ナタリー PowerPush - ダイスケ
ウジウジ青年の“夏めき”宣言
「夏めく坂道」は“ザ・ポップス”
──路上ライブって、普通に歌っていても全然足を止めてくれる人がいないと聞いたことがあるんですが、ダイスケさんはそこでいろいろな工夫を凝らして人を集めていたわけですよね。
そうですね。路上ライブをしているときは、時間帯によって通る人の年代が変わると、それに合わせて曲も変えたりしていました。当時、スタッフさんがいたんですけど、かなり緻密なデータを取ってもらっていたんですよ。この曲を歌っているときに立ち止まった人は何人で、年代はどれぐらいで、とか。数字を細かく出してもらって、自分で分析をしていました。そのときそのときで、伝えたい人に合うように、曲を変えていこうとしていましたね。
──そんなことまで! そういう戦略を立てていた経験って今回の“変革”にも生きていたりします?
確かに今回も聴いてくれる人の年代なんかを考慮に入れて曲を書いているっていう意味では同じなのかもしれない。
──「夏めく坂道」の持っているいい意味でのベタさ、キャッチーさ、力強さも、ダイスケさんの分析力から生まれたものだった、と。
だと思います。“ザ・ポップス”という感じを意識して作りましたし。かなりそこに振り切ってます。意外と最近、振り切ったポップスをやっている人が少ないと思うんですよ。「それをやってみたらどうなんだろう?」「誰もやっていないけど、やってみたら実はもっと多くの人に届くんじゃないか?」という思いがありましたし、自分にとって新しい挑戦でしたね。
両親の好きな曲をカバーしていきたい
──カップリングは山下達郎さんの「高気圧ガール」のカバーです。これもダイスケさんの“振り切ってやろう”という意志の表れですか?
そうですね。最近はいつもカップリングにカバー曲を入れていて、曲選びから楽しんでいるんですが、今回はA面が夏のポップスなので、B面も同じ空気感のある曲にしようと思いまして。キング・オブ・夏のポップスですからね! 原曲があまりにもいい曲なので、失礼にならないように、でもいかに原曲を超えられるか、と思いながら歌いました。
──ちなみに音楽好きの厳しいお父さんの反応は?
まだ聴かせてないんです……。ちょっとあの……。楽しみです!(笑) 以前にもユーミンさんの「Hello, my friend」をカバーさせてもらったことがあるんですが、母がユーミンさんの大ファンなんですよ。両親の好きな曲をカバーしていきたい、という意識があるんです。
──もう1曲のカップリングは前のシングル「スケッチブック」のアコースティックバージョン。前のシングルのアコースティックバージョンを収録するのは、シングルのたびに恒例になっていますね。
楽しいんですよね。もともと弾き語りでライブをやっていたこともあって、僕は絶対にアコースティック感をなくしちゃいけないと思っているんです。それを忘れないためにも、毎回アコースティックバージョンを入れています。
──アコースティックはダイスケさんにとっての原点?
アコースティックギターが大好きなんですよ。いずれ、もっともっとアコースティックギターをフィーチャーした曲も作ってみたいですね。
もうウジウジしません! そして夏めいてもらいます!
──ダイスケさんは本当に日常の些細な感覚を大切にしていますよね。ブログを拝見したら「今日はいい夜だ」と書いてあって。その理由は「ゴミを出せたから」(笑)。
些細ですよねえ(笑)。でもそういう自分は過去の自分というか。今はもっと大きくなっていきたいという気持ちのほうが強いんですよね。ツアーをやっている中でいろいろ欲が出てきたんですよ。今までは欲もなく、朝起きて、ごはん作って食べて、ちょっと歌って、幸せ!みたいなところがあったんですけど、それが変わってきているんです。自分でも怖いぐらいにエネルギッシュになってます。「ダメだダメだ、もっと大きな場所でライブをしたい!」「もっとたくさんの人を感動させたい!」とか。やっぱり今は人生の分岐点……変革のときのような気がします。
──「夏めく坂道」がダイスケさんにとっての変革の第1章だと。
そうかもしれないですね……いや、そうだと言っておきましょう! もう、ウジウジしません!(笑)
──あともう1つ、今日取材をしていて、ダイスケさんって自分が伝えたい歌をちゃんと届ける方法を考えられる人だなって印象を受けました。日常の些細な感覚を大事にする一方で、路上ライブで細かなデータをとったり、きちんと戦略を立てられるわけですから。クレバーなタイプですよね。
おおーっ。
──今、自分で感心しました?(笑)
聞いていて、ハッとしました(笑)。クレバーかどうかはわからないというか、いつもそのときの自分の感情に素直に生きているので。「今したいことをする」というか。路上ライブでの戦略も立てたいから立ててただけなんですよね。
──お客さんに立ち止まって聴いてほしいと思ったら、一生懸命考えて実行するわけですね。
それがすごく楽しかったんですよね。だから、今回の「夏めく坂道」がどんな反響を呼ぶかも楽しみです。今までと違う方法、戦略を試しているわけですから。音楽って、いつも実験なんです。自分が超いいと思った曲を出しても、あまり反応がないこともありますし、何も考えずに作った曲が受け入れられることもありますし。「夏めく坂道」は、子供たちがどんなふうに聴いてくれるかが楽しみです。口ずさんでくれたら、とても幸せですね。
──子供たちも含めて、幅広い層に受け入れられる夏の曲を目指しましょう!
夏めいてもらいます! 言い切ります!(笑)
──最後に余談なんですけど、歌詞の中に「僕から目そらさないで 1mmも」というフレーズがあるんですが、ダイスケさんは実際の恋愛でもこんなこと言えちゃったりするんですか?
自分で言うのもなんですけど、僕って二面性があるんです。基本的にはウジウジしてるんですけど、行くときは行くんです。全然目も合わせらないのに、突然花束を渡しちゃったりとか(笑)。AB型なんですよね。
※初回仕様の在庫がなくなり次第、通常仕様に切り替わります。
収録曲
- 夏めく坂道
- 高気圧ガール
- スケッチブック アコースティックバージョン
- 夏めく坂道 instrumental
ダイスケ
1988年神奈川県湘南生まれの男性シンガーソングライター。2000年代終盤より東京・八王子駅周辺で路上ライブ活動を開始し、ピーク時には数百人の聴衆を集める。2010年秋にはインディーズアーティストながら大学、専門学校など21校の学園祭、文化祭に出演し、翌2011年2月にシングル「ボク☆ロケット」でメジャーデビューを果たす。以来「あなたにしかできないこと」「Moshimo」など6枚のシングルと、2枚のアルバムをリリースする。その一方で2011年より日本テレビ系の情報番組「ZIP!」内のコーナー「ZIP!スマイルキャラバン」にレギュラー出演。約2年間て47都道府県を2周し、その土地土地の模様を歌を交えてレポートした。2013年7月、テレビアニメ「ポケットモンスター ベストウィッシュ シーズン2 デコロラアドベンチャー」(テレビ東京系)の主題歌となる7thシングル「夏めく坂道」をリリースした。