Damian Hamada's Creatures|聖飢魔Ⅱの創始者・ダミアン浜田陛下が“世界最高齢メジャーデビュー” 人間界に再び響かせるダークで美しいヘヴィメタル

音楽活動を再開するつもりはなかった

──では、Damian Hamada's Creaturesの結成について聞かせてください。

これもタイミングがよかったのだ。まず、魔歴21(2019)年に世を忍ぶ仮の姿として35年間続けてきた教員を退職した。定年より3年早く辞めさせてもらったので、10万57才だった。もし定年まで勤め上げ、10万60才から音楽活動をやろうとしていたら、バンドメンバーであるさくら“シエル”伊舎堂、金属恵比須の面々はどこかのレーベルと契約していたかもしれない。去年辞めたからこそ、その6人に出会えたのだ。やはり私は悪運が強い(笑)。

Damian Hamada's Creatures

──そもそも教師を退職したら、音楽活動を再開させるつもりだったんですか?

いや、そのつもりは全然なかった(笑)。音楽のために退職したわけではないからな。ここだけの話だが、体力的に限界だったのだ。教員生活は走り続ける毎日だったし、毎年毎年やることが増えてどんどん忙しくなり、余裕がなくなった。最後に勤めた学校の環境はとてもよかったのだが、「あと3年続けられるだろうか」と思うようになり、担任させてもらったクラスがとても素晴らしかったこともあって、「ここで辞めてもいいかな」と。なので辞めたときは先のことはまったく考えていなかったし、音楽活動を再開しようとも思っていなかった。教師は楽しいが、きつい仕事なのだ。

──それは人間界の大きな問題ですよね……教師時代は軽音楽部の顧問を務められていたそうですね。

うむ。軽音楽部も楽しかったし、合唱部、吹奏楽部に関わったことも勉強になった。引率したコンクールで他の学校の演奏を聴いて「こういう打楽器の使い方があるのか」と気付いたり、合唱部の譜面を見て「こんなことやっていいの?」と驚いたり。自分が「これはタブー」と思っていたアレンジがなされていて、それがとてもよかったりするのだ。和声というのは教科書通りではないし、結論として響きがよくて、カッコよければいいのだなと。D.H.C.のコーラスワークもかなり大胆なことをやっているぞ。82、83年あたりの聖飢魔Ⅱ、90年代の個悪魔大教典の頃の自分には持ち得なかった発想も多い。

陛下の曲をカラオケに入れてほしい

──教師時代の経験も現在の音楽活動に生かされているんですね。退職後しばしの休息期間を挟み、音楽制作を再開されたそうですが、当初から大聖典2作を続けてリリースする構想はあったんでしょうか?

いや、そうではない。去年12月の段階で「聖詠」(「旧約魔界聖書第Ⅰ章」収録)を除く12曲がそろっていて。その時点ではただ作るのが楽しかっただけで、私の中では「スタジオミュージシャンを集めて録ればいい」、または「オケはこのままで、声だけを差し替えてもいいかな」と思っていたのだ。自分の曲が世の中に出れば手段は問わないつもりだったからな。ところが悪魔寺(事務所)に連絡したら、「バンドを組んで、ライブでやれるようにしましょう」と提案され、「なるほど!」と。そのときに紹介されたのが、さくら“シエル”伊舎堂、そして金属恵比須だったのだ。ライブをやるんだったら序曲が必要だと思い、急遽作ったのが「聖詠」なのだ。

──思ってもみない展開だったんですね。

ダミアン浜田陛下

その通り。「聖詠」を加えて悪魔にとっていい数字の13曲になったのも偶然だし、これを1枚の大聖典としてまとめよう……と思ったのだが、そこで思い出したことがあって。24年前に個悪魔大聖典「照魔鏡」を出したとき、数名の信者から直接、「『照魔鏡』の曲がカラオケに入ってない」という声が届いたのだ。その中の何人かがカラオケ業者に「陛下の曲をカラオケに入れてほしい」とリクエストし、1曲だけ追加されたのだが、それはなぜか信者たちが歌いたい曲ではなかった(笑)。そのとき思ったのだ。「次に個悪魔教典を出すことがあれば、カラオケ音源付きの2枚組にしよう」と。そのことを悪魔寺に伝えると、侍従長(マネージャー)から「13曲を通して聴くとけっこうヘビーなので、7曲入りと6曲入りに分けましょう。それぞれカラオケを入れれば、大聖典として成立しますよ」という返答があり、「その手があったか!」と2枚に分けて発表することになった。また、それはコロナ禍で制作が遅れた場合でも2枚のうち1枚だけなら聖飢魔Ⅱの地球デビュー35周年である年内に発表できるという保険でもあった。実際、当初の予定より2カ月近く遅れたが、当時の進捗状況から見て2枚とも年内に発表できたことは奇跡だと思う。

──信者さんは陛下の曲をカラオケで歌いたいんですね。

そういう信者は多いと思うぞ。私もカラオケに行ったとき「歌いたい曲が入ってない!」と思うことが多いからな(笑)。大聖典にカラオケ音源が入っていれば、自分の家で思い切り歌えるし、コロナ禍の世の中にも合ってると思う。本物のバンドの音に合わせて歌うのは気持ちいいしな。

──インストとしても楽しめますよね。楽器隊のすごさをよりダイレクトに味わえると言いますか。

そうだな。私もバンドで曲のコピーをやっていたときによく感じていたが、楽譜が出ていない曲を演奏する際、どうしても細部が聴き取れないことがあって。カラオケならバッキングやコーラスもよく聴こえるし、楽器をやってる人間には重宝されると思うぞ。まあ、好きなように楽しんでくれればいいがな。