ナタリー PowerPush - doa
“コンチクショー”が支えた音楽人生 徳永暁人が語る「WANTED」への道のり
クリエイターは鈍感力が必要
──会社経営者とかに話を聞くと、最近の若者について「器用だから周りと合わせることはうまいけど、個性がない人ばかり」と言う人が多いんですよ。「空気読む必要ないのに」って。
なるほどね、それはよくわかるな。確かに飛び抜けるのは怖いし難しいけど、クリエイターは鈍感力が必要だと思うんですよね。
──そうだと思います。だから徳永さんの話を聞いていると、こういうことかと腑に落ちます。
もちろん僕だって怖いと思うことはあるけど、周りに何を言われようと、間違っていようと、自分が思ったことを貫く勇気がないといけないと思う。でも大人になれば自分を曲げることも必要だし、難しいところですね。どこまで自分を出してどこで我慢するかっていうのは、今でも僕のテーマかな。
──音楽を作る上で、誰に向けてということは考えますか?
大人になって、新しい音楽を聴かなくなった人たちに聴いてほしいんですよ。子供の頃は好きなバンドの新譜が出るとすっごいうれしかったのに、最近はその新鮮さって忘れている気がして。同世代の友達は昔の音楽ばかり聴いていて、「新しい曲に刺激を感じなくて」なんて言われるんです。そういう人に、僕の曲が気に入っても気に入らなくてもいいから、まず聴いてほしい。どこかワンフレーズでもいいから響くものがあれば、気持ちが若返ったりするんじゃないかなって。
──では若い人に向けてはいかがですか?
もちろん聴いてほしいよね、僕も若い頃は大人が作った音楽を聴いて、刺激を受けて育ってきたわけだし。僕の曲で「こういう音楽もあるのか」って少しでもいいから感じてくれれば、自分が今日までやっていた意味があるのかなって思える。10代の人たちにとって、僕の年齢ってちょうど学校の先生と同じような世代なんですよ。だから僕が何を伝えられるかと考えると、価値観が違ってもいいし、「ウゼー!」とか言われてもいいから、何かを教えてあげることなのかなと思う。若い人たちにしかないパワーは間違いなくあるし、そのエネルギーを引き出せるのは我々だと思うから、もっとコミュニケーションをとるべきだなって。
音楽の一番の練習は聴いて感動すること
──「スクールライブショー」(NHK)という高校生アマチュアバンドの番組では審査員もやられていましたよね。
はい。すごく感じることが多くてね、単純に彼らの気持ちがわかるんですよ。僕は17歳でピアノを始めて、音楽学校に入ったら周りはエリートで、挫折ばっかりだった。シンガーになりたくてもなれなくて、30代になってようやくバンドを作って歌えるようになった。何が悪いのか当時はわからなかったけど、今ならわかることもあるんです。それを教えてあげられたらいいなと思っていて。
──挫折続きの当時、何が徳永さんを支えていたんでしょう?
「コンチクショー」ですよ。何がなんでも音楽で食っていこうって思ってたから、失敗しても恥かいてもいいやと思ってたし。自分に自信なんてないから山ほど練習するし、曲も書かないと気が済まない。スポーツやってる人でも仕事でも、そういうパワーを借りて進んでいくのも1つの手段ですよね。
──では若いミュージシャンに向けて、徳永さんからアドバイスはありますか?
音楽って何?と聞くと、ギターがどうとか発声がどうって話になりがちだけど、それはすごく端っこの話。本質は、心が動くかどうか。僕がかつて音楽学校で失敗したのは、それを忘れたからなんです。流行とか人の意見で頭でっかちになって、理論では曲が作れるようになったけど人の気持ちを忘れてた。フラれたときはどれほど悲しいか、幸せな気分はどんなだったか、それがわからなくなっていた。音楽は気持ちを表現するツールでしかないんです。その本質を絶対に忘れちゃいけない。売れるメロディなんてないですよ、大切なのは気持ちが入っているかどうか。この歌で元気になってほしいとか、これで大切な人に思いを伝えたいとか、気持ちが入っていれば絶対にいい曲ができるんです。でもね、きっと一度は忘れて頭でっかちになっちゃうものなんですよ。
──徳永さん自身もそれを忘れてしまっていたと。
そうですね。
──なぜその本質を思い出したというか、気付けたんでしょうか?
音楽を聴いても泣けなくなったんですよ。昔はいちいち感動していたのに、自分が音楽を作れるようになった頃に、心が動かなくなった。それで1日の8割は曲を作っていたのをやめて、ひたすらいろんな音楽を聴いてみたら、すごい曲が山ほどあったんです。僕の苦しみや悩みを解決してくれる音楽は、僕が作った曲じゃなかった。それを知って愕然としましてね。だから、音楽の一番の練習は聴いて感動することだと思う。音楽が自分の心にどう届いてくるかを知ることが基本。食事だって、食べない人が作ったっておいしくないでしょ。東京の全部の飲食店に行けば、涙するほどうまいものに出会えると思うんですよ。
──おいしい味を知らない人においしいものは作れないですからね。
そうそう、ラーメンを食べたことない人には、絶対においしいラーメンなんて作れないじゃないですか。これはどんな仕事にも言えることですよね。
10年で一息ついてる場合じゃない
──では最後に、10周年を迎えたdoaとしても徳永さん個人としても、今後の目標を教えてください。
まだまだスタートだと思うんですよ。この前来日したポール・マッカートニーとかを見るとね。
──確かに、あの歳で現役ですからね。
10年で一息ついてる場合じゃないって思いますよ。だから、振り返らないようにしたい。突っ走り続けて、気が付いたら「こんなに経ったんだ!」って思いたい。日本にも尊敬する先輩はたくさんいるからその背中を追っかけていきたいし、若い人たちともコミュニケーションをとって引っ張っていける存在になりたいですね。
- ニューアルバム「WANTED」/ 2014年1月22日発売 / GIZA / GZCA-5260
- 3059円 / GZCA-5260
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収録曲
- GIMME FIVE
- Something
- テキサスホールデム
- 誰よりも近くにいるのに
- Bring Me Back My Freedom
- WANTED
- TO BE FREE
- Rock'n'Roll Life
- コンビニマドンナ
- クライマー
- I'll Take You Anywhere
- 連絡はナッシング
- ライブ情報
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doaプレライブ "unlock"2014
- 2014年1月31日(金)
大阪府 hillsパン工場
- 2014年1月31日(金)
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doa LIVE Tour 2014 -WANTED-
- 2014年2月8日(土)
愛知県 ElectricLadyLand - 2014年2月15日(土)
福岡県 DRUM Be-1 - 2014年2月22日(土)
大阪府 umeda AKASO - 2014年2月28日(金)
宮城県 仙台MACANA - 2014年3月2日(日)
東京都 日本橋三井ホール
- 2014年2月8日(土)
doa(どあ)
吉本大樹(Vo)、大田紳一郎(Vo, G)、徳永暁人(Vo, B)からなる3ボーカルバンド。2004年に徳永を中心に結成し、同年7月にシングル「火ノ鳥のように」でメジャーデビュー。メンバー全員がメインボーカルを担当するスタイルで、叙情的な楽曲と美しいハーモニーを武器に活動している。ユニット名は吉本大樹(大樹)のd、大田紳一郎(大田)のo、徳永暁人(暁人)のaからとられたもの。これまでに15枚のシングルと7枚のアルバムをリリースしており、デビュー10周年にあたる2014年の1月22日に8thアルバム「WANTED」を発表する。