1作目「CHAOS Z.P.G.」について
──2024年9月にはフルアルバム「CHAOS Z.P.G.」をリリースしました。アルバムの全体像としてメンバー間で共有していたものはどういうものだったのでしょうか?
渡邊 「ライブでこういう曲があったらいいよね」というものを作っていったよね。
江沼 そうそう。ライブをやるとなったら曲数も必要だし、何曲目にこういう曲が来て、こういう曲も欲しいよねという感じで作っていきました。ライブを前提に作ったアルバムという感じ。
──さまざまなバリエーションの曲が入っていて、このバンドの可能性を探っているような感じもありますよね。「こういう曲もできるんじゃないか?」というような。
江沼 それもあったと思います。ちょっとバリエーションが広がりすぎた気もするけど。
渡邊 ライブのために作ったアルバムだったけど、今はもうライブでやらなくなった曲もあるしね。いざやってみると、うまくフィットしないこともあるんですよ。
──ラテンやアフロのテイストはどなたが持ち込んだものなのでしょうか?
江沼 俺だと思います。今もライブとレコーディングには、パーカッションに参加してもらっているんですけど、パーカッションが入るといわゆる普通のロックのスタイルからはみ出していくんですよね。僕はアフリカの民族音楽が好きなんですけど、そっちに行きすぎるとおどろおどろしくなってしまう。メロディにうまくハマるようなアレンジを考えたいとは常に思っています。
──DOGADOGAの場合、たとえアフロビートを参照したアレンジだとしてもフェラ・クティのようなナイジェリア産のものではなく、独自のフィルターを通して表現したものから影響されている感じがしますよね。例えばTalking Headsやじゃがたらのように。
江沼 じゃがたらは大好きですし、音作りの参考にしています。アフリカ音楽とかダブみたいな土着的なものも好きなんですけどね。でもそっちにはそっちで深い沼があって、帰って来れなくなりそうなので(笑)。
えっ、村八分の曲にもあるんですか?
──前回のアルバムはさまざまなバリエーションの曲が入っていましたが、今回のEP「あっ!」の曲のテイストはけっこう絞り込まれていますよね。
江沼 だいぶ絞りましたね。EPということで、いろんな側面を見せるというよりも、1つテーマを決めて、そこに向かった作品を作ってみようと考えていました。1stはわりと音楽的な知識がある人がハマってくれる感じだったと思うんですけど、今回はそういうものではなく、パッと聴いたときにすぐ入ってくるキャッチーなものにしようと心がけました。
──あと、前作以上にテンションが高いですよね。
江沼 ああ、そうですか?
古市 高いですよ(笑)。
渡邊 うん、高いと思う。
──6曲を全力で走り抜けるような感じがありますけど、江沼さんは曲を作るうえであまり意識していなかった?
江沼 意識してない……かもしれないです。前のアルバムを作った段階ではライブも3回ぐらいしかやってなかったし、アルバムのテンション感も探り探りだったんですよ。だからこそ曲の世界観を押し出すような作品になったわけだけど、その後ライブを重ねることでDOGADOGAらしいテンションをつかみ取ってきたのかもしれないです。
藤原 悦に入らない感じというか、明るくてオープンなものになっているなと思います。
──前のアルバムはリファレンスが見える感じがするんですよね。この曲はTalking Headsっぽいな、これはThe Pop Groupっぽいなとか。でも、今回はそういうリファレンスがあまり見えない。文脈を意識せず、テンション高く突っ走っている感じがします。最高にカッコい日本語のロックンロールアルバムだと思うし、痛快でした。
江沼 ありがとうございます。もしかしたら今回はディレクターがいないことも関係してるのかも。
渡邊 確かにそこも前作と変わった要因だよね。
江沼 メンバーの特性とか勢いがそのまま出てる気がしますね。突き抜けているというか。
──「俺らのノリのパンクバンドを組もう」という原点に戻ったような感覚もあるんでしょうか?
江沼 ああ、その感じに近いですね!
──ちなみに「あっ!」という今回のアルバムタイトルは村八分(※1960年代末~70年代初期、京都を拠点に活動していた伝説のロックバンド)の名曲から付けたのでしょうか?
江沼 えっ、村八分の曲にもあるんですか?
──そうなんですよ。「CHAOS Z.P.G.」にも「PYG」という曲が入っていたので、てっきり村八分をもじっているのかと思いました(※PYGは1970年代初期に活動していたロックバンド。沢田研二や萩原健一が参加)。
江沼 いやあ……知らなかったです。「あっ!」というタイトルを付けたあとに調べてみたらけっこうあるんですよね。同じようなタイトルの作品が(笑)。
藤原 独創的なつもりで付けたんですけど、意外とあったという(笑)。
江沼 おそらくどのアーティストも思いは一緒な気がするんですよ。曲名にあまり意味を持たせたくないんだと思います。
──なるほど。歌詞を書くうえでも、それぞれの曲にあまり意味を持たせたくない?
江沼 DOGADOGAの曲にはその感覚がありますね。「こいつ、何を歌っているんだろう?」というものをやりたいんです。DOGADOGAで唯一決まってるのはそこかな。言葉のセンスは妙に昭和っぽいもので統一されているけれど、その奥に何かあるかというと、何もない。ただ、「何かあるのかも」と思われるのも嫌いじゃないんですけどね。
──とはいえ、思わせぶりな歌詞にはしたくないんですよね。
江沼 そうそう。「何か意味があります」というポーズは取らないようにしています。
──今回の収録曲「ハイティーン・ストップ」では「ハイティーン・ストップ!」というフレーズが繰り返されますけど、どういう意味なんだろう?と検索しちゃいましたよ(笑)。
江沼 ふふふ(笑)。意味がないんですよ。メンバーもいまだに言いますからね。「ハイティーン・ストップってどういう意味?」って。でも、そのフレーズをみんなで勢いよく歌ってるところがパンクだなと思っています。
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