エドガー・サリヴァン|新生エドサリが作る“共鳴”ポップス

今年3月に佐々木萌(Vo)と坂本遥(G)の2人体制になったエドガー・サリヴァンが、5月29日に新作ミニアルバム「NEWS」をリリースした。

本作にはテレビアニメ「みだらな青ちゃんは勉強ができない」のオープニングテーマとして書き下ろされた「WONDERFUL WONDER」を含む5曲を収録。今まで以上にポップで洗練されたサウンドからエドサリの進化を感じることができる。

音楽ナタリーでは新作を完成させた2人にインタビューを行い、新体制となった現在の心境、楽曲制作の根源、エドサリの音楽で表現したいことなどを聞いた。

取材・文 / 天野史彬 撮影 / 星野耕作

親友と音楽をやっている

──結成4年目のエドガー・サリヴァンですが、5人組から3人組、そして2人組と体制を変化させてきましたよね。この年月の中で、お二人がエドガー・サリヴァンに向き合う姿勢に変化はありましたか?

エドガー・サリヴァン

佐々木萌(Vo) 私はエドガー・サリヴァンとしての活動を始める前に、1人で活動していた時期があるんですけど、5人の時期を経て、3人の時期を経て、今こうして2人になって、不思議と自分が音楽をやる動機が、1人だった頃と同じ場所……初期衝動的な部分に戻ってきた感覚があるんです。なので「変化してきた」とも言えるし、音楽を始めた頃のシンプルな気持ちに「立ち戻っている」とも言えるような気がします。でも、それは「人数が減ったからそうなった」っていうわけでもないんですよね。本当に自然と、音楽作りや物作りの根本に立ち返りたいなっていうモードになってきた感じがします。

坂本遥(G) そもそもは、1人で活動していた萌ちゃんのサポートをやっていたメンバーがエドガー・サリヴァンの最初のメンバーだったので、このユニットが始まる以前から萌ちゃんの音楽は、萌ちゃん1人で完結していたものではあるんですよ。でも、それに対してプロジェクトという形でのチャレンジをしてみたくなって、5人組のバンドになり、それが3人になった。この5~3人時代のエドガー・サリヴァンは、萌ちゃんにとって、自分の中にないものにチャレンジしていく時間だったと思うんですよね。言ってしまえば、「エドガー・サリヴァン」という架空の人物像を作り上げいく時期だったというか。でも、2人になったとき僕自身はもっと人間的に、萌ちゃんと向き合うようになった気がします。

──1対1だと、コミュニケーションもかなりダイレクトになりますもんね。

坂本  そうなんですよね。その中で僕も萌ちゃんと同じように、原点に戻っていく感じがあったというか。僕が最初にサポートをやりたいと思ったのは、「萌ちゃんの歌と曲が好きだ」というすごくシンプルな動機だったんです。今、出会った頃のそういう気持ちに立ち返っている感じはあります。「いい音楽をやりたい!」という、なんの装飾もない気持ちになってる。

──佐々木さんは今、隣にいる坂本さんに何を求めていますか?

佐々木 今回の新作を録音していく中で考えるようになったことなんですけど、前の体制のときは、「この曲ではこういうギターが欲しい」みたいに言葉で言える部分だけをほかのメンバーに求めていたような気がするんです。でも、今は極端に言うと、例え遥がギターを持っていなかったり、私が鍵盤を持っていない状態でも、一緒に物作りをする点で一緒にいることができる存在というか。役割としての存在じゃなくて、もっと人間として一緒に内側に立って作っていくような存在であってほしいと思うようになってきていますね。

坂本  そもそも、僕はこれまでエドガー・サリヴァンにいたメンバーの中でも最初に萌ちゃんと出会っているし、一緒に飲みに行ったりしてた歴も長くて。僕は親友と、大好きな人と音楽をやっている。それが、今のエドガー・サリヴァンに向き合う姿勢としてはすべてですね。これはすごく幸せなことだと思う。

──本当に、「人対人」でやっている感じですね。

佐々木 そうだと思います。

自分がグッときたり、ギュッとなるような音楽を作りたい

──お二人が立ち返ったという原初的な感情をもう少し掘り下げたいのですが、まず、佐々木さんが音楽作りに向かう根本的な動機はいったいどんなものですか?

佐々木 「売れたい」とか「評価されたい」ということではないんです。そもそも私は、ちゃんと勉強してテストでいい点を取ったり、就職活動で人より先手を打って情報収集をしたりするような、言わば真面目な部分が自分の長所だと思っていて。それで、がんばって勉強して大学に受かって、当時は叶えたい夢もあったし、ワクワクした気持ちで北海道から東京に出てきたんです。でも結局、入学した大学で落胆してしまって。大学で、夢もなく不真面目でも、ある程度いい感じにやっている人を見て、「私、がんばって意味あるのかな?」と思っちゃったんですよね。

──なるほど。

佐々木 でも、大学2年生の頃に始めた音楽作りが、真面目に授業を受けていても満たされなかった部分を満たしてくれたというか……それまでの夢を忘れて没頭してしまうくらいにときめくものがあったんです。物作りって、ほかと比較できないことのような気がしたんです。もちろん、売れる、売れない、評価される、されないという話は別にあるけど、でも根本的に物作りはその作品に対して作った人が一生懸命だったらそれでいいじゃないですか。勝ち負けとか、スコアとかじゃない部分で、私が私の100点を出せればそれでいいというか。

──点数や勝ち負けのような、世の中が用意する、ときに不条理な天秤や物差しでは比べられない場所に、音楽を始めとする作品は存在しえるということですよね。

佐々木 うん、そうです。

エドガー・サリヴァン

──坂本さんが、佐々木さんと一緒に音楽をやりたいと思ったときの話も、もう少し詳しく伺いたいです。

坂本  僕が萌ちゃんと出会ったのは、大学1、2年生の頃にやっていた別のバンドで、萌ちゃんと対バンしたのがきっかけだったんです。学芸大学メイプルハウスのAステージだったんですけど、萌ちゃんがトップバッターでお客さんも1人か2人くらいしかない状況で。でも、萌ちゃんは完全にロックスターだったんですよね。天を仰いで、体を振り絞るように歌っていて……その姿がすごく自由でロックだと思ったんです。萌ちゃんって、ポップな存在だと思われることも多いんですけど、根底にあるのは「普段、抑圧されている魂を解放したい!」という意志だと僕は思っていて。それが、萌ちゃんの歌からは見え隠れするんです。それに一緒に音楽を作り始めてからも、萌ちゃんは「自分がグッときたり、ギュッとなるような音楽を作りたい」っていう、その1点だけで音楽を作り続けているように見えて。

──今の坂本さんの言葉について、佐々木さんご自身ではどうですか?

佐々木 私には「自分の好きなものは、自分にしか作れない」っていう感覚があるんですよね。大好きな音楽には恋をするようにのめりこむんだけど、それ以外の音楽を聴くと生意気ながら「私だったらこうするのに」って思っちゃう。

坂本  僕は昔、メロコアバンドをやっていたんですけど、その頃は「あのバンドがやっている感じでやりたい」みたいな曲の作り方しかできなくて。でも萌ちゃんは、「誰とも被りたくない」という気持ちがすごく強いんです。歌詞も同じように、自分が見たものを自分の言葉で表現しようとする気持ちが強くて。そういう部分が、すごくカッコいいなと思います。