音楽ナタリー Power Push - DECO*27
イノベーターが生み出した 俯瞰し、輪廻する“GHOST”
曲調は違っても、DECO*27のミクだよね
──その成果は間違いなく出ていて、さっき言った「リバーシブル・キャンペーン」もそうだし、ピンポイントで言うと、「Find The Light」の「光を無くした 怖がりの世界は」っていう箇所もすごく印象的でした。
ただ、ミクの声を人の声に寄せ過ぎないようにはしたくて、あくまでVOCALOIDだよっていうところは残したいと思っているんです。「Find The Light」は1回ものすごく人の声に寄せたんですけど、最終的には少しダウングレードさせてます。あまりにも人に寄せ過ぎるというか、感情が入り過ぎちゃうと、聴いてる側が曲に感情を込めづらくなっちゃうと思うんですよね。
──ボーカリストの歌い方も参考にしつつ、あくまでVOCALOIDらしくありたいと。
自分がずっと使ってきたミクのイメージを損なわないようにしたいと思ってます。ある種のあどけなさというか、かわいい部分も残しつつやりたいんです。曲調的にも、「Conti New」以降は新しいことに挑戦してるので、そこでミクまで大幅に変わってしまうのはよくないなって。逆に言うと「曲調は違っても、DECO*27のミクだよね」って思ってもらえたらいいなって思うんです。
──やっぱり「ミクを聴いてもらいたい」っていう気持ちが根本にあるわけですね。
今回はその気持ちが今までで一番強かったかもしれないです。実はこれまで自分のオリジナルアルバムでミクのイラストをジャケットに使ったことなかったんですけど、今回初めてミクを登場させているんですよね。自分の曲がきっかけで、ミクや、ボカロシーン全体を好きになってくれたら、VOCALOIDを使って活動してる身として、こんなにうれしいことってないですからね。
別離と、それでも前に進む自分に捧ぐ「Sprite Girl」
──あと「Sprite Girl」のことはどうしても聞いておきたくて、この曲は明確なモチーフのある曲だと思うんですね。
そうですね、大切な人を失ってしまったという曲です。なので「GHOST」っていうタイトルは、人として魂が消えてしまったっていう意味でもあるんですけど、「ゴーストルール」で描かれてるような、自分の中にある暗い気持ちが消えてどこかに行くっていう意味にも捉えてほしいと思ってます。「次へ進もうよ」って感じですね。身近な人を亡くしてしまったり、それに近い気持ちを味わったりした人にとって、ホッとしたり、共感したり、気持ちの置きどころになってくれたらいいなって思います。
──最後の曲の「at」は、言ってみれば、DECO*27にとって「生きる」ということを表現した曲のように感じました。
人生いろんなことがあっても、生きていたらいいこともあるし、辛抱強くやっていくのがいいんじゃないかって思いでアルバムを締めたいと思ったんです。歌詞の中で来世の話なんかもしちゃったりして。まずは1曲目から13曲目まで順に聴いてもらって、その後は13曲目を1曲目として聴いてもらうと、また違った味わいがあるんじゃないかと思います。アルバムをリピートすると、またアタマに戻るっていう。曲順にはすごくこだわったので。
──「GHOST」というタイトルには、そういう輪廻転生的なイメージも含まれていると。
このアルバムタイトルが決まったことによって、いろんな曲や言葉が引っ張られるように出てきたので、このタイトルとミクに救われてアルバムができたっていう、それがジャケットに表れてますね。1回音楽を辞めようかと思って、その後に「Conti New」を出してからは、自分の中で納得したものを出したいっていう気持ちが以前よりもさらに強まっていて。今回は2年半もかかっちゃったけど、悩んだおかげでいろんな発見もできたし「これでいいや」で出さなくて、ホントによかったと思いますね。
- ニューアルバム「GHOST」2016年9月28日発売 / U/M/A/A
- 「GHOST」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3200円 / UMA-9083~4
- Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] / 2700円 / UMA-1083
- Amazon.co.jp
CD収録曲
- ゴーストルール
- リバーシブル・キャンペーン
- LOVE DOLL
- 散散駄目調子
- 妄想感傷代償連盟
- いいや
- 正義のタレット
- ライアーダンス
- Find The Light
- 生心病
- 針鼠
- Sprite Girl
- at
初回限定盤DVD収録内容
- ストリーミングハート
- Find The Light -short MV-
- 『MIKU in the GHOST』 Analog Live Drawing by おぐち
※副音声:DECO*27、おぐちによる解説
※数量生産限定盤は売り切れのため、割愛しております。
DECO*27(デコニーナ)
1986年12月生まれの、福岡出身の男性アーティスト。父親の影響で13歳でギターを手にし、14歳からオリジナル楽曲を作り始める。その後、VOCALOIDを使って制作した作品をニコニコ動画に投稿すると、乾いたギターサウンドが特徴的なバンドアレンジで注目を集める。2010年4月、1stアルバム「相愛性理論」でデビュー。同年12月、2ndアルバム「愛迷エレジー」をリリースした。また他アーティストへの楽曲提供やコラボレーションも積極的に行い、中でも柴咲コウとTeddyLoidとのユニット「galaxias!」を結成したことは大きな話題となった。そして2012年4月「DECO*27 feat. 初音ミク」名義として初のシングル「ゆめゆめ」を発表し、7月には中川翔子、声優・悠木碧らが参加の3rdフルアルバム「ラブカレンダー」をリリース。またKOTOKO、Buono!、MEGらに楽曲を提供する傍ら、2013年9月には単独名義では1年8カ月ぶりとなる新作ボカロ曲「妄想税」を発表。以来「愛言葉II」「音偽バナシ」と毎月連続で新曲を発表し、同年12月にボーカロイドナンバーのベストアルバム「DECO*27 VOCALOID COLLECTION 2008~2012」を、翌2014年3月にオリジナルフルアルバム「Conti New」を発表し、2016年9月、約2年半ぶりとなるアルバム「GHOST」をリリースした。