音楽ナタリー Power Push - 電波少女

電波少女メジャーデビュー決定記念インタビュー

ヒッチハイクの旅で手にした自信

ヒッチハイクでの思いを書いた新曲「FOOTPRINTS」

──ライブでは新曲「FOOTPRINTS」も披露しましたね。ヒッチハイクの旅の中で感じたことが反映されている曲ですが、歌詞はずっと書いてたんですか?

ハシシ 歌詞というか、心境をメモするくらいですけどね。「こういうテーマの曲を書くときに使えるかもな」くらいで、そこまで具体的なことも書いてなかったし。あとは不満とか鬱憤とか。

nicecream(DJ, Performance)

nicecream ははははは(笑)。歌詞を書くような余裕もなかったしね。

ハシシ 「意外と書けないもんだな」と思いました(笑)。あと、いい感じでひと皮むけてもつまらないと思ってたし。結局ひと皮もむけなかったけど(笑)。

──「過酷な旅を経てポジティブな気持ちになりました」という予定調和はつまらない、と。

ハシシ そうなれなかっただけですけどね(笑)。YouTubeにアップされてる動画を観ても「恩知らずなこと言ってるな」って思うし。もちろん前提には感謝があるんですけどね、自分の中では。

──「FOOTPRINTS」の歌詞も単なる前向きソングではないですからね。「正直もらった恩に 押し潰されそうになってる ゴミクズが俺だ」もそうですけど、むしろ鬱屈とした気分がハシシさん自身に向けられていて。

ハシシ そのときの心境ですね、それも。そのときの気持ちを振り返りつつ、そのままトラックに乗せて。

nicecream ハシシは「この企画を知らない人でもわかる曲にしたい」って言ってたんですけど、旅の中でよく言ってた言葉もちゃんと入っていて。いいバランスだなって思います。

ハシシ 変にポジティブなことを書いてもしょうがないというか、俺がそういう性格じゃないってことはリスナーの人たちにもバレてますからね。

ヒップホップらしくないこともできるのが電波少女

──パンキッシュなトラックを含めて、電波少女の個性がしっかり表現された楽曲だと思います。このあとはいよいよメジャーデビューに向けての動きがスタートしますね。まず5月8日にデジタルシングル「Re:カールマイヤー」を配信リリース。6月18日にワンマンライブ「EST.」をWWW Xにて開催します。

ハシシ(Rap)

ハシシ WWW Xのワンマンは、今回の反省を生かしていいライブにしたいですね。今はアルバムの制作に入ってるんですよ。“終わりと始まり”みたいなアルバムになると思います。1つの節目としてしっかり印象に残る作品にしたいなって。今までのアルバムは自分の中で勝手に縛りを作ってたんですよ。1st(「BIOS」)は曲名に生き物の名前を入れて、2nd(「WHO」)は全曲にフィーチャリングゲストを招いて。でも縛りの中で曲を作っていくのがちょっと面倒になってきたので(笑)、次のアルバムで縛りシリーズは最後にしようと思ってます。

──そういう発想も独特ですよね。ヒップホップシーンの中でも個性は際立っていると思います。

ハシシ そうですね(笑)。音楽性も活動のやり方もかなり毛並みが違うと思うので。そのせいでバカにされがちだったりもするんですけど……。

──「ヒップホップらしくない」みたいな?

ハシシ そう言われることもありますね。「FOOTPRINTS」のトラックもそうですけど、ヒップホップらしくないこともやっているので。それが楽しいんですよ、自分としては。今まで作ってきた音源の中でもある程度の振り幅は見せているし、それをもっと広げていけるんじゃないかなと。ほかのアーティストだったら違和感が出ちゃうことでも、電波少女ならやれると思うので。

nicecream あとはパフォーマンスの精度を上げていかないと。

ハシシ そうやな(笑)。ヒッチハイク企画みたいな話題だけではなくて、いろんな魅力を持った人間にならないと。がんばります。

電波少女

“Photo gallery~電波少女的ヒッチハイクの旅を支えたもの~

「電波少女的ヒッチハイクの旅」中に集めた領収書。2人は旅の間、最初に手渡された2万円と、ストリートライブとCD販売(1枚につき500円)で稼いだお金のみで生活した。
スケッチブックと日誌。目的地を掲げたスケッチブックは合計で4冊に。
スタート時に新しく購入したハシシのスニーカー。約2カ月の旅で毎日苦楽を共にした。
路上ライブで使用していたnicecreamのアコースティックギター。ハシシが倒してネックが折れてしまい、途中で新しいものを買うはめに。
公演情報
電波少女「EST.」
  • 2017年6月18日(日)東京都 WWW X
電波少女(デンパガール)
電波少女

2009年に複数のMCおよびトラックメーカーで結成されたユニット。幾度かのメンバーチェンジを経て、現在はラップ担当のハシシとDJ&パフォーマンス担当のnicecreamという2人で活動している。2013年7月に1stアルバム「BIOS」を、2015年7月に全曲フィーチャリングゲストを迎えた2ndアルバム「WHO」を発表した。12月にリリースしたiTunes Store限定シングル「COMPLEX REMIX feat. Jinmenusagi, NIHA-C」がiTunes Storeのヒップホップ / ラップのシングルチャートで1位を獲得する。2016年5月に7曲入りCD「パラノイア」をリリースし、11月よりヒッチハイク企画「“電波少女的ヒッチハイクの旅”47都道府県ストリートライブTOUR」を実施。2017年1月にヒッチハイクの旅を完遂し、夏にメジャーデビューを果たすことが決定した。