音楽ナタリー Power Push - Def Tech
10年目に迎えた原点回帰
ハワイのカーラジオから流れてくるような音
──収録曲の「One Day」にウクレレでジェイク・シマブクロさんが参加していますが、彼とはそもそもどういうきっかけで知り合ったんですか。
Shen ジェイクとは、彼のアルバム(「YEAH」)で「My Dream」という曲を一緒に作ったことがきっかけになって友達になったんです。それ以来、ハワイに行くたびに会うようになって。1月にハワイに行ったとき、「一緒にソングライティングのセッションをしたいんだけど」ってジェイクに電話したら、「今度うちの庭でバーベキューをやるから遊びにおいでよ」って誘われて。それで遊びに行ったら、その場でジェイクがウクレレを弾き始めて。そのときに、彼が弾いたウクレレを録音してそのまま「One Day」で使ったんです。
──そうだったんですね。
Shen はい。その場でiPhoneを使って録ったんですけど、音の雰囲気がすごくよかったんですよ。それで日本に帰ってからMicroに早速、音源を聴かせたんです。
Micro 聴いた瞬間、「このまま使えるじゃん!」って思いましたね。ハワイのカーラジオから流れてくるような音っていうか。たぶん、スタジオでちゃんと録り直したら絶対にこの雰囲気って再現できないと思うんです。この音源を聴いてアルバムのイメージが一気に広がりました。
──今作にはジェイクさんの弟であるウクレレプレイヤー、ブルース・シマブクロさんも参加していますね。
Shen ジェイクはすごく真面目なタイプなんですけど、ブルースは彼とは真逆な性格で、いつもクダらないことばっかり言ってるんですよ。
Micro スタジオでもひたすらビールを飲んでるしね。
Shen 飲んでなかったのってレコーディング初日ぐらいじゃない?
Micro たぶん様子を見てたんだろうね(笑)。2日目にはビールを2ダースぐらい持ち込んでたから。それで「やべえ、酔っぱらっちゃった」とか言いつつ素晴らしいプレイをしてくれるんです。
Shen ブルースには随分助けてもらったよね。レコーデイングの雰囲気がちょっとピリピリしてきたら冗談を言ってその場を和ませてくれたり。
──ある意味、ムードメーカー的な役割というか。
Micro うん。今回のレコーディングは彼が参加してくれたことも相当大きかったですね。
徹底的に突き詰めたサウンドの質感
──レコーディングの後半は東京での作業だったんですか?
Micro そうですね。それぞれの自宅と、あとは昔から使ってる目黒のスタジオで最終的な詰めの作業をして。あと、横浜のランドマークスタジオっていう豪華なスタジオでも作業をしました。そこは出前もすごく充実してるんですよ(笑)。
Shen けっこう、気分がアガったよね。
Micro 設備も整ってるし、寝泊まりできちゃうようなスタジオで。あれはあれで楽しかったんですけど。
Shen スケジュール的には完全に追い詰められてましたね(笑)。
Micro 本当にギリギリだったんですけど、最後の最後にマスタリングをやり直して。やっぱり妥協したくなかったから。
──具体的にどういう部分が気になったんですか?
Micro 全体的な音の質感ですね。スタッフ全員、作品をよくしようという気持ちが当然あると思うんですけど、その結果、サウンドがちょっと派手な方向に向かっちゃって。それで、これはマズイと思って、救急病棟に駆けつけるみたいな感じで急遽マスタリングをやり直して。
Shen すごく微妙なニュアンスを追及する作業ではあったんですけどね。
Micro 単にオーガニックな方向に行きすぎても回顧主義的な古臭い音になっちゃうし。やっぱりアートって時代とともに進化していくものだから、そこは突き詰めなきゃいけないと思って。EDMとか最新の音楽を通過したうえで、いかに素朴で温かみのあるサウンドを作ることができるかっていうことが重要だったんで。
Shen 要するに作品全体のバランスだよね。
Micro うん。サウンドの質感はもちろん、今回は1曲1曲のバランスにもすごく気を配ったし。
聴きたい音楽がなかったら自分たちで作ればいい
──確かに、ダブステップやトラップの要素を取り入れた「Freeing Ur Pain」や「Talkin’ 2 You」みたいな楽曲が入っていることで作品全体の雰囲気がピリッと引き締まったものになっていますよね。
Shen ハワイに行ってジャワイアンのアルバムを作るっていうのは、あまりにも当たり前なことですからね。やっぱり東京でしか生まれないようなバイブスを感じられるような作品にしないと意味がないなと思って。
Micro それでいて「Freeing Ur Pain」や「Talkin’ 2 You」みたいな曲からも、ちゃんと海の匂いがするっていう。
Shen そうなんだよね。
Micro 例えばジャマイカから遠く離れたイギリスからUB40みたいなレゲエバンドが出てきたり、その土地ならではの文化や空気を吸うことで、音楽ってどんどん進化してきたと思うんです。そういう意味でも、普段東京で生活している僕らがハワイの音楽にアプローチすることで、また新しい価値観が生まれてくると思うんですよね。
Shen 実際、「Talkin’ 2 You」みたいな曲って、ハワイのミュージシャンからしたら、すごく東京っぽく聴こえると思うし。
Micro あと、最近Shenともよく話すんですけど、僕らは小さな頃からハワイのラジオを聴きながら育っていて、そこで身に着いた感覚も、音楽を作る上で大きく影響してるんじゃないかと思うんです。ハワイのラジオって、レゲエからカントリーまで24時間本当にいろんな音楽が流れてるから。あの振り幅の広さが僕らのルーツになってる気がするんですよね。
──ジャンルにとらわれず、いろんな音楽に触れてきたからこそ独自のマッシュアップ感覚が身に付いたと。
Micro そうですね。だから何かと何かをくっつけてみようとか、意図的に曲を作ってるわけじゃなくて。
──とはいえ、2人と同じようにハワイで生まれ育って現地のラジオを聴いて育ったからといって、誰でもDef Techみたいな曲が作れるかというと決してそうではないですよね。自然に身に付いたマッシュアップ感覚を楽曲に落とし込むテクニックがそこには当然存在しているわけで。
Micro 僕らの中には「聴きたい音楽がなかったら自分たちで作ればいい」っていう思いがあって、それをずっと追及してきたところはありますね。Def Techがデビューした頃って、メロディに乗せてラップするようなグループが、それこそケツメイシぐらいしかいなかったんですけど、そこに綺麗なハーモニーを乗せてみたらどうなるんだろうとか、日本語と英語のリリックを半々で入れたら面白いんじゃないかとか、2人で試行錯誤を繰り返して。その積み重ねを経て、徐々に自分たちなりの勝ちパターンを身に付けていった感じですね。
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CD収録曲
- B-3
- Freeing Ur Pain
- One Day with Jake Shimabukuro
- Tell Me
- Gone Surfin’
- Summer Ends
- Talkin’ 2 You
- ふしぎだね?
- Gone Surfin’(Jawaiian Ver.)
DVD収録内容
- Marathon PV
- 2VOX tour(Teaser)
Def Tech 10周年記念 スペシャルサマーライブ2015
- 2015年7月12日(日)山梨県 河口湖ステラシアター
- 2015年7月18日(土)大阪府 大阪城野外音楽堂
Def Tech(デフテック)
ハワイ出身のShenと東京出身のMicroによる“Jawaiianスタイル”のユニット。2005年にアルバム「Def Tech」でデビュー。200万枚を超えるセールスで当時の国内インディーズの売り上げ記録を塗り替えた。以後、活動休止や一時解散を経ながらも、自由なスタイルの音楽活動を繰り広げ、6枚のオリジナルアルバムをリリースししている。そして2015年6月、ハワイアンミュージックを大胆に導入した約2年ぶりのアルバム「Howzit!?」を発表した。