音楽ナタリー Power Push - DJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ

EDM、アイドル、ボカロを横断する彼が見た各シーンの現状

テキサム、現在のEDMシーンを語る

──ところでテキサムさんは、現在のEDMシーンをどう見てらっしゃいますか?

盛り上がりのピークは過ぎた感じですよね。むしろ「EDMなんて、もう古いよ」って言う人も増えてきて。僕自身は今でもEDMが大好きだし、これからもやり続けたいと思うんですけど、やっぱりジャンルとして悪目立ちしてる部分もありますからね。

──EDM=チャラいというイメージも定着していますし。

そうなんですよね。でもEDMって、それこそカップヌードルの容器じゃないですけど、本当に緻密な計算のうえに成り立ってる音楽だと僕は考えてるんですよ。つまり、みんなを盛り上げるためにはどうしたらいいか、その一点を突き詰めた結果が、あの形なんじゃないかと。それから、EDMの中にもビッグルームハウスやコンプレクストロ、エレクトロハウスとか、たくさんのサブジャンルがあるんですけど、それを知らずに一括りに「EDM終わったよね」と言うのはまだ早いと思うんですよ。あんなふざけたリードシンセでも作ってる側はマジだし、あんまりバカにしないでほしいなって(笑)。

──作り手は真剣なんだぞと。EDMのチャラさは、箱やそこに集まるお客さんに由来する部分もあるでしょうしね。

確かに。ただ、チャラ箱であってもDJの技術はものすごく高いんですよ。ナンパしに来てる人は聴いてないのかもしれないけど、「なにそのドロップ!?」「みんなうますぎじゃないの!?」ってうなりますよ。そこが理解されてないっていうのはあると思いますね。よくよく聴けば、EDMはすごい進化を遂げているのがわかるはずなのに。あと、EDMは主にインターネットで、しかもなんだかよくわからないままに広まっちゃったんですよね。だから音楽業界の人でも、「EDMっぽく」「EDM調で」みたいなオーダーをしてくる方がいるんです。でも、僕からしたら「何それ?」っていう感じで。

──とりあえずシンセを入れればいいのかって。

そう。しかもそのシンセも、トランシーなシンセなのか、あるいはダブステップに寄ったワブルベースなのか、わからないんですよね。その人が想定しているEDMがどんなものかわからないので。だからすごい便利な言葉になっちゃってるんですけど、それならいっそ開き直って「EDMというのは音楽のジャンルではなく文化である」と、このアルバムで宣言しちゃえと。つまり、EDMは「楽しければそれでいい」という文化であって、「KAWA-EDM」はその文化にのっとった“かわいいアルバム”だよ、っていうのをやりたかったんですよ。

ラウドロック、EDM、アイドルの共通点とは?

──テキサムさんの音楽的なルーツはスクリーモなどのラウドロックですが、そのラウドロックとEDM、そしてアイドルをつなぐ共通項みたいなものはあるんですか?

あえてオノマトペで表現すると「ひゅー、ドカーン!」ですかね。いわゆる爆発力。溜めに溜めてからの「ドカーン!」がでかければでかいほどいいっていうのが、僕の音楽における1つの基準で、スクリーモもEDMもそれを完璧に満たしてるんですよね。どちらもサビやドロップで大きな爆発が用意されている音楽なので。いかに長嶋さんになれるかが決め手になるというか。

──長嶋……茂雄さんですか?

DJ'TEKINA//SOMETHING

はい。「バァッといってガーンと打つんだ!」みたいな。ホントこれ大事なんですよ。理屈ではなく、感覚に訴えかける感じ。僕をそういう音楽に初めて連れ込んでくれたのはMetallicaの、あまり評判のよろしくない「St. Anger」というアルバムなんですけど、1曲目の「Frantic」の爆発力に圧倒されて、「俺のやりたい音楽ってこういうのだ!」って思って。そこからSaosinやStory of the Yearといったスクリーモバンドに出会って、その先で見つけちゃったのがEDMなんですね。もうね、こんな爆発力しかない音楽はない(笑)。

──確かに(笑)。スクリーモとEDMには爆発力という共通点があるとして、アイドルは?

いや、すごいですよアイドルの爆発力も。アイドルのライブには強烈なエモさがあって、EDMでドロップが鳴った瞬間と一緒で、みんなが一致団結できるタイミングが絶対にあるんですよ。そこではお客さんが主役になれる。一番わかりやすいのがコールですよね。つまりそこにいる人間全員が現場を作ってる。ライブだけでなく握手会とかの接触イベント1つとってもそうなんです。これはアイドルの現場に行かないと絶対にわからないことなんですけど。

──どちらかというとお客さんが爆発してる。

そうそう(笑)。あと、デビューしてから売れるまで、発生してから大きくなるまでの速度もとんでもないじゃないですか。ベビメタちゃんにしても、でんぱ組さんにしても、爆発的にマスに広まっていく。いろんな音楽を取り入れて、いろんな層を取り込んで、人間も爆発させることができる。そのアイドルの爆発力って、ほかのどの音楽ジャンルも持ってない特殊なもので、それをEDMと結びつけたら面白いに決まってるじゃん。と、合点がいってしまったのも、僕をこのアルバムの制作に駆り立てた大きな動機の1つですね。

リミックスアルバム「KAWA-EDM」 2016年5月25日発売 / 2268円 / AVCD-93429 / avex trax
「KAWA-EDM」
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収録曲 / オリジナルアーティスト
  1. ヘドバンギャー!! TEKINA Remix / BABYMETAL
  2. でんでんぱっしょん TEKINA Remix / でんぱ組.inc
  3. シェキメキ! TEKINA Remix / Dream5
  4. プリプリ♥SUMMERキッス TEKINA Remix / SUPER☆GiRLS
  5. 夏祭り TEKINA Remix / Whiteberry
  6. 恋の天気予報 TEKINA Remix / ウェザーガールズ
  7. 鼓動の秘密 TEKINA Remix / 東京女子流
  8. IDOL TEKINA Remix / BiS
  9. チェケラ TEKINA Remix / Cheeky Parade
  10. secret base ~君がくれたもの~ TEKINA Remix / ZONE
  11. White Love TEKINA Remix / SPEED
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
  • 2016年8月6日(土)茨城県 国営ひたち海浜公園
  • 2016年8月7日(日)茨城県 国営ひたち海浜公園
  • 2016年8月13日(土)茨城県 国営ひたち海浜公園
  • 2016年8月14日(日)茨城県 国営ひたち海浜公園

※DJ'TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺの出演は8月13日のBUZZ STAGE。

DJ'TEKINA//SOMETHING(ディージェーテキナサムシング)
DJ'TEKINA//SOMETHING

ラウドロックをボーカロイドシーンに取り入れたオリジネーターとして人気を博したボカロP、ゆよゆっぺのDJ活動時の名義で、通称「テキサム」。ゆよゆっぺがメタルやスクリーモなどを基軸にしたサウンドなのに対して、DJ'TEKINA//SOMETHINGではフロアライクなEDMを追求している。「ROCK IN JAPAN」「COUNTDOWN JAPAN」「SUMMER SONIC」など大型フェスでDJを務めつつ、BABYMETAL、でんぱ組inc、Dream5、Kis-My-Ft2などのリミックス制作を担当。2015年に結成された、SPEEDの今井絵理子と島袋寛子によるユニット・ERIHIROのサウンドプロデュースを手がけた。2016年5月には女性アイドルグループのリミックスで構成されたアルバム「KAWA-EDM」をリリースしている。