カエル全員俺のこと大好き「我ら令和のかえるちゃん!」
──「我ら令和のかえるちゃん!」はまふまふさんの提供曲ですが、りあぴはまふまふさんの大ファンだとか。
小鳩 こじらせてて今まで言えなかったんですけど、長年まふまふさんの歌が大好きでずっと聴いてて、家にグッズとかもいっぱいあるくらいで。絶対に交わることはない人生だと思ってたから、でんぱ組.incにまふまふさんが曲を書いてくださると聞いたときは信じられなかったです。
古川 りあちゃん仮歌聴いて泣きながら練習したそうです。
小鳩 ずっと泣いてました。ちょっといまだにどういうことかわからない……。
古川 でもこの曲りあちゃんに似合ってますよね。
小鳩 みんながそう言ってくれるんで、私も何回も聴いてるうちにそうかもしれないと思うようになりました(笑)。
空野 めっちゃポジティブ(笑)。いいヲタクだ! この曲はTikTokで流行りそうなキャッチーなサウンドなんですよね。
古川 でもなんていうのかな、懐かしさも感じるというか、ちょっとギャルゲー感あるよね?
相沢 主人公のモテない暗い男の子が大切に飼っていたカエルたちが突然かわいい女の子に変身して「全員俺のこと大好き、どうしよう!」ってなるところまで想像した。
小鳩 ファンの人は自分の隣にでんぱ組.incのメンバーが来て「この手 離さないでいてね 君のとなりにかえるちゃん」と言ってる状況を想像しながら聴いてほしいです。
藤咲 それに「この小さな井戸からボクも海へ行ける?」って歌詞は秋葉原から世界に行けると言ってる感じがして。ここちょっとエモいよね。
小鳩 「W.W.D」を思い出しました。「せまいステージから 世界をめざせ」みたい。
今どきじゃない過激曲「接吻~らぶらぶ♥ちゅ~」
──「接吻~らぶらぶ♥ちゅ~」はFICEが2006年にリリースした楽曲のカバーですね。中毒性が高くてちょっとエッチな、これぞ王道の電波ソングといった内容です。
相沢 でんぱ組.incで一番過激な曲かもしれない。「顔なんてどうでもいいの くちびるがほしいだけ」「くれないなら 突撃よ うばわせていただきます らぶちゅ~」って。
空野 今どきそんな歌詞ないよね。
古川 令和ではないからね(笑)。編曲はヒャダインさんなんですけど、サビでダダダダダダってベース音が繰り返しずっと鳴ってるんですよ。懐かしいな!と思って(笑)。たぶんわざとやってますよね。
空野 確かにサビが来た瞬間に昔のアニメの曲みたいだなと思った。
古川 ニヤニヤしながら打ち込んでるのが想像できて、さすがヒャダ様だなと思いました。
電波ソング重鎮2組の共作「オーギュメンテッドおじいちゃん」
──そしてラストを飾る「オーギュメンテッドおじいちゃん」は未来のヲタクをおじいちゃん呼ばわりする斬新な楽曲です。
古川 IOSYSとMOSAIC.WAVがコラボしてるのヤバいですよね。
空野 古参のヲタクたちがワクワクするやつだ。
古川 ひなちゃんがおじいちゃん相手に「ねぇ 秋葉原に昔、伝説のアイドルグループがいたんだって?」って言ってるのがリアルなんですよ。
藤咲 ぺろりんの「まったくここは酷いインターネッツですね( ́・ω・`)」もかわいいよね。
相沢 歌詞に顔文字めっちゃ入ってるのもいいよね。
藤咲 この曲は初めてメンバー全員で振付を考えたんです。昔のインターネットのことをいろいろ話しながら、モナーってこう( ´∀`)だったっけとか指差すときは m9(^Д^) だよねとか。ひなちゃんは知らないだろうと思ったら案外知ってることもあって年齢詐称かな?と思ったり(笑)。
高咲 その時代には生まれてなかったけど、でんぱ組.incをもっと知るためにネットのヲタク講座みたいなやつで知識を得ました。
小鳩 歴史の勉強の域に入ってる(笑)。
古川 将来我々がおばあちゃんになって、お客さんも全員じいちゃんばあちゃんみたいな現場もあるかもね、なんて冗談で話してたこともあったけど、そういう未来がリアルに想像できる時代が来てるのかもしれない(笑)。これも明らかにでんぱ組.incにしか歌えない曲ですよね。
ツアーで積み重ねてきた一体感と信頼感
──ここからはライブの話も少し聞かせてください。10月にスタートした「電電電電電電電電電!!!!!!!!!」ツアーでは小規模なライブハウスをたくさん回りましたね。
高咲 とにかく距離が近くてビックリしました。ステージに出た瞬間めっちゃ楽しそうなお客さんの顔がすぐ目の前にあって、そこからもらえるパワーがすごかった。
小鳩 MCも楽屋の雰囲気のまましゃべってるというか、武道館とか中野サンプラザでは絶対しないよねって話を各地でしてましたね。
鹿目 それ距離が近いからというのもあるけど、同じことが半年前にできたかっていうと違うと思ってて。新体制になって1年以上経って日頃からみんなでたくさん話してるからMCでものびのび話せるようになったんだと思います。
──変化といえば、特にりとくんは加入初期からずいぶん変わりましたよね。以前に比べてMCや表情が柔らかくなった気がします。
天沢 最初はたぶん怖かったんです。でもみんなと一緒にいるうちにまずメンバーを怖がる必要はないんだって気付いて、ツアーを回っていく中でお客さんを怖いと思うこともなくなってきて。歌も今までは低い声で歌ったことしかなかったけど、そうじゃなくてもいいんだとわかって、みんなが受け入れてくれて笑ってくれてる顔を見て「大丈夫だな」と思って。だんだんしゃべれるようになってきました(笑)。
──りあぴも初期は緊張気味だったのが最近はだいぶリラックスしてるように見えます。
空野 だってこの人、ライブ中にカラコン変えたりしてますもん。
──えっ、ステージ上で?
小鳩 途中で見えなくなっちゃうんです。汗でお化粧が落ちて目に付いちゃって。だからMC中にパパッて(笑)。
藤咲 秒ですよ。ドリンクのところにカラコンケースが置いてある。これプロフィールの特技のとこに書いたほうがいいよ。
小鳩 役に立たない(笑)。
古川 私はりあちゃんのこと最初もっとゆるふわなイメージで見てたんですけど、実はめちゃめちゃ熱い女なんですよね。例えば衣装のことでも「この日は絶対“ネオアルティメットセーラー”がいいと思います!」みたいに自分の意見をちゃんと言うし。
小鳩 それが言えるようになったのは本当に最近で、今回のツアーをやっていく中で自分がでんぱ組.incの一部なんだってことが強く刷り込まれたんですよね。それぐらいみんなといっぱい時間を積み重ねてきたなって。ツアーを通して一体感と信頼感が強くなったから、自分の気持ちを言えるようになったんだと思います。
空野 私は最近りとまる(天沢)といろいろ相談できるようになりました。お互いに兼任で活動してるから似たようなことで悩んでたりして帰りの車でよく話してます。あとはもうみんな甘えさせてもろてありがたきー!って感じですね(笑)。
藤咲 あおにゃんはライブ中のコミュニケーションの取り方がおかしいんですよ。
相沢 「あの女が一番ヤバい」っていろんな界隈からよく聞きますね。
空野 それはないと思うよ!(笑)
藤咲 「イチモニ!」っていう北海道のテレビ番組で、手でOKマークを作って口をイー!ってするポーズがあって、最近のあおにゃんはそれをライブ中にやってくる。ファンの人はたぶん気付いてないんですけど。
相沢 ファンへのサービスとかじゃなく、この人はただやりたくてやってるんです。
藤咲 でも結果それで場が和むんですよね。つい笑っちゃったあと「おい!」みたいな流れにはなるけど(笑)、いい雰囲気をあおにゃんが作り出してくれてるのは助かってます。
空野 「イチモニ!」のおかげです。
藤咲 違うよ(笑)。
相沢 りとくんやりあぴがいろいろ話せるようになったのはもちろん、あおにゃんも最初から打ち解けてはいたけど気を使っていた部分はめっちゃあっただろうし、みんなすごく成長してるんですよね。ひなちゃんもすごい悪ガキなんですけど、実家を離れて一所懸命でんぱ組.incとして活動してくれてて本当に偉いなって思うから、グループの中では多少ふざけてピンキー(藤咲)に叱られてるくらいがいいのかなって(笑)。1人ひとりが自分で抱え込むんじゃなく、思ってることをちゃんと言えるようになってきた気がします。
──みりんちゃんはひさびさのツアーどうでしたか?
古川 単に自分の昔のパートに入ればいいわけじゃなく、今のこの体制で新しく覚えることがたくさんあったので、最初はとにかく間違えないように慎重にやろうみたいな感じでしたね。でもファンの皆さんから「おかえり」と言ってもらえてとてもうれしかったのと、実際にステージ立ってみて意外と体力持つんだなって。今はだいぶ自信が付きました。
ファンは振り回されてほしい
──ツアーと新作を経て、来年以降のでんぱ組.incがどうなるか楽しみですね。
藤咲 今年とはだいぶ違う感じになると思う。
空野 もふくさんがどれくらい暴走するのか想像できないです。ざわざわ(笑)。
古川 新しいアルバムを作ってから、もふくちゃんがずっと楽しそうなんですよ。「でんぱ組.incの動かし方がわかった」と言ってて、「やっとわかったの?(笑)」って。
相沢 このアルバム、長いこと付き合ってくれてるファンはいいとして、最近知ってくれた子たちはどう感じるんですかね。
空野 好きになってくれそうじゃない? けっこう濃いヲタクばっかりですよ(笑)。
──でんぱ組.incがこの10年ほどやってきたドキュメンタリースタイル=等身大の自分たちの姿を歌ってファンが共感したり応援したりといった構図はこのアルバムにはないですよね。
古川 そうですね。これ誰の話?って思う人もいるかもしれない。
相沢 私はもともとこういうのがアイドルだと思ってたんですよね。生身をさらけ出すんじゃなくて、偶像を作り上げていく仕事だと思ってた。でも「W.W.D」とかで過去の暗い話をしてると「あれ? 私が思ってたアイドルと違うぞ」とわけわかんなくなったりして(笑)。だからもし昔の私がこういう曲をもらっていたら案外素直に歌ってたかもなって感覚はあります。
──これも普通のアイドルソングではないですけどね(笑)。
空野 でんぱ組.incだから受け入れられるみたいなところはありますよね。
藤咲 バグみたいな感じかも(笑)。ファンの人たちにはいい意味で振り回されてほしいな。
古川 うん、めちゃくちゃコンセプチュアルだから、そういうのが好きな人はいろいろ考察してもらってもいいし、もっと純粋に聴いて楽しんでもらってもいいし。芯のある曲が多いから何かを感じ取ってもらえるとうれしいですね。