DUSTCELL|解消されることのない焦燥感を音楽に 感情を吐き出した2ndアルバム「自白」完成

ボーカルのEMA、コンポーザーのMisumiによるユニット・DUSTCELLが2ndアルバム「自白」を発表した。2020年5月にリリースされ、iTunesアルバム総合ランキングで2位を記録した1stアルバム「SUMMIT」に続く本作には、既発曲の「DERO」「Mad Hatter」や専門学校HALのCMソングとして使用された新曲「命の行方」など全14曲を収録。ジャケットのデザインを含め、“白”をテーマにした統一感のある作品に仕上がっている。音楽ナタリーではEMAとMisumiにインタビューを行い、アルバム「自白」の制作秘話を中心に、2人の音楽観やクリエイティブへのこだわりなどについて聞いた。

取材・文 / 森朋之

初期衝動を詰め込んだ前作

──昨年5月にリリースされた「SUMMIT」は大きな反響を集めました。2019年10月の結成からわずか7カ月で発表された作品ですが、お二人にとってはどんなアルバムですか?

Misumi 初期衝動を詰め込んだという印象がありますね。できあがったものをすべて入れたような作品だったので、曲調もかなり幅広くて。

EMA うん。DUSTCELLというグループを結成して、とりあえず曲を作って、作詞して、それを詰め込んで。曲の世界が1つひとつバラバラなんですよ。青臭いというか、時間が経つにつれて、ちょっと恥ずかしいなという気持ちも出てきました(笑)。

Misumi あまり聴き返すことはないんですが、たまにYouTubeで聴くと、すでに懐かしい感じがしますね(笑)。

──それだけ2人が、「SUMMIT」リリースの頃から先に進んでいるんでしょうね。昨年7月にはWWWで無観客配信ライブ、11月にはLIQUIDROOMで有観客と配信による結成1周年ライブを開催しましたが、手応えはどうでしたか?

Misumi 楽しかったです。1stライブが無観客というのはこの状況ならではだと思うし、なかなかないことかなと。2ndライブもコロナの影響でキャパを絞らざるをえなかったのですが、それでもすごく楽しくて。

Misumi

EMA 僕もすごく楽しかったです。2ndライブはお客さんが入っていたので、ちょっと緊張してたんですけど、ライブが始まったらすぐに楽しくなりました。

Misumi 始まる直前だけ、ちょっと緊張してたよね。

──当然、演出やステージングなども手探りですよね。

Misumi そうですね。LEDを使って歌詞や映像を映したり、いろいろなことを試して。

EMA 基本的に僕らのライブはシルエットのみで、がっつり顔出しをしているわけではなくて。照明や映像で雰囲気を出して、ほかのアーティストのライブとは違う作り方をしたいんですよね。

──目の前に自分たちの音楽を聴いている人がいるという状況はうれしかったのでは?

Misumi そうですね。特にEMAはライブ経験がなかったので、お客さんを見ること自体が初めてだったんじゃない?

EMA そうですね、初めてでした。

Misumi 確かに「こういう人たちが聴いてくれているんだ」という実感はありました。普段はTwitterやYouTubeなどのコメントを見るくらいなので。

──EMAさんも曲に対する感想などをチェックしてますか?

EMA たまに、ですね。普段はあまり見ないようにしています。

Misumi リスナーの声に左右されて曲を作るのは違うのかなと。そこを考えすぎると、あまりよくない気がするんですよ。

“白”で統一した今作

──ニューアルバム「自白」について聞かせてください。前作「SUMMIT」以降も新曲を次々と発表していますが、アルバムの全体像はどのようなものをイメージして制作したのでしょうか。

Misumi 今回のアルバムは曲のトーンを統一しようと思って。なので、「SUMMIT」のあとに発表したのにアルバムに収録していない曲があるんですよ。

──「PAIN」ですね。

Misumi そうです。「なんで『PAIN』がアルバムに入っていないんだ?」というコメントもありましたけど(笑)、どうしてもアルバムのトーンに合わなかったので。全体像としては、「2ndアルバムは白いジャケットがいいね」というところから始まってるんです。前回のアルバムは黒いジャケットだったから、今回は白がいいなという漠然とした思いがあって。

──2作が対になっている?

EMA そうですね。さっきも言ったように、「SUMMIT」は曲の統一性がなくて、青臭い感じがしたんですよね。それで今回は1stと差別化したいという気持ちがあって。DUSTCELLにはグレーや黒、白のような色が似合うと思ってるんですけど、今回は白のパッケージがいいかなと。

Misumi その後、「独白」「albino」という白を連想させる曲を作って。アルバムのタイトルも“白”という文字が付く言葉を探したんです。僕もいっぱい考えたんですけど、EMAから「『自白』はどうですか?」と提案があって、「それがいい!」と。僕もEMAも自分の感情を歌詞に落とし込むことが多いし、そういう意味でもふさわしいタイトルだと思います。

EMA うん。普段は言えないことを歌詞に書き換えることも多いので。

──なるほど。楽曲によって、Misumiさんが作詞・作曲・アレンジをすべて手がけている曲があれば、EMAさんが作詞している曲もあって。どのように振り分けているんですか?

Misumi 僕が作詞・作曲・アレンジまで全部やるときと、トラックだけ作ってEMAに渡す場合が半々くらいですね。

EMA 先にトラックをもらって、それに対して感じたことを歌詞にして乗せています。Misumiさんのトラックには、食器の音やパソコンのキーボードのタイプ音など、生活音がけっこう入っていて。それがヒントになることも多いです。

Misumi 歌詞の内容についてはノータッチですね。何か思ったことがあれば言いますけど、基本的にはそのまま。いつもいい歌詞を書いてくれるので。

K-POPからもらった刺激

──では、収録曲について聞かせてください。1曲目の「DERO」は去年の夏に発表されたヒップホップ調の楽曲です。かなりドープなトラックだなと。

Misumi そうですね。僕もEMAもK-POPが好きで、この曲のトラップのビートや低音を効かせたドロップは、そこから来ています。作詞はEMAなんですが、歌詞にハングルが入ってるんですよ。

──K-POPへのリスペクトを反映させているんですね。ちなみにK-POPに興味を持ったきっかけになったアーティストは?

Misumi それこそBTSとか。最近はNCT 127というグループが好きで。新曲が常に新鮮で、いつも刺激をもらってます。

EMA 僕が最初に興味を持ったのは、PENTAGONのボーカルだったイドンという人で。すごく惹かれて、ソロ活動なども追いかけてました。BLACKPINKも曲の構成が読めなくて、「こう来るんだ」みたいなことが多くて、好きですね。1曲の中で何回も転調したり、曲調がいきなり変わったり。

Misumi うん。「DERO」以外にも、DUSTCELLの楽曲は曲調が変わることが多くて。それはK-POPやボカロを通ってるからだと思います。

──EMAさんの歌詞もエッジが立ってますね。特に「ねえ、先生 あの時胸ぐら掴んだのは何故?」というフレーズは印象的です。

EMA そうですね(笑)。私情になってしまうんですが、小学生のときの担任の先生が嫌いだったので、その人に登場してもらいました(笑)。