ナタリー PowerPush - ダイスケ
ウジウジ青年の“夏めき”宣言
朝の情報番組「ZIP!」(日本テレビ系)の全国中継コーナー「スマイルキャラバン」への出演などで知られるシンガーソングライター、ダイスケが7thシングル「夏めく坂道」をリリースした。
「夏めく坂道」のリードトラックは現在放送中のテレビアニメ「ポケットモンスター ベストウィッシュ シーズン2 デコロラアドベンチャー」のオープニングテーマ。これまでのダイスケファンはもちろん、ポケモンファンの子供とその保護者も射程に入れた、陽性のポップチューンとなっている。さらにカップリングにはサマーアンセム、山下達郎「高気圧ガール」のカバーも収録されている。
自身も「大好きだ」と語る、その夏を謳歌するかのような明るい1曲を歌い上げるダイスケの胸中やいかに。本人を直撃した。
取材・文 / 大山くまお インタビュー撮影 / 佐藤類
「オレのあとを継げ」のひと言でドラマーに
──今はツアーの真っ最中ですよね。お疲れじゃないですか?
はい、初めての全国ツアーで19カ所回っていて疲れてはいますけど、イヤな疲れではないですね。小さなバスにみんなで乗ってワイワイやりながら回ってるんで楽しすぎて疲れちゃう(笑)。
──でもダイスケさんは今年の3月まで朝の情報番組「ZIP!」の全国を旅するコーナー「ZIP!スマイルキャラバン」に出演していました。旅しながら歌うのはお手の物なんじゃないんですか?
今回はミュージシャンとしての旅なので「スマイルキャラバン」とはちょっと違っていて、そこがまた面白いですね。「スマイルキャラバン」をやっているときは“本業が旅”だという意識だったので。今は音楽を伝えながら全国を回れることがうれしいです。それも「スマイルキャラバン」で旅をしていたからできることなんだと思っています。
──では、今日はダイスケさんがどうやって今のダイスケさんになったかをお聞きしたいと思います。まず、音楽を始めたきっかけを教えてください。
父親がもともと音楽をやっていたんです。若い頃、プロを目指していたようなジャズ、フュージョンのドラマーで。でも、挫折してしまったので、息子の僕に「オレのあとを継げ」と言いだしたんです。中学ではリズム感を鍛えるために「吹奏楽部に入れ」と父親の命令が下って(笑)。本当は違う部活がやりたかったのに、パーカッションの練習を始めたのがすべての始まりです。
──すごい! 「巨人の星」みたいだ(笑)。
ただ、やってるうちにだんだん楽しくなってきて、高校ではドラマーとしてバンドをいろいろ組むようになったんです。この頃から「プロになりたい!」と思うようになりましたね。僕は八王子の高校に通っていたんですけど、八王子という街自体、バンドがけっこう盛んだったんですよ。
SLIPKNOTのお面をつけてGLAYをコピー
──ダイスケさんは湘南生まれだから、湘南サウンドの洗礼を受けたとばかり思ってましたが、実際は八王子サウンドだったと(笑)。
確かに八王子サウンドですね(笑)。サザンとか山下達郎さんとかユーミンさんのような素敵なポップスは、両親の影響でよく聴いてましたけど、自分たちのバンドはパンクとかメロコアに走ってまして。あと当時はアメリカのメタルコアバンドのSLIPKNOTが好きだったんですよ(笑)。
──えっ、ニューシングルが「夏めく坂道」なのに、全然夏めいた音楽をやってないじゃないですか(笑)。
あははは(笑)。「カッコいい! オレたちもやろうぜ!」って、お店で紙粘土と釘を買ってきて、僕はドラムだったのでジョーイ・ジョーディソンのお面を作ったんですよ。でも、空気穴を開けるのを忘れて、ライブ中に息ができなくなったりして(笑)。しかもSLIPKNOTは高校生の腕ではちょっと難易度が高く……。お面をつけたままGLAYさんの曲をやってました(笑)。
──SLIPKNOTのお面をつけたGLAYのコピーバンドのドラマーから、今のアコースティックギター&ボーカルというスタイルに変わったきっかけはなんだったんですか?
大学に入って新しいバンドを組んだんですけど、ドラムがかぶってしまったんですよ。当時の僕は内気だったから「ドラマーをやりたい」と強く主張することができなくて。でも父親のあとを継ぐつもりはあるから、絶対やりたい。なら、ジャンケンに運否天賦を賭けてみようと。そしたら一発で負けてしまいまして、ボーカルとギターをやることになったんです。
──そのバンドではどんな曲を?
どちらかというと後ろ向きな曲が多かった気がします(笑)。この頃から作詞作曲を始めて、内なる感情をふつふつと歌ってました。
──当時影響を受けたアーティストはいました?
影響を受けたというわけではないのですが昔からクラムボンさんのようなメロディがきれいなアーティストさんが好きでした。だから、僕もメロディのきれいな曲を作ってみたかったですね。
路上デビューは駅から遠くの駐輪場
──バンドでの活動はいつ頃まで?
実はすぐに解散してしまいまして(笑)。でも作った曲だけは残っていたので「だったら、路上ライブでもやってみようかな」と。ドラムをやっていたせいか、バンドで歌っていた頃から人前に出ることがすごく苦手だったんですけど(笑)、でも、自分で歌うのは楽しかったし、もっと歌ってみたいという気持ちもあったので、まずは路上ライブで人前に慣れようと思ったんです。で、八王子駅は人がいっぱいいるから、隣の八王子みなみ野駅という小さな駅の、さらに駅から少し離れた駐輪場で歌い始めました(笑)。
──でも、駐輪場じゃ足を止める人はいないんじゃないですか。みんな自転車に乗っちゃうわけですし。
最初はとりあえずそれでよかったんです! 人前が怖かったので(笑)。でも、そのうちその駐輪場に人が来てくれるようになって。しかも集まってくれた人の中に八王子のライブハウスで働いているお兄さんがいて「いいじゃん、今度ウチで企画やるから出てよ」と言ってくれ。それが僕のステージデビューでした。
──ゲットーで歌っていたラッパーが成り上がっていく過程みたいだ(笑)。
※初回仕様の在庫がなくなり次第、通常仕様に切り替わります。
収録曲
- 夏めく坂道
- 高気圧ガール
- スケッチブック アコースティックバージョン
- 夏めく坂道 instrumental
ダイスケ
1988年神奈川県湘南生まれの男性シンガーソングライター。2000年代終盤より東京・八王子駅周辺で路上ライブ活動を開始し、ピーク時には数百人の聴衆を集める。2010年秋にはインディーズアーティストながら大学、専門学校など21校の学園祭、文化祭に出演し、翌2011年2月にシングル「ボク☆ロケット」でメジャーデビューを果たす。以来「あなたにしかできないこと」「Moshimo」など6枚のシングルと、2枚のアルバムをリリースする。その一方で2011年より日本テレビ系の情報番組「ZIP!」内のコーナー「ZIP!スマイルキャラバン」にレギュラー出演。約2年間て47都道府県を2周し、その土地土地の模様を歌を交えてレポートした。2013年7月、テレビアニメ「ポケットモンスター ベストウィッシュ シーズン2 デコロラアドベンチャー」(テレビ東京系)の主題歌となる7thシングル「夏めく坂道」をリリースした。