dustboxインタビュー|メロディックパンクシーンの未来へつなぐ、結成25周年記念トリビュートアルバム完成

dustbox初のトリビュートアルバム「Timeless Melodies - a tribute to dustbox -」が7月3日にリリースされた。

バンドの結成25周年を記念して制作されたこのアルバムには、dustboxとともにパンクシーンを牽引してきたHAWAIIAN6や10-FEET、ROTTENGRAFFTYといった同世代バンドや、彼らから影響を受けつつ独自の音楽を鳴らすHEY-SMITHや04 Limited Sazabys、Dizzy Sunfistなどの後輩バンドが参加。世代やジャンルを越えた21組がdustboxの楽曲をそれぞれの解釈でカバーしている。

音楽ナタリーでは本作の発売を記念し、dustboxのSUGA(Vo, G)とYU-KI(Dr)にインタビュー。dustboxの25年の歩みや、このタイミングでトリビュート盤の制作を決めた経緯、新曲「Blinding Light」について語ってもらった。

取材・文 / 西廣智一撮影 / 大城為喜

結成25年、ずっと楽しいが続いてる

──dustboxが今年で結成25年という、その事実にびっくりしました。

SUGA(Vo, G) 本当ですよね。いろいろありましたし、「あっという間だったか?」と聞かれたらなんとも言えないですけど、がむしゃらに活動を続けていたら音源もたくさん出していたという。僕らはアルバム1枚作ってツアーを回って、「じゃあ3、4年は何もしなくてもいいか」という感じにはなれなくて。だいたいツアーが終わったらまた次の作品を制作していたので、気付いたら25年も経っていたというのが本音。結成25年という言葉に一番ピンときてないのは僕らかもしれないです(笑)。

dustbox

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──SUGAさんはdustboxを始めた頃、バンドの未来に対してどんなイメージを持っていましたか?

SUGA 最初はとにかく楽しいからバンドやろうぜ!ってことでライブに命を懸けていましたね。すごく下手くそでしたけど熱量だけは人一倍あって。音源を出したいけどどうしたらいいかわからないから、とりあえずデモテープを作ってライブを始めたら運よくレーベルが決まって、とんとん拍子で1stアルバムを出すところまで進めた。で、初めての全国ツアーも40カ所以上回って……そこから止まらずここまで来たので、目の前の楽しいことにそのときそのときで向き合って、ずっとその楽しいが続いている感覚ですね。そもそも、46歳になってもバンドを続けているとは思わなかったですから。YU-KIが入ったのが……。

YU-KI(Dr) 2015年かな。

SUGA そのときYU-KIはいくつ?

YU-KI 30歳ぐらいですかね。

SUGA え、もうすぐ40歳じゃん!

──特にYU-KIさんは途中からdustboxに参加していることもあって、このバンドに対する印象がいろいろ変わったかと思いますが。

YU-KI そうですね。外から見ていたときは、スタジオに週3、4日入って5時間ぐらい練習しているのかなと思っていました。いざ加入してみると全然やってないっていう(笑)。

YU-KI(Dr)

YU-KI(Dr)

SUGA スタジオにとりあえず集まって、機材をセッティングしたら一服して、そこから3、40分しゃべっちゃう。そのあと2、3曲合わせて、また1時間ぐらい話して「もう時間ないじゃん!」って焦るという(笑)。

YU-KI 加入してすぐの頃は曲をたくさん演奏したいじゃないですか。なのに全然そのへん考えてなくて、だいたい「え、やらないんですか?」「いいよ今日は」という会話で終わるんですよ(笑)。たぶん音を出すのは毎回30分ぐらい。あなたたちはずっとやってきたかもしれないけど、俺は一度もやってないんだからっていう(笑)。

SUGA もちろん、そのあとに合宿に入ってしっかり練習しましたけどね(笑)。

──今のお話を聞くだけでも、やっぱりバンドをやっていることが常に楽しいんだろうなと感じました。大変なことも都度都度あったと思いますけど、それよりも楽しさが勝っていたことが25年続けられた秘訣でもあるのかなと。

SUGA そうなのかな。でも、確かにずっと張り詰めたままだとどこかでダメになっちゃったかもしれないですね。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

dustboxにとっての曲作りとは

──先ほど、SUGAさんがこの25年で音源をたくさん発表してきたとおっしゃっていましたが、確かにdustboxはオリジナルアルバム10枚、ミニアルバム4枚にスプリットアルバムやシングルなどもリリースしており、作品数はかなり多いですよね。

SUGA 曲作りは好きなほうなんですよ。もちろん作り始めてめちゃめちゃ悩むときもあるし、みんなで集まって「どうしよう?」と無言になっちゃう時間もあるんですけど。

YU-KI 常に曲を作っている印象がありますよね。レコーディングが1つ終わっても、SUGAさんはもう次の曲を作ってますし。

SUGA 曲作りをやめちゃうと、いざ次に作ろうと思ってもすぐにはできないんで、なるべくネタだけでも貯めているんです。あと、ツアーが終わると燃え尽き症候群みたいになって何も手につかなくなることもあるし、特にバンドを始めた頃は次にやることがないとどうしていいかわからなくなることもあったので、何かしら次のアクションを決めておく。それが僕らの場合は音源なので、曲を作り続ける習慣がついたのかもしれないです。

YU-KI 制作のために合宿に入る時点で、すでにデモが10曲ぐらいそろってますし。

SUGA 「これどうなんだろう?」っていう程度のものも含めて、10曲とか15曲とかね。

YU-KI でも、いつもデモが送られてくるのは合宿の1日前ぐらい(笑)。だから、合宿に入っても「まだ全部聴いてないです」ってことも多くて。

SUGA ああいうのって瞬発力だと思うんで、パッと聴いて直感で「これいいんじゃない?」ってぐらいでいいと思うんです。あんまり前から聴かせるのも反応が気になって怖くなりますし(笑)。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

左からYU-KI(Dr)、SUGA(Vo, G)。

YU-KI 曲を作っていない側の俺とJOJIさんはタバコを吸いながら、2人で「何曲目からやります?」「お前からSUGAに言えよ」「いやいや、JOJIさんから言ってください」という打ち合わせをするわけですよ(笑)。で、そういうやり取りを経て、最終的に残るのが8曲ぐらい。

SUGA 自分の中では、例えばアルバムを作るためにデモを15曲ぐらい用意すると、「これは自信がある」っていうのが3曲ぐらい。そのほかは「この曲、始まり方とかドラムのリズムとかが俺の中でまだわからない」と伝えながら、2人の力を借りてどんどん完成させていく感じです。メンバーに投げてその曲が変化するのも面白いですし。だから、なんだかんだ曲作りっていうものを楽しんでいるんでしょうね。

YU-KI デモからまったく変わってしまう曲もあるし。

SUGA 1人である程度のところまでは作るんですけど、没頭していると途中でわからなくなっちゃうんで。特に曲のアレンジなんて無限だから迷ったら相談する。それがバンドの醍醐味でもありますしね。

タイトルは自然と浮かんできた

──トリビュートアルバムを聴いて改めて実感したのは、SUGAさんはこの25年にわたって普遍性のある楽曲を作り続けていたんだなということでした。いろんなバンドがそれぞれのアレンジでdustboxの楽曲を表現していますが、どの曲も一度聴いたら耳から離れないメロディばかりで、まさに「Timeless Melodies」というタイトルにぴったりな曲が並んでいるなと。

SUGA そのタイトルも僕が決めたんですけど、自分で言うのも変な感じですよね。自分の曲をすげえ褒めてるみたいだし。

YU-KI そこは自信を持ってください!(笑)

SUGA (笑)。もちろん全部の曲が大好きで、すべて自分が産んだ子供みたいな感じなんですけど、今回いろんなバンドにカバーしてもらって改めて「ああ、これっていい曲なんだ」と気付かせてもらえた。そうしたら自然と「Timeless Melodies」というタイトルが浮かんできたんです。

SUGA(Vo, G)

SUGA(Vo, G)

──なるほど。25周年という節目のタイミングにトリビュートアルバムの制作を決めた理由は?

SUGA ベストアルバムを考えたこともあったんですけど、ファンの人はみんな過去のアルバムを持っているだろうし、持ってないにしても今はサブスクで手軽にプレイリストを作れちゃうじゃないですか。野外フェスをやろうかって話もあったんですけど、地元での開催がなかなかうまくいかなくて。そこで、JOJIがトリビュートアルバムのアイデアを出したのかな。

YU-KI そうっすね。けっこう前から言ってましたもんね。

SUGA そう。あるツアー中に「25周年が2年後ぐらいにあるけどさあ」みたいなところから「トリビュートアルバムと言っても俺らにしかできないような内容にしよう」と話して、気付いたら参加バンドが21組になったという(笑)。

YU-KI 20組以上も参加しているトリビュートアルバムってあんまり聞かないですよね(笑)。大体10組前後ですし。

SUGA CDの収録時間とか考えずに参加バンドを決めたんで、「あれ、もしテンポを落としたアレンジが多かったら、1枚のCDに収まらないんじゃないか?」ってあとから気付いて(笑)。でも、蓋を開けてみたらなんとかしっかり1枚に収まったからよかった。パッケージに関しても、今回は昔から僕らのことを知っている人だけじゃなくいろんな人に盤を手に取ってほしいなという願いを込めて、ジャケットにもめちゃくちゃ力を入れています。デザイナーさんといろいろ話し合って、部屋に飾ってもカッコいいと思える1枚に仕上がったんじゃないかなと。

世代を超えた参加バンド、未来につなぐ1枚に

──アルバムに参加する21組をセレクトするのはさすがに大変な作業だったのでは?

SUGA そうなんですよ。実際、もっと参加してほしいバンドはほかにもいたし、「僕らもやりたい」と言ってくれたバンドもいて。できれば今まで関わってくれた仲間全員に参加してほしかったけど、そうなると100組くらいになっちゃうから(笑)。

YU-KI うちらも把握しきれないですよね(笑)。

SUGA だからすごく難しかったですけど、昔っからの戦友みたいなバンドや、よくツアーに誘ってくれるバンド、そしてここ最近で関わりが強くなったバンドを先輩後輩関係なく混ぜていって、この21組になりました。これからも、まだまだカッコいい若いバンドが出てくるだろうし、未来につなげていけるような1枚にしたかったんです。

──参加バンドを見ると、10-FEETやHAWAIIAN6、ROTTENGRAFFTYのようにdustboxと同時期に結成されてここまで生き残ったバンドもいれば、HEY-SMITHや04 Limited Sazabys、Dizzy Sunfistのようにdustboxから直接影響を受けた下の世代、さらにKUZIRAみたいなさらに若い世代もいて、歴史を継承している感じが伝わります。

SUGA そういう意味でも、本当にすごくいい作品になったなと思います。なにせ自分でめちゃめちゃ聴いてますから(笑)。不思議なのが、どのカバーもそのバンドの曲のように聞こえること。確かにうちの曲なんですけど、長く続けているバンドって個性も強いから、しっかりそのバンドのアレンジになって返ってくる。だけどもともとは自分の曲なんだよなって思うと、すごく面白いんですよ。

左からSUGA(Vo, G)、YU-KI(Dr)。

左からSUGA(Vo, G)、YU-KI(Dr)。

──アルバム特設サイトでは各バンドからのコメントが紹介されていますが、「原曲が完成され尽くしているから、アレンジが難しかった」という声が多いですね。

SUGA そうやって褒めてもらえてうれしかったです。僕らも10-FEETのトリビュートアルバム(2022年発売「10-feat」)に参加して、ほかのバンドの曲を再構築することの難しさは知っているので。

YU-KI バンドが作ったものをもう1回壊して作り直すってことは、本当に難しい作業ですからね。

SUGA 僕らはアレンジをけっこう細かいところまでしっかり作り込むタイプなので、そう考えるとなおさら大変だったろうなと思います。