dustboxインタビュー|メロディックパンクシーンの未来へつなぐ、結成25周年記念トリビュートアルバム完成 (2/2)

カバーのほうに引っ張られそうになる

──アルバム序盤のNorthern19「Right Now」や04 Limited Sazabys「Smile like a child」を聴くと、先ほどSUGAさんがおっしゃったように、それぞれのバンドのアレンジになっていて、そのバンドの新曲だと言われても違和感がないんですよね。ただ、メロディはしっかりdustboxのものになっている。

SUGA どれもdustboxの曲だけど、ボーカルが全部違うじゃないですか。それがすごく楽しくて、不思議な感覚だよね。

YU-KI 自分たちが普段演奏している曲を別のバンドに演奏して歌ってもらうことで、まったく違う印象を受ける。しかも、そっちばかり聴きすぎてしまうと、自分らのバージョンを忘れるんじゃないかってくらい、カバーのほうのイメージが強くなりますしね。

SUGA たまに「Right Now」とか、カバーのほうに引っ張られそうになる(笑)。

YU-KI わかります(笑)。

──FRONTIER BACKYARDやDALLJUB STEP CLUBのように、メロディックパンクとは異なるジャンルのバンドも参加されています。そういったバンドのアレンジもまた新鮮ですよね。

YU-KI めちゃくちゃいいですよね。

SUGA 感動しましたもん。dustboxは今までいろんなバンドとツアーをしてきたので、ライブに来てくれているお客さんはわかってくれると思うんですけど、今回参加してくれたバンドはみんなツアーに出てくれた人たち。だから、自分ら的にはなんの違和感もなくて。

YU-KI  DALLJUB STEP CLUBのアレンジなんて原曲と全然違うし、そうやってちょっと違うジャンルのアレンジで返ってくるのは面白かったです。

SUGA 本当にそれぞれが違う色を出してくるんですよね。

SUGA(Vo, G)

SUGA(Vo, G)

HAWAIIAN6へのムチャぶり

──カバーする曲のセレクトはそれぞれのバンドにお任せだったんですか?

SUGA こっちから「この曲で」とお願いすることはほとんどなかったです。ただ被ったら困るので、「例えば、やるとしたらどのへんの曲?」という話は全バンドとしました。そこから「じゃあこの3曲の中でどう?」と相談していって。選曲の被りでそこまで苦労したってことはなかったですね。最終的にみんな好きな曲が違っていたし、「好きすぎてできない」というのもあったみたい。特に、「Jupiter」(2008年発売の5thアルバム「Blooming Harvest」収録曲)を選んでくれる人が誰もいなくて。

YU-KI だから、「Jupiter」はHAWAIIAN6にムチャぶりしましたもんね。「誰もやりたがらないんで、お願いします!」って(笑)。

SUGA そうだ!(笑) HAWAIIAN6だけは「『Jupiter』をやってください。お願いします!」って決め打ちしました。

──バンドにとっても、お客さんにとっても大切な曲だと理解しているからこそ、皆さん重荷に感じていたのかもしれませんよね。

SUGA 特設サイトにYUTAのコメントが載ってますけど、すごく愛があふれる文面で。僕はあれを読んで泣いちゃいました。

YU-KI アレンジは本当に大変だったみたいですよ。「全然アレンジできない……」って言ってましたから。

YU-KI(Dr)

YU-KI(Dr)

SUGA HATANOさんともYUTAとも連絡を取っていて、「どうっすか、進んでますか?」って聞くと「あれはムズイよ……」と返ってきましたからね(笑)。

──選曲にもそれぞれのバンドの個性が出ていると思いましたが、何より「13 Brilliant Leaves」(2006年発売の3rdアルバム)や「Seeds of Rainbows」(2007年発売の4thアルバム)、そして「Blooming Harvest」からの楽曲が皆さんの印象に強く残っているんだなという事実が興味深くて。

SUGA その時代の曲を聴いて俺らのライブに遊びに来てくれていたバンドは、その当時の思い出の曲を選んでくれたみたいですね。でも、そこで選ばれる曲がみんな違っていて、ほとんど被らなかったのも面白かった。トリビュートアルバムってどちらかというと、シングル曲やアルバムのリード曲が並んでいる印象が強いですけど、今回はライブで愛されている曲が並んでいて。そこもdustboxらしいのかなと思いました。

──STOMPIN'BIRDに至っては「Seeds of Rainbows」のシークレットトラック「Love」を選んでいるわけですから。

SUGA そうなんですよ(笑)。あれはSTOMPIN'BIRDらしいなと思いました。

新曲「Blinding Light」をど真ん中に配置したワケ

──そんな中、dustboxは本作のために新曲「Blinding Light」を用意しています。

SUGA ちょっと前にリリースしたHAWAIIAN6とlocofrankとのスプリットアルバム「THE LAST ANTHEMS」を制作しているときに、同時に作っていた曲なんです。25年もこんな生活を続けているといいこともあれば大変なこともあったりしたけど、ファンを含めていろんな人に助けてもらえてここまでやってこられた。歌詞の中では「すごく落ち込んでいたり、今はうまくいかないんだけど、また光をくれ」みたいなことを歌っていて、聴いてくれる人と僕らのお互いにとって光になれればいいなと、ライブでみんなで歌うことを想像しながら作りました。

YU-KI みんなで歌うところを長くするか短くするか、けっこう悩みましたよね。

SUGA そうだった。イントロも3回くらい変えた気がするし。

YU-KI いきなり歌から入るバージョンとイントロがあるバージョン、さらにカウントありとなしもありましたし。

SUGA それを最終的にカウントまで抜いていきなり始まるっていう、今までなかった感じになって。

──この曲がほかのバンドによるカバー曲の間に突然飛び込んでくるアルバム構成も面白いなと思って。

SUGA 実際、この構成ってどう感じました?

──もしトリビュートアルバムにご本人が参加するとしたら、1曲目かラストに収録されるケースが多いのかなと思うんですけど、dustboxのトリビュートアルバムは曲の並び自体がライブの流れに近いからまったく唐突感がなかったですよ。この「Blinding Light」からライブ後半戦に突入するぞ、と勢いが増す印象もありますし。

SUGA ああ、よかった。僕らもそこは悩んだんですよ。おっしゃるように、普通に考えたら頭かラストじゃないですか。ただ、これだけのバンドに参加してもらって、僕らが頭を飾っちゃうのはね。「だったらシングルで出せばいいんじゃないの?」ってことになりますし。

YU-KI それに、トリは「Jupiter」だろうなってみんな予想してただろうから、そのあとに新曲っていうのもね。

SUGA 俺らもこのトリビュートアルバムに参加しているって意味を込めて、自然な形でど真ん中に曲を置いた。普通はそうしないかもしれないけど、dustboxならこの構成はありじゃないかなっていう。ライブのオープニングSEに使っている「New Cosmos」をDALLJUB STEP CLUBがカバーしてくれたので、そのあとにうちらの新曲が始まったらライブっぽいだろうなって。まさに今おっしゃってくださったように、「ここから後半戦いくぜ!」という感じになればいいなと思ってこの位置にしたので、しっかり意図が伝わっていてうれしいです。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

これから先の音楽人生は?

──思いがけず25年も続いたdustboxですが、この先の音楽人生についてはどんなイメージを持っていますか?

SUGA ここまで来ると……もうわかんないっす(笑)。

YU-KI そうですよね。バンドを始めたときから先のこととか何も考えてなかったわけですし(笑)。

SUGA 曲を作ることは相変わらず好きだし、ライブも特に最近はどんどん楽しくなっていますし。ただ、体のほうはだんだんついてこなくなってはいますけど(笑)。

YU-KI 特に足腰がね(笑)。

SUGA でも、むしろ声は以前よりも出るようになっていて。むしろ10周年の頃のほうが声が出なくて悩んでいたぐらい。若い頃はカッコつけすぎていたところもあったし、最近はあんまり気負わなくなったのかな。

YU-KI 僕は今もライブ前に緊張して「なんでライブとかやってるんだろう……?」と思うこともあるんですけど、終わったあとは「やっぱり楽しかった!」って強く実感できるから、きっとこの先も変わらない気がするな。

SUGA やっぱり今も緊張するんだ?

YU-KI うん、「家に帰りたい」って思っちゃう(笑)。

SUGA でも、YU-KIはそういうのをあまり表に出さないんですよね。だって、YU-KIが入ったあとの初ライブも……本人はめちゃくちゃ緊張していたのかもしれないですけど、逆に僕とJOJIのほうが緊張していて(笑)。あとでライブ映像を見返したら、YU-KIはすごく冷静にドラムを叩いているのに、僕とJOJIはめちゃくちゃ前のめりでしたから。

YU-KI 僕は前日、眠れないくらい緊張してましたからね。本当に人生初ライブぐらいの感覚でした。

SUGA まあでも……実際みんな歳も取って、ここから病気になる可能性だってある。だからこそ、やれるだけ長く続けたいと思います。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

公演情報

dustbox presents KOSHIROCK GALAXY 2024 25th Anniversary Special 2 Days in TOYOSUPIT

  • 2024年10月11日(金)東京都 豊洲PIT
  • 2024年10月12日(土)東京都 豊洲PIT

プロフィール

dustbox(ダストボックス)

1999年に埼玉・越谷で結成されたバンド。2001年9月に1stミニアルバム「Promise you」をリリースして以降、コンスタントに作品を発表してきた。2010年に東京・STUDIO COASTで開催した結成10周年ワンマンライブを成功させ、2014年7月には結成15年を記念して東京・東京晴海客船ターミナル特設ステージでワンマンライブを行った。2015年3月に YU-KI(Dr)が加入し、2022年9月には通算10枚目となるアルバム「Intergalactic」を発表した。2024年7月に結成25周年記念を記念したカバーコンピレーションアルバム「Timeless Melodies - a tribute to dustbox -」をリリース。10月には25周年ライブを東京・豊洲PITで2DAYS開催する。