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“コンチクショー”が支えた音楽人生 徳永暁人が語る「WANTED」への道のり

原動力は「コンチクショー」

──今回のアルバムは硬派な男のロックという感じで、どの曲もすごくカッコよかったんですけど、急に「コンビニの女の子がかわいい」みたいな歌(「コンビニマドンナ」)があって驚きました(笑)。

徳永暁人(Vo, B)

あははは(笑)。やっぱり人間らしい曲も歌っていたいんですよ。大人の生活ソングって呼んでいて、日々感じることを歌にしようぜって。「テキサスホールデム」はまさに生活から生まれた曲。これはポーカーのルールのことで、あるとき友達の家で初めて知ったんです。やってみたらすごく面白くて、人生も同じようなもんだよなって。テクニックがあるようでいてやっぱり運だし、一度勝ったからって次も勝てるとは限らないし。サビは「Wow Wow」って言ってるだけなんだけど、これはポーカーで負けたときの雄叫びです。

──(笑)。負けたときは実際にそんな声を?

「ぐわああ!」「うおおおお!」って感じでした。ライブでも一緒に叫んでほしいですね。

──ちなみに、徳永さんが歌を作る原動力はなんですか?

「コンチクショー」ですかね。自分に対してもそうだし、もちろんうれしいときもありますよ、「うわ、かわいいなコンチクショー!」って。皆さんもどこかで同じように感じているはずだし、この12曲の「コンチクショー」の中にきっと共感してもらえるものがあると思います。

──「コンチクショー」を歌にすることで発散させるんですね。

そうですね。だからラブソングを書くのは、伝わらない思いっていう典型的な「コンチクショー」ですよ。僕が音楽を始めたのは、好きな子に思いが伝わらなかったからなんです。それをずっと引きずっているからこそ、届かないものを歌にしたいなと思っていて。口で上手に言えたら音楽やってないですよ(笑)。

──歌詞にすれば書けるというか、届けられる気がする?

そうそう、でも本当は届かないんだけどね(笑)。まあ言わないよりはいいかなって。

──好きな人に歌ってあげたりもしたんですか?

ああー、そういうクサイことできたらもっと違う人生歩んでたかな。暗い部屋にこもってコツコツ音楽なんて作ってないですよ!

──なるほど(笑)。では「コンチクショー」が出てきたときは、そこからどう音楽にするんですか?

まずはiPhoneのアプリで録音してストックするんですよ。街を歩きながら頭に浮かんだメロディや詞を吹き込んでおく。それがもう1000くらいありますよ。電話を持ってフンフンフン♪って歌ったりつぶやいたりしてるから、ちょっと恥ずかしいんですけどね。だから人が多いときは、トイレの個室で録ったりしてます。

──それはそれで……。

そうですね、個室からそんなの聞こえてきたら余計怖いですね(笑)。

10年間でわかってきた志向や趣味を壊してやろう

──では例えば、「連絡はナッシング」はどこから降ってきた言葉なんですか?

どこからですかね? ……あっ、思い出した! その曲は倉木麻衣さんのライブに行くときに、道に迷って歩きながら録ったんだ。間違えて1つ前の駅で降りちゃってねえ。なつかしいなあ。しかも不思議なことに、デモ曲を作ってスタッフにメールしたら、この曲だけは誰からもなんのリアクションもないんですよ。届いてるか不安になって後日聞いてみたら「『連絡はナッシング』って曲だから、返信しなくていいでしょ」って。いまだになんの連絡もないまま、アルバムに収録されました。

──あははは(笑)。ではそれだけ日々ストックしている中から、収録する曲はどう選ぶんですか?

録音したものから、定期的に選んでデモまでは作るんですよ。そこからセレクトしますね。でもiPhoneで100個録っても、使うのは2つくらい。あとは日々の排泄物のように吐き捨ててます。

──そうした作り方は昔から変わらず?

基本的にはそうですけど、できるまでのスピードはかなり上がりましたね。今までは、みんなで話しながら長時間かけて作ることも多かったんです。でも今回は、例えば「Bring Me Back My Freedom」は吉本が歌詞を書いたので、曲にはめ込む作業は彼を部屋に閉じ込めてやってもらってたんですよ。僕が3時間くらい遊んでたら完成したので、チェックしてよくないところだけを変える。ある程度自由にやってもらうことによってすごく彼らしい作品になりましたよね。

──任せることが多くなった?

そうそう。10年やってきた中で信頼感もあるし、任せてもこれくらいのものができるっていう感覚も共有できるようになった。幸いなことに、彼らも僕の言うことをちゃんと理解してくれますし。

──逆に、昔は全部自分でやっていた?

そうですね。「マイクにあと5センチ近づいて」みたいなことまで言ってた。逆に、10年間でわかってきた志向や趣味を壊してやろうとも思うんです。例えば吉本は上を向いて歌うことが多くて、そうするとハイトーンがきれいに録れるんですね。だからあえてマイクを低めにしたり(笑)。

──常に新しいものを取り入れていくんですね。

うーん、というよりね、僕は単純に忘れっぽいんです。いつも今しか考えてない。「前はマイクの位置が違いましたよ?」とかスタッフに言われても、「そうだっけ? でもこのほうがいいじゃん」って。ほかのアーティストさんと作るときも、その人の音楽性を踏まえてあえてこの路線で、みたいな計算はできないんです。

──足並みをそろえて合わせるというより、自分が思ったことをバンと出すと。

そうですね。僕が最初にB'zさんとやったときは、お2人がハードロック志向の強い時期だったんです。でも僕がレコーディングに入ったときに、まず打ち込みビートを流して、チョッパーベースを弾いたりしちゃった。過去のB'zさんの流れを気にする人だったら絶対やらないんだろうけど、僕は全然気にしてなくて。そのときは却下になりましたけど、しばらくして「あのときの感じでやろうよ」って言ってくれてできたのが「ultra soul」なんです。自分で言うのはおこがましいけど、少しでもいいエッセンスを与えられていたらいいなと思いますね。

ニューアルバム「WANTED」/ 2014年1月22日発売 / GIZA / GZCA-5260
3059円 / GZCA-5260
収録曲
  1. GIMME FIVE
  2. Something
  3. テキサスホールデム
  4. 誰よりも近くにいるのに
  5. Bring Me Back My Freedom
  6. WANTED
  7. TO BE FREE
  8. Rock'n'Roll Life
  9. コンビニマドンナ
  10. クライマー
  11. I'll Take You Anywhere
  12. 連絡はナッシング
ライブ情報
doaプレライブ "unlock"2014
  • 2014年1月31日(金)
    大阪府 hillsパン工場
doa LIVE Tour 2014 -WANTED-
  • 2014年2月8日(土)
    愛知県 ElectricLadyLand
  • 2014年2月15日(土)
    福岡県 DRUM Be-1
  • 2014年2月22日(土)
    大阪府 umeda AKASO
  • 2014年2月28日(金)
    宮城県 仙台MACANA
  • 2014年3月2日(日)
    東京都 日本橋三井ホール
doa(どあ)
doa

吉本大樹(Vo)、大田紳一郎(Vo, G)、徳永暁人(Vo, B)からなる3ボーカルバンド。2004年に徳永を中心に結成し、同年7月にシングル「火ノ鳥のように」でメジャーデビュー。メンバー全員がメインボーカルを担当するスタイルで、叙情的な楽曲と美しいハーモニーを武器に活動している。ユニット名は吉本大樹(大樹)のd、大田紳一郎(大田)のo、徳永暁人(暁人)のaからとられたもの。これまでに15枚のシングルと7枚のアルバムをリリースしており、デビュー10周年にあたる2014年の1月22日に8thアルバム「WANTED」を発表する。