エドガー・サリヴァン|新生エドサリが作る“共鳴”ポップス

いかに慣れずに東京を見ることができるか?

──1曲目「今夜ステキになって」の歌詞には「公園通り」や「WWW前」、「スペイン坂」といった渋谷を連想させる具体的な言葉が出てきますよね。こういった固有名詞がダイレクトに出てくるというのも、佐々木さんの書く歌詞の大きなポイントだと思います。

エドガー・サリヴァン

佐々木 そうですね。多分、みんなに共感してもらいたいのであれば、こういった固有名詞は使わずに共通項の多い感情の部分を歌詞に書くべきだと思うんですけど、「あなたはこういう経験ありますよね?」というような歌詞の書き方を私はしたくなくて。だって、私が観た景色は私しか見ていないものだし、それがめちゃくちゃ素晴らしいから曲を書きたくなるんだろうし。その人が初めて聴いたストーリーでもそれに共鳴してもらえるような音楽を目指したいと思うんです。

──あくまでも「共感」ではなく「共鳴」であることが重要ですか?

佐々木 うん、そうですね。それが聴いた人が初めて出会う感情だとしても、私が感じたものを疑似体験できるような音楽がいいなと思うんです。だからこそ、私の場合は、ほかの人とは被る要素が少ないであろう固有名詞や数字を歌詞に入れないとイヤなんですよね。例えば、写実的な要素のない映画なんてほとんどないじゃないですか。きっと「みんな、こういうことあるよね?」という再現VTRみたいな映画だったら誰も観ないと思うんです。「個人がいて、その人の感情が動いている」ということを具体的に描くからこそ、その映画にグッとくるわけで。その具体性が欲しいんですよね。

──東京という街が歌詞のモチーフによく出てくるのは、どういった理由があるのでしょう?

佐々木 私はもう東京で暮らし始めて何年も経つけど、いつもこの街に対してビジターでありたいっていう気持ちがあって。常に感受性強くありたいし、ときめいていたいなって思うんです。私は今でも、青山を歩いているきれいな奥さんを見たら「うわあ! すごい!」って思うし、テレビ局を見れば「有名な女子アナさんがあそこに通ってるんだ。ハイクラスー!」って思うんです(笑)。

──ははは(笑)。

佐々木 それがポジティブな感情として常にあるんです。いつでも、東京にはキュンとできるというか。例えば毎年見るクリスマスツリーのイルミネーションでも、「そのとき一緒にいる恋人が違うから」とか、「一緒にいる友達が違うから」ではなく「私、こんなの初めて観た!」くらいの新鮮度を保ちながら1人でも暮らしていきたい気持ちがある。そうやって「いかに慣れずに東京を見ることができるか?」ということをすごく考えていて。

──とにかく主体的でありたいんですね。そして東京という街は、佐々木さんの主体性が強く発揮される街である。

佐々木 そう。だから逆に、東京生まれ東京育ちなのに、とても美しく東京を描写できる小説家の方や映画監督はすごいなと思います。例えば大根仁さんの作品に出てくる東京の描写とか。東京で暮らしながら、みんなが慣れてしまって見えていない東京のよさを描けるところを尊敬しています。

求めるのは「心拍数コミュニケーション」

──話を聞いていると、お二人の音楽に対する向き合い方は非常にプリミティブですよね。だからこそ、先ほどの「共鳴」という言葉に象徴されるようなつながりを求めるのか、こうやって純粋な欲求から生まれた音楽をなぜ人に聴いてもらいたいと思うのか、という点を伺いたいです。

佐々木 自己満足的な音楽は作りたくないんですよね。自分がグッとくる部分を捉えたい初期衝動はそのままに、その「グッ」を同じタイミングで共有できるような「心拍数コミュニケーション」みたいなものは求めていきたくて。

エドガー・サリヴァン

坂本  やっぱり、音楽は人に聴かれることに美しさがあると思うんですよね。僕は、世の中に2種類、いい音楽があると思っていて。1つはCDにもならないような、四畳半で生まれた誰にも聴かれない音楽。それはすごく素敵なものだと思う。でも、そうでないのなら、音楽は人を巻き込む力を持つべきだと思うんです。音楽は「1」か「∞」かどちらかしかないと思う。僕らは2人で音楽を作っている以上、もはや「1」はありえないから。

──確かに。

坂本  それなら、僕らの音楽は人に伝わるべきだし、人と共鳴して情動が生まれるものを作るべきだと思うんですよね。それに今の時代は、「人に受けるポップスを作ろう」と思ってポップを作っても絶対にしょうもないものしか生まれないし、聴き手に見透かされてしまう時代だと思うんです。そういう意味でも、萌ちゃんが自分のグッとくる瞬間を捉えて作り出す音楽は、言葉先行の「ポップ」ではなく、今の時代において本当の意味でのポップなものになると思うんです。

佐々木 それに芸術って、人になじむだけじゃなくて、人を変えてナンボだと思うんですよ。歩き方を変えたり、考え方すら考えてしまう音楽が世の中にはあると思うし、私はそういうものを作りたいと思うんです。教訓じみたものではなくて、「私の考えはこうだけど、どう?」ということを発して、受け取った人に考えてもらいたい。今の私が言うと大それたことになってしまうけど、そこまでやっていきたいなって思います。

ツアー情報

エドガー・サリヴァン「『NEWS』Release Tour 2019 ~KAWARABAN 行脚!!!」
  • 2019年6月12日(水)大阪府 梅田Zeela
    OPEN 12:45 / START 13:15 <出演者>エドガー・サリヴァン / GOODWARP / クアイフ / PJJ
  • 2019年6月22日(土)東京都 shibuya eggman
    OPEN 12:45 / START 13:15 <出演者> エドガー・サリヴァン / スピラ・スピカ
MAJOR 1st E.P.「NEWS」リリース記念イベント情報
  • 2019年6月2日(日)東京都 タワーレコード池袋店
    START 14:00
  • 2019年6月8日(土)東京都 タワーレコード町田店
    START 14:00
  • ※ミニライブ&トーク+サイン会実施予定

ライブイベント情報

Amuse Fes in MAKUHARI 2019

2019年6月1日(土)千葉県 幕張メッセ国際展示場 9~11ホール

OnePlate 番外編 ASIAN SPICY DINNER ロックの日

2019年6月9日(日)東京都 clubasia

YATSUI FESTIVAL! 2019

2019年6月15日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST / TSUTAYA O-WEST / TSUTAYA O-nest / TSUTAYA O-Crest / 渋谷duo MUSIC EXCHANGE / 渋谷7th FLOOR / clubasia / VUENOS / Glad / LOUNGE NEO / SOUND MUSEUM VISION / HARLEM PLUS / LOFT9 Shibuya

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