リスナーの顔が見えた路上ライブ

──全都道府県で路上ライブを行ったことも、この企画の大きな成果ですよね。セットリストは決めてたんですか？

ハシシ　決めてましたね。「笑えるように」「Re:カールマイヤー」「Mis(ter)understand」とか。あとは「MO feat. NIHA-C」もやってましたね。音源ではNIHA-Cがラップしているパートも全部自分でやって。最初の頃は来てくれた人のリクエストに応えて1曲挿し込んだりしてたんですけど、しばらくしてからはセットリストを固定するようになったんです。ライブ中に警察に注意されることもあったし、カチッと決めたセットをやって、バッと撤収したほうがいいなって。

nicecream　うん。

ハシシ　初めてのお客さん、たまたま通りかかった人たちも視野に入れてたんですけど、基本的にはわざわざ足を運んでくれたファンの人たちが聴きたい曲をやろうと思って。ほとんどが初めて行く場所だったし、「電波少女のライブを見たのは初めてです」という人も多かったですからね。

──直接リスナーと触れ合えるのもいい経験ですよね。

ハシシ　うん、そこに関してはすごくポジティブでした。ライブハウスでやってるときは客席がよく見えなかったりするし、自分はもともとシャイだからお客さんを直視できないんですよね。

nicecream　「シャイだから」って（笑）。

ハシシ　でも路上ライブのときはわりとコミュニケーションが取れたんですよ。言ったら、時間無制限じゃないですか。ライブが終わったあとも一緒に写真を撮ったり、サインしたり、軽く話したりしました。

nicecream　ライブ自体もしっかり観てもらえたと思いますね。ライブハウスだと、俺がパフォーマンスをやっていても、よく見えないこともあって。路上だったらそこも観てもらえるし、「（nicecreamは）何をやってる人なのか」というのもわかってもらえたんじゃないかなって。

ハシシ　お客さんとの距離も近いからね。

nicecream　そうそう。「けっこう歌うんですね」とか「ギターも弾くんですね」って言われたり（笑）。ハシシが入院して1人でライブをやったときは大変でしたけどね。あれはキツかった……。

ハシシ　あと「こういう人たちも自分たちの曲を聴いてくれてるんだな」と思うことも多かったですね。親子連れだったり、家族そろって来てくれる人もいて。高校生くらいの女の子とお母さんが一緒にライブを観に来てくれて、「女の子がファンなのかな？」と思ったら、実はお母さんのほうが電波少女のファンだったこともあった（笑）。

nicecream　あったね！ 娘さんのほうは「せっかくなんで、一応写真撮ってください」みたいな（笑）。

ハシシ　撮らなくていいよ！っていう（笑）。

出会いは自分たちの後ろ盾に

nicecream　どこに行っても思った以上の人が集まってくれたんですよね。ライブを観に来てくれた人たちと触れ合えたことはすごくよかったと思うし、1回でも会った人はこれからも気にしてくれるんじゃないかなって。

ハシシ　たまたま通りかかった人がCDを買ってくれたり、車に乗せてくれた人がライブを観に来てくれることもあって。そういう出会いはすごくうれしかったし、今はプラスに捉えてますね。

──旅の最中はプラスに捉えられなかった？

ハシシ　感謝する余裕がなかったんですよ。ちょっと拗ねて「俺ら、見世物みたいだな」って思ったこともあったし。今はホントに感謝してるし、全都道府県の人たちと会えたことは、何かしらの自信というか、自分たちの後ろ盾になると思います。

──ハシシさんとnicecreamさんの関係性も深まったんじゃないですか？ ずっと一緒に行動して、将来のことを話す時間もあったと思うのですが。

ハシシ　いやー、どうですかね。話すよりも察してたほうが多いかも。「普段は穏やかだけど、こういうときは怒るんだな」とか「やっぱりバカだな」とか（笑）。新しいところに気付いたわけではなくて、再確認していた感じですね。それはお互いにあったと思います。

nicecream　うん。ハシシとは高校時代からの付き合いなんですけど、電波少女として活動するようになってからは、俺が注意されることのほうが多かったんですよ。集合時間に間に合っていても、俺が最後だったら「もっと早く来い」って言われたり。ほとんどポンコツみたいな扱いだったんですけど、旅してるときはハシシもよく忘れ物してたし、寝坊して遅れることもあって。「そういえばコイツもだらしないよな」って思い出しました（笑）。

ヒッチハイクのあとのワンマンライブ

──ヒッチハイクの旅が終わったあとのワンマンライブ「“サライ”～電波少女的ヒッチハイクの旅 完～」についても聞かせてください（参照：電波少女「電波少女的ヒッチハイクの旅」締めくくるワンマンで完全燃焼）。各地の路上ライブで得たものを試すライブでもあったと思うのですが、手応えはどうでした？

ハシシ　今回のライブでは（路上ライブの経験を）生かせなかったですね。まず、ライブハウスの使い方が下手になってた（笑）。自分の声がモニタから返ってくるのもヘンな感じだったし、もうちょっと体を慣らしていかないとなと思いました。

nicecream　路上ライブをやりすぎました（笑）。

ハシシ　余裕もなかったんですよね。目の前のことに気を取られすぎて、「次の曲ではこういうふうに動く」「こう見せる」ということもできなかったので。ただ、来てくれた人たちが意外と喜んでくれてたのはよかったなって。お客さんとゲストに助けられました。

nicecream　確かに準備不足な面もありましたけど、意外と気付かないところでメンタルが強くなってるのかなという感じもあって。勘違いかもしれないけど、堂々とステージに立てるようになったというか。

ハシシ　え、あんなにグダグダのMCで？

nicecream　前に比べたらマシになったと思うよ（笑）。

──電波少女のライブって、独特ですよね。「手を挙げて」とか「声出して」とか、ほとんど言わないじゃないですか。個人的には「手を挙げて」って言われると挙げたくなくなるんですが……。

ハシシ　そういう人もいるだろうなと思って、言わないんです（笑）。

nicecream　っていうか、ハシシもそうやろ？

ハシシ　うん。ライブで「手を挙げろ」って言われたら「挙げさせてみろ」って思うから（笑）。こういう意見がヒネくれているのもわかってるし、手を挙げてもらったり、声を出してもらうことがライブのエンジンになることもわかってるんですけど、自分ではやらないですね。

──電波少女のお客さんは指示されなくても自由に手を挙げたり歌ったりしてるから、まったく問題ないと思いますけどね。

ハシシ　俺もそれでいいと思ってるんですよ。俺、アンコールをやるのもちょっと恥ずかしいんですよね。

nicecream　「アンコールやめない？」って言ってたもんね（笑）。

ハシシ　1回引っ込んで、シレッとした顔で出られないんですよ。それができる人はアーティストだなって思うし、リスペクトもしてるんですけど、自分の性格的には素直にできなくて。