ナタリー PowerPush - DOES
時代とバンドの閉塞感を打破した待望ニューアルバム「MODERN AGE」
シングルじゃない曲のほうが濃い
──そして曲は毎回のことではありますが、潔いエンディングの曲ばかりで。簡単に言うと1曲が短い(笑)。
ワタル 結構、スタンダードな曲の構成を踏襲してて。単純っちゃ単純なんですけど。そんくらいでいいと思うんですよね。THE BEATLESにしてもそうだし、VAMPIRE WEEKENDみたいな最近のバンドにしても大体そんな感じだし。
──世の中には2分でもワケわからんことやってる曲もあれば、2分でポップソングにできてる曲もあるし。
ワタル そうなんですよ。2分でポップソングやってるって、俺、すげぇなぁって、思うんすよね。「イマジン」なんて、2分何秒ですよ。それ、わかったときに「うわー! これだ!」と思って。「時間と空間を曲げなければいけない」って、なんか思っちゃって(笑)。
──(笑)。それはポップソングの極意かもしれませんね。
ワタル オルタナとかシューゲイザーとか通ってるから、今回は逆にモータウンサウンズであったりとか、短いのに「何? この質量?」とか「しょっぱなから濃すぎるだろ!」みたいな曲にも挑戦していきたいと思ったし。
──確かに「天国ジャム」はモータウンっぽいですね。
ワタル うん。ガチガチのモータウンじゃないですけど。ガキの頃、ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」とか、あの辺聴いてたのがずっと残ってるのかもしれないですね。
──そことはまた違う流れの中盤の「ユリイカ」「神様と悪魔と僕」「群青夜」もいいですね。
ワタル そうですね。濃いですね。シングルじゃない曲のほうが濃いいんですね、どっちかっつったら。構成は単純なんだけど、作り方は複雑ですね。音の配置とか選び方とか、まずその辺からアプローチ変えたんで。キーボードも入れてるし。
──タイトルも良くて。よくロックンロールの常套句で「悪魔に魂を売る」って言いますよね。でも、この歌詞は並列で。そこが面白いなと。
ワタル うん。最初のタイトルは「神様と悪魔」で、LOVE対HATEとかGOOD対BADとか、そういうふうな対比をイメージしてて。洋楽には神様とか悪魔みたいな、ロックでよく歌われるアイコン的なものがあるけど、日本人にはそういう概念はあんまりないですからね。仏だし。いいことがあるから悪いことあるし、悪いことがあるからいいことがより良く思えるし、その間に入ってるのは自分だし、っていうイーブンな位置で捉えたら、「僕」が必要だったんですね。「僕」がそういうことを考えてるんです。「いいこともあるけど悪いこともあるし、まあどっちでもいいじゃん」「どうにもできないやろ」みたいな。
──そこに今のDOESやこのアルバムのスタンスが出てる気がします。
ワタル そうですね。閉塞してるけど、頼りない政府っていうのもみんな知ってるし。不況だけど、不幸ですか? っていうと少なくとも自分はそうでもないし。まあ「どっちでもいいよ」みたいな。自分とか、自分の手の届く範囲の人は少しでも幸せに楽しく生きていけたらいいやんか、そういう気分。ただ、ある程度はやんなきゃ、みたいな。
──時代を言い訳にしちゃいけない、と。
ワタル そうなの。やっぱちょっと過保護というか。バイ菌も食べないと身体強くなんないよ。腕立てしないと筋肉付かないよ。食って飲んでるだけじゃダメだ、走んないと遠くまで行けねぇぞ、って。そういう人間の基本を忘れてるんですよね。子供はそういうことわかんないですけど、大人が教えてあげられるのか? つったら、大人も最近アホだし、しょうもないの多いしね。だからそういうのを僕らの世代とかが、上からじゃなくて同じ立場で「だって同じでしょ? ガンダム好きでしょ? 何やってんのよ?」って言ってあげる。そういう感じって大事だと思うんですよね。
人として生きていく上で重大な出来事だった
──危機を乗り越えてアルバム1枚を完成させたバンドは、なんか説得力ありますね。
赤塚ヤスシ(B) ロックバンドをやってるからとかじゃなくて、全然違う状況だったとしても、人として生きていく上で重大な出来事だったし。いい意味で本当に考えさせられたというか。逆に何も考えてなかった時期もあったり、逃避した時期もあったし。だからこそ戻ってきてからの流れがある。前に進めて良かったって感じですね。
森田ケーサク(Dr) 俺の場合は1回抜けてから、戻ってきて最初のアルバムっていうのもあるんですが……。
──達成感のある曲はどれですか?
ケーサク 「スーパー・カルマ」ですかね。正直に言うと苦手なんですけどね、こういうリズムは。俺は8ビートのロックのドラムが得意なほうなんで、いろいろ大変だったんですけど、そういう部分でも3rdアルバムまでで基礎体力付けた上に、面白い肉付けをしていって。また、自分の技術や音楽面だったりも、ちょっと強くなったっていう感じはあるんで。ま、素直に通して聴いたときに、「これはカッコいいアルバムだ」っていうのが自分で見えたんで、良かったですね。
──そして、現在進行中のツアーなんですが、新曲もやってるんですよね。
ワタル ちょこっとだけ。「神様と悪魔と僕」「サイダー・ホテル」「ロッカ・ホリデイ」とかかな。その3曲をまわしてる。
──タイプの違う3曲ですね。
ワタル その3つはね、3人でやっても大丈夫な曲だから(笑)。
──(笑)。客層の広がりは実感しますか?
ワタル 年齢層は広いというか、厚くなってますね。
──明らかに「バクチ・ダンサー」で盛り上がるとか?
ワタル いや、フェスでは「明らかに」だったけど(笑)、ワンマン来る人は、関係なくみんな喜んでくれててうれしいですね。
──でも、やったことに対する手ごたえをこんなに感じてるバンドは珍しいんじゃないかと思うんですけど。
ワタル そうっすね。少しずつだけど、着実に前に進んでます。
──アルバムがリリースされた後、1月からのツアーはどんな編成に?
ワタル まぁ、アルバムの音が明らかに3人じゃないですからね。そんだけで面白いと思います(笑)。もうね、3人へのこだわりはあんまりなくなってきてる。逆に新しいことしたいっていう気持ちが強いですね、今は。
──DOESってバンドはホントに人の人生みたいです。
ワタル そうですね。性格は変わんないけど、形は変わりますよ。
DOES(どーず)
2000年に結成された、福岡出身の3ピースロックバンド。クラブイベント出演や音源制作を中心に、精力的な活動を展開する。数度にわたるメンバーチェンジを経て、2005年8月より現在の編成となる。2006年には活動拠点を東京に移し、初の全国ツアーを敢行。同年9月にはシングル「明日は来るのか」でメジャーデビューを果たす。その後も活発なライブ活動とリリースを展開。2010年4月にリリースしたシングル「バクチ・ダンサー」は10万枚を超えるヒットを記録し、ファン層をさらに拡大した。