デーモン閣下|演劇×ロックの融合、劇団☆新感線とコラボレーションした異色アルバム

ロックの常識を破っている

──アルバム全体に統一感があるのも興味深かったです。「星の忍者」と「髑髏城の七人」はまったく違うストーリーの作品ですが、音楽に関しては通じるものがあるんだなと。

そうだな。ただ、「Burning Beauty」(「星の忍者~Stranger in a Strange Star」より)は、17年前の吾輩のソロアルバム「SYMPHONIA」に収録していた曲だから、だいぶ違和感があるけどな(笑)。あの曲のアレンジを担当したのは、今も吾輩のコンサートでギターを弾いている石垣愛氏なのだが、ギターのバッキングを1トラックで作っている。岡崎氏のアレンジは必ずギターがダブルだし、ストリングスなども使ってシンフォニックで分厚い音になっているから、アルバムを聴いていると「Burning Beauty」のところで「ん? ぜんぜん音に広がりがないぞ」と感じる(笑)。まあ、それも一興だが。あと、「Medleyさんちゃご ~神の王国をつくれ~ なぜに奪われし光」(「ROCK MUSICAL『SHIROH』」より)はアンダース・リドホルム(デーモン閣下の楽曲のアレンジを数多く手がけているスウェーデンの音楽プロデューサー)がアレンジしていて、あの曲だけ生ドラムなのだ。

──芝居のために書かれたことによって、普通だったら絶対にありえない構成になっている曲もありますね。

デーモン閣下

例えば「きみ死に給ふことなかれ」(「髑髏城の七人~Season月」より)は、AメロとBメロを2回繰り返したあと、長い間奏があるんだ。それは芝居の中でメインの役者がかなりの距離を歩く場面のための間奏なのだが、楽曲だけ聴くと「妙に長いな」と感じてしまう(笑)。しかも、そのあといきなりサビになって曲が終わるという。テンポが違うし、コード進行的に違和感があるからAメロに戻ることもできないのだ。なのでアルバムに収録されている楽曲もサビを2回繰り返して終わり。Aメロ、Bメロ、長い間奏、サビが2回という構成の曲、普通はないんだよな。ロックの曲としての常識が破られている……吾輩は「常識破り」は好きだけれどもね。

──確かに(笑)。

あと、岡崎氏のギターソロもだいぶ短いんだ。吾輩が知っている限り、ハードロックやヘヴィメタルのギタリストは、「俺が俺が」とばかりにギターソロを弾きたがるものだが、岡崎氏は8小節くらいしか弾かないから。

──それも芝居のために曲を作ってきた影響なのかも……。

それもあるだろうし、岡崎氏は「これは閣下の“ヴォーカリスト”としてのソロアルバムだから、ギターソロは短くていいんです」と何度も言っていた。それはうれしいことなのだが、10月からのツアーのことを考えると……(笑)。最近、間奏は休憩の場所としても活用しているから、ギターソロが短いと「もう歌わなくてはいけないの!?」と感じてしまうのだ(笑)。ツアーではギターソロを長くしてもらおうかな。

今一番聴いているのはこのアルバム

──「修羅と極楽」(「修羅天魔~髑髏城の七人 Season極」より)の"MUSIC VIDEO"には、劇団☆新感線の役者が参加していますね。「髑髏城の七人」の世界観も反映されて、ここでも有意義なコラボレーションが実現しています。

劇団☆新感線の休演日にわざわざ来てもらって。最初は「劇団☆新感線の曲を集めたアルバムがあってもいいんじゃない」という気軽な思いで始まったアルバムだったのだが、いつの間にかここまで大がかりになっていたという。ありがたいことだ。

──「うた髑髏(どくろ) -劇団☆新感線劇中歌集-」はデーモン閣下のキャリアの中でも特異な作品なったと思いますが、閣下ご自身はどう感じていますか?

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確かに聖飢魔IIの作品とも、これまでのソロの作品ともちょっと質の違うものになったとは思う。その理由としては、物語が先にあって「この場面でこういう人が歌う」という前提があったからだろうな。自分が歌うつもりで作っていない曲もたくさんあるし、普段の曲作りとは違う言葉の選び方ができる。通常、アルバムを作るときは「どういうコンセプトやメッセージを届けようか?」ということを考えるのに対し、芝居のために詞を書くときはそういう思いが作業開始時にないのも大きな違いだろうな。今回のアルバムにもメッセージを含んだ曲が入っているが、それは吾輩が考えたものではない。そのぶん、どこか客観的に歌詞を書いているのだ。シンガーに徹しているところもあるかな……。そもそも、吾輩は「みんなでがんばって生き抜こう。そしてもう一度、太陽のもとで会おう」みたいなことを歌わないではないか。

──おっしゃる通り(笑)。

逆に「死ね!」と歌うことはある(笑)。そういう意味では、芝居のための音楽を作ることによって、今まで発掘していないものを見つけられた感覚が大いにある。しかも面白いことに、歌っていても「自分を裏切っている」という感覚はないんだ。今回のアルバムには新たに2コーラス目を作った曲も多く入っているが、「2番は好き勝手に作っちゃおう」とは思わず、やはり芝居の物語や世界観、場面を意識しながら作った。自分でもかなり気に入っていて、完成した後も何度も聴き返しているんだ。今一番聴いているのは、このアルバムだな。

──2017年には作家の羽田圭介さん、ブルボン小林さんらが作詞家として参加した「EXISTENCE」、日本の古典楽器の演奏者が参加した「うただま」を発表されましたが、それに加えて今回の「うた髑髏(どくろ) -劇団☆新感線劇中歌集-」と、ここ数年のソロ作品はコレボレーションがテーマになっていますね。

そういう作り方が向いているのだろうなと、だんだん気付いてきたのかもしれない。何か異質なものとコラボレーションして、お互いに新しいものを引っ張り出すことで、今までになかった作品が生まれるという。それは自分だけで作るオリジナルアルバムにはないことだからな。あと、コラボレーションした作品のほうが吾輩の歌がいいんだ(笑)。自分の中から新しい何かが引き出され、それに対して「面白そう」とウキウキしてきて。そういう姿勢で臨むことによって、歌に影響があるのかもしれない。「髑髏城の七人」の曲の歌詞を書いているときも新鮮味があったな。「こんな単語を使うなんて、今まで考えたこともなかった」という。

──次のコラボレーション作品のアイデアもあるんでしょうか?

いや、どうかな。いつも行き当たりばったりだから(笑)。……あ、いや、あるよ。

──あるんですか!?

うむ。「そんなことができるの!?」というコラボレーションがこの夏に急に実現したんだ。もうすぐ報告できると思うので、ぜひ期待していてほしい。

ツアー情報

DEMON'S ROCK "DKR(うたどくろ)" TOUR
  • 魔暦21(2019)年10月21日(月)大阪府 Zepp Namba
  • 魔暦21(2019)年11月2日(土)愛知県 Zepp Nagoya
  • 魔暦21(2019)年11月10日(日)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
デーモン閣下

2019年10月17日更新