期に生まれたから持ってるのかも。
ユーキ 落ち着いてるのは気温も関係ある気がすんねんな。あと1月生まれで「夏生まれでしょ?」って言われてる人あんま見いひん気がする。
有元 まあ、早生まれは早生まれを引き寄せるっすね。
ユーキ そうだね。俺も微妙に早生まれロジックがあると思ってたから。
榎元 俺は3月生まれなんですけど、そんなこと考えたことなかった(笑)。
ユーキ 3月は穏やか。3月より1月のが暗いです。
有元 そう、1月生まれは目が暗いです(笑)。だから本当にダメなんですよね、メインストリームの考え方が合わなくて。今のメインストリームの概念として「みんな自分を愛そうぜ」と「どうせ死ぬから今生きてるうちになんかやろうぜ」の2つがあると思っていて、俺はどっちも嫌なんですよ。だから自分よりも人のことを好きになろうと思うし、俺は死なない(笑)。
榎元 それ1月生まれ関係あんの?(笑)
有元 (無視して)あと改札で止められちゃう人とかみんな嫌いじゃないですか。でも、俺はあれになりたいとか思っちゃうんですよね(笑)。
ユーキ そこはチャージしといて(笑)。1月生まれの人って口数が少ないから、結果、友達の少なさにつながってると思うんだよね。結果的に1人で考えてる時間が増えるから、その間にねじ曲がっていくんやなって(笑)。
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ジャンルより世代感やバイブス