Damian Hamada's Creatures|聖飢魔Ⅱの創始者・ダミアン浜田陛下が“世界最高齢メジャーデビュー” 人間界に再び響かせるダークで美しいヘヴィメタル

聖飢魔Ⅱの創始者である“地獄の大魔王”ダミアン浜田陛下が率いるヘヴィメタルバンド・Damian Hamada's Creaturesが、11月25日に“大聖典”である「旧約魔界聖書 第Ⅰ章」を発表。そして12月23日に「旧約魔界聖書 第Ⅱ章」を続けて発表する。

代表曲「蠟人形の館」を含む聖飢魔Ⅱ初期の大教典(アルバム)3作品の楽曲を多く手がけるも、“地球デビュー”前に魔界へと帰還したダミアン浜田陛下。聖飢魔IIが地球デビュー35周年を迎えた魔暦22(2020)年、陛下は人類への悪魔による洗脳をより強固なものにすべく再び人間界に降臨し、選ばれし6人を悪魔のしもべである“改臟人間”にしてヘヴィメタルバンド・Damian Hamada's Creaturesを結成した。“改臟人間”はさくら“シエル”伊舎堂(Vo)とプログレッシブロックバンド・金属恵比須のメンバーからなる計6人で、「旧約魔界聖書 第Ⅰ章」「旧約魔界聖書 第Ⅱ章」では陛下自身が全楽曲の作詞および作編曲を手がけている。

音楽ナタリーではこのたび“10万59歳”で“世界最高齢メジャーデビュー”を果たした陛下にインタビュー。世を忍ぶ仮の姿としての35年間の教師生活を終えたのち、再び人間界に現れ、ダークにして美しいヘヴィメタルを鳴らすまでの軌跡を語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

曲を作らないといられない状態

──まさかダミアン浜田陛下にお話を伺える日が来るとは思っていませんでした。

そうか。私もこんなことになるとは思っていなかった(笑)。

──まずは聖飢魔Ⅱを離れたあとのことについて聞かせてください。魔歴前4(1995)年に聖飢魔Ⅱ地球デビュー10周年記念大黒ミサ「オール悪魔総進撃!STAN ALL STARS」に出演し、翌年には「照魔境」を個悪魔大教典(ソロアルバム)として発表されました。この時期、陛下の中の音楽に対するモチベーションはどんなものだったのでしょうか?

ダミアン浜田陛下

まず「STAN ALL STARS」だが、簡単に言えば依頼があったから出たのだ(笑)。正直な話、「俺、本当に出ても大丈夫なのか?」と思っていたのだが、「10周年のお祭りなので、ぜひ」と言われ、「では、がんばってみるか」と。翌年の個悪魔大教典については、「自分の中でふとしたときに浮かんでくるもの形にした」ということかな。それ以前にも一部の信者(ファン)のために新曲を収録したカセットテープを配布したことがあるのだが、そのときも自分の中に溜まったものを消化した感じだった。作り終えたときは「もう当分いいや」「これ以上は曲を作れないかもしれない」と思うのだが、しばらくするとアイデアが浮かんで、曲を作らないといられない状態になってしまうのだ。ただ、教員をやっている間は音楽に専念することはできなかったから、限られた時間の中でやっていた。「照魔鏡」はインディーズからのリリースで、それほど大掛かりなものではなかったしな。

──教師を続けながらも、創作意欲はなくならなかったと。

うむ。たとえば車を運転しているときや寝る前、風呂に入っているときなどに突然アイデアが浮かんでしまうのだ。歌のメロディやイントロ、ギターソロ、“キメ”のアイデアなど、湧いてくるものはいろいろなのだが、「めちゃくちゃいいのが浮かんだ!」というときはICレコーダーなどに録音していた。

──リスナーとしてはどうでしょう? やはりヘヴィメタルを聴き続けていたのでしょうか?

90年代半ばまでは、ハードロック、へヴィメタルを聴き漁っていたのだが、少しずつ新しいものを開拓する意欲はなくなってきた。例えばイングウェイ・マルムスティーンだと、熱心に聴いていたのは「セブンス・サイン」(1994年発表のアルバム)まで。そこから先は同じようなパターンが続いている印象もあって、「この人も出し尽くしてしまったのだろうか」と感じた。Stratovarius、Royal Huntなども私の好みからすると1995、6年あたりがピークだったと思う。00年代に入るとメロディよりもリズムを重視したバンドが登場してきたわけだが、決して嫌いではないものの、私の好みとは違っていたのだ。わかりやすくいうと、ワクワクしなくなったというか……。よって、00年代以降はそれまでのハードロック、へヴィメタルを繰り返し聴いている。

──ニューメタル、へヴィロックと呼ばれたLimp Bizkit、Kornなどは?

あまり聴いてなかったな。むしろ私の印象だと、ゲーム音楽やアニメソングの中にヘヴィメタルを感じることが多かった。あとはいわゆるヴィジュアル系のバンドの中にも、ガシガシ攻めている曲があったと思う。

──なるほど。陛下としてはやはり、70年代、80年代のメロディアスなヘヴィメタルが最強なのでしょうか?

そうだな。一番好きなのはRainbow、Scorpions、そしてマイケル・シェンカー。それが私の核となっているのは間違いない。

人間の能力を超えたスーパープレイができる

──魔歴18(2016)年にはテレビアニメ「テラフォーマーズリベンジ」の主題歌「荒涼たる新世界」「PLANET / THE HELL」の作詞作曲を担当し、実に20年ぶりとなる聖飢魔Ⅱへの楽曲提供が実現しました。

ダミアン浜田陛下

それは私がデーモン閣下に「曲を作りたいんだけど」と言ったのがきっかけだ。魔歴16(2014)年に聖飢魔Ⅱの旧メンバーによる忘年会が催され、「来年、再集結する」と聞いたので、「新しい教典を出す予定があるなら、曲を作らせてほしい」と申し出たのだ。そのときは「新作を出す予定はない」ということで「なんだ、残念」と思っていたのだが、閣下が私の言葉を覚えてくれていて、「テラフォーマーズ」の主題歌を聖飢魔Ⅱが担当することになったときに私のところに話が回ってきたというわけだ。2曲とも作ってほしいという依頼で、「マジか!」とめちゃくちゃうれしかった。曲を書きたいという気持ちが強まっていたし、しかもそれを世に出せるのだからな。

──その頃、陛下の制作意欲が高まっていたのは、どうしてなんですか?

タイミングがよかったのだ。ちょうどCubaseという音楽制作ソフトを買ったばかりで、「これを使って作曲したい」と思っていたからな。制作ソフトを買い替えたのは14年ぶりだったのだが、「え、こんな機能も付いてるの? すごいな!」ということばかりで。14年間の進化は驚くべきものだった。

──14年ぶりに買い換えたら、浦島太郎状態ですよね。ギター音源のクオリティも段違いですし。

本当にありがたかった。自分が弾けなくても、ソフト上でスーパープレイがいくらでも作れるのだから。人間の能力を超えたフレーズを入れてもいいというのがやたら楽しくて、その頃は俄然やる気がアップしていた。そのせいで、今回のバンドメンバーたちにも迷惑をかけてしまったけどな(笑)。なんとか乗り切ったものの、レコーディングは本当に大変だったと思う。

──人間技ではないフレーズもどんどん曲に入れられるという、悪魔的発想で制作ができますからね。

そうだな。もちろん作るときは人間が演奏することを想定しているのだが、「俺は弾けないけど、まあいいか」と考えることもあった(笑)。「これはさすがに弾けるわけない」というフレーズは入れないようにしたものの、結局はカッコよさを重視して、どうしても人間技を超えてしまうのだ。ギターに限らず、ベース、オーケストラ、クラシックギター、クワイアの音源なども素晴らしく、とにかく曲を作るのがめちゃくちゃ楽しかった。とはいえ、上を見ればきりがないし、音楽制作ソフトにはまだまだ進化してほしいものだ。