音楽ナタリー PowerPush - ドレスコーズ

“解放”の真意

ドレスコーズがEVIL LINE RECORDS移籍第1弾作品「Hippies E.P.」を発表することにあわせ、ナタリーでは志磨遼平(Vo)への単独インタビューとセルフライナーノーツを公開。三浦康嗣(□□□)、渡部高士、長谷川智樹といったゲストを迎え、ストリングスや管楽器、シンセサイザーなど新たなサウンドを大胆に導入した本作の背景には、志磨の中に渦巻く危機意識や使命感が大きく影響していたという。4月の移籍発表とともに告げた「ダンスミュージックの解放」という宣言は、ドレスコーズ、ひいては自分自身の解放だと彼は語る。

取材・文 / 宇野維正 インタビュー撮影 / 笹森健一

 
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「バンド・デシネ」が完成して覚えた危機感

──レコード会社の移籍、それを公表するタイミングでの「ダンスミュージックの解放」宣言、そして今回の「Hippies E.P.」。環境的にも、音楽的にも、結成から2年目にいきなり激動の季節を迎えているドレスコーズですが、いったい今何が起こっているのですか?

志磨遼平(Vo)

昨年末に2ndアルバム「バンド・デシネ」をリリースしたわけですけど、そのレコーディングが全部終わった直後、ツアーに出る前の時点で僕とベースの(山中)治雄との間で「次にアルバムを作るときは、もう『バンド・デシネ』的な作品は作らないだろうね」って話になったんです。「バンド・デシネ」は非常に完成度が高い、とてもいい作品だったと自負していますけど、その先に僕らが目指していくのは、あの作品のようにオーソドックスなバンドサウンドではないんじゃないかって。そこからメンバーみんなで次作の構想やイメージを話し合う中で出たのは、マイルス・デイヴィスの「オン・ザ・コーナー」やフィッシュマンズの「宇宙 日本 世田谷」のような突然変異的な作品、まったくこれまでの脈略も文脈も無視したような作品を作るべきなんじゃないかって。そこから今回の作品の制作に入っていったんです。

──「バンド・デシネ」のあとのツアーは、いよいよこのドレスコーズというバンドの、美しくてちょっともの哀しいような孤高のアイデンティティを確立した素晴らしいものでしたが、その裏ではそんなことが同時で進行していたんですね。

あのツアーの反応は、ドレスコーズがまだ一度も味わったことのないような甘美なものでした。初めて理解者を得たような感覚というか、集まってくれたみんなが「僕らのドレスコーズ」と思ってくれているのが伝わってくるツアーで。「バンド・デシネ」というアルバムの力がそれをもたらしてくれたんだと思うし、それにはとても興奮させられました。

──それでも、志磨さんはバンドの音楽の変化を求めていた。

志磨遼平(Vo)

それはね、このバンドのポテンシャルを僕は知っているからなんです。正直に言うと「バンド・デシネ」が完成したときに、僕は強い危機感を覚えたんですね。メンバーのプレーヤーとしてのスキルや、音楽を生み出す才能は「バンド・デシネ」のような音楽に留まるものではないんじゃないか。このバンドを結成してから、僕は「彼らの才能を正しく伝えられているんだろうか」という責任を常に感じていて。1stアルバム、2ndアルバムという流れの中で、伝統的なロックンロールスタイルのバンドと語られることが多くなっていくわけですけど、そこで彼らの持っている音楽的なポテンシャルが果たして正しく発動しているのだろうかってことを、僕はあらゆる瞬間において考えてきた。僕の使命は彼らの才能を正しく導いて、それを世の中に知らしめることだから。そのためにも、自分たちがノウハウも知らないような、まったく未知の領域の音楽に踏み出していくべきなんじゃないかって。

ゲストを迎えた理由

──志磨さんが言っていた「ダンスミュージックの解放」というのは、つまり「ドレスコーズの才能の解放」という意味でもあったんですね。

そうです。このバンドがまだ発動していなかったポテンシャルの解放ということです。

──つまり、ここで言う「ダンスミュージック」というのは一般的なダンスミュージックのことではなく、志磨さんにとっては能動性のメタファーのようなものなんでしょうか?

志磨遼平(Vo)

そうとも言えると思います。結局のところ、これまでのドレスコーズの作品は、僕が理解できるフィルターを通して生まれたものでしかなかったんじゃないかって。もっといろんな可能性があったのに、その可能性を見過ごしてきたんじゃないかって。だから次の作品を作るときには、まったくの第三者の視点を入れる必要があると思ったんですよ。

──それが、今作に参加している□□□の三浦康嗣さんであり、渡部高士さんであり、長谷川智樹さんであったわけですね。中でも先日の野音のステージにも参加していた三浦さんの参加は、ある種のショック療法的な大きなインパクトをドレスコーズにもたらしたように思えるのですが。

僕が三浦さんに求めたものは2つあって。1つは、彼のミュージシャンとしての、また人間としての、すべてを俯瞰したようなものすごく客観的な視点。彼は特定の音楽にどっぷりと浸かった原理主義タイプとは対極のような人で。過去のいろんな音楽や文化に対するその独特のフラットな距離感、そして理解度において、自分が非常に共感できる存在として最初に浮かんだのが三浦さんだったんです。もう1つは言葉の操り手としての彼に対するシンパシーです。僕自身、自分の音楽のリズムに日本語を乗せていくという意味で、もっとギアを上げていきたかったんですね。

ドレスコーズ
ドレスコーズ

志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)、山中治雄(B)による4人組ロックバンド。2012年1月1日に山中を除く3名で初ライブを実施し、同年2月に山中が加入して現在の編成となる。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」、2013年11月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「トートロジー」を含む2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発売。2014年4月にキングレコード内EVIL LINE RECORDSへの移籍を発表し、9月に移籍第1弾作品として5曲入りCD「Hippies E.P.」をリリースする。